「終活」や「エンディングノート」。言葉はよく耳にするけれど、何から手をつけていいか分からない、書くのが面倒、なんだか縁起でもない…そんな風に感じて、つい後回しにしてしまっている方は少なくないのではないでしょうか。大切なことだと分かってはいても、いざペンを取ると手が止まってしまう。そんな終活の「高いハードル」を、最新のテクノロジーであるAI（人工知能）がぐっと下げてくれるとしたら、どうでしょう。今回は冠婚葬祭の専門家として、AIと共に考える新しい終活・エンディングノートの「最適解」について、分かりやすくお話ししたいと思います。
エンディングノート、なぜ書き始められないのか？
エンディングノートがなぜ必要なのか。それは、万が一の時に残されたご家族の精神的・物理的な負担を減らすため、そして何より、ご自身の人生を振り返り、これからの生き方を見つめ直すための大切なツールだからです。葬儀の希望、大切な人への連絡先、財産のこと、そして伝えきれなかった「ありがとう」の言葉。これらを記しておくことは、未来の家族への最高の贈り物になります。
しかし、従来のエンディングノートにはいくつかの課題がありました。
- 項目が多すぎて、どこから書けばいいか分からない。
- 一度書いた後、情報が古くなっても更新するのが面倒。
- そもそも、どこに保管したか家族が分からなくなる。
- 堅苦しくて、書く気が起きない。
こうした「面倒くささ」や「分かりにくさ」が、多くの人をエンディングノートから遠ざけていた原因かもしれません。しかし、AI技術がこの状況を大きく変えようとしています。
AIがあなたの終活パートナーになる時代へ
AIは、終活における面倒な作業をサポートし、もっとあなたらしく、もっと手軽に想いを残すための「賢いパートナー」になってくれます。具体的に、AIがエンディングノート作成をどう変えるのか見ていきましょう。
1. 対話するだけでノートが完成する「インタビュー形式」
白紙のノートを前にうんざりする必要はもうありません。AIが「まず、一番思い出深い旅行はどこですか？」「大切なペットについて教えてください」といったように、まるでインタビューのように優しく質問を投げかけてくれます。あなたはただ、その質問にスマホやパソコンで答えていくだけ。会話を楽しむ感覚で、自然とあなただけのエンディングノートの骨子が完成していきます。
2. あなたにピッタリな質問を投げかける「パーソナライズ機能」
AIは、あなたの年齢や家族構成、趣味などを考慮し、あなたにとって本当に必要な項目を優先的に提案してくれます。「おひとりさま」と「大家族」では、残すべき情報も伝えたいメッセージも異なります。AIは、画一的なテンプレートを押し付けるのではなく、一人ひとりの人生に寄り添った「オーダーメイドのエンディングノート」作りを支援してくれるのです。
3. デジタル情報の整理と更新もおまかせ
現代人にとって、SNSアカウントやネット銀行、有料のサブスクリプションサービスなどのデジタル資産は無視できません。これらを放置すると、残された家族が解約手続きなどで大変な思いをすることになります。AIは、そうしたデジタル情報のリストアップを手伝い、定期的に「この情報に変更はありませんか？」と更新を促すリマインダー機能で、情報の陳腐化を防いでくれます。
4. 想いを伝える手紙の「代筆アシスタント」
「家族への感謝の気持ちを伝えたいけれど、文章にするのが苦手…」。そんな方のために、AIは心強い味方になります。伝えたいキーワードや思い出のエピソードを箇条書きで入力するだけで、AIがそれらの要素を汲み取り、温かく、心のこもった手紙の文章を作成してくれます。もちろん、最後はご自身の言葉で修正を加えることで、世界に一つだけのメッセージが完成します。
AI時代の終活で心に留めておきたいこと
AIエンディングノートは非常に便利ですが、利用する上でいくつか注意点もあります。まず、個人情報の塊ですから、セキュリティ対策がしっかりした信頼できるサービスを選ぶことが何よりも重要です。また、エンディングノートはあくまで「申し送り」であり、法的な効力を持つ「遺言書」とは異なります。財産分与など法的な手続きが必要なことは、必ず弁護士や行政書士といった専門家に相談しましょう。
そして何より大切なのは、AIはあくまで「アシスタント」だということです。効率化できる部分はAIに任せ、本当に大切な「ありがとう」の一言は、ぜひご自身の直筆で残しておく。そんなデジタルとアナログの融合が、最も心が伝わる形なのかもしれません。
AI技術の進化により、終活はもはや「終わりの準備」というネガティブなものではなく、自分の人生を肯定し、未来の家族へ愛を贈るためのポジティブな活動へと変わりつつあります。難しく考えずに、まずはAIと対話してみることから、新しい終活を始めてみてはいかがでしょうか。それはきっと、あなた自身と、あなたの大切な人々のための、未来への素晴らしい一歩となるはずです。
