中古住宅のリノベは「どれくらい費用がかかるのか」「補助金は使えるのか」が分かりにくく、結果的に予算オーバーや工期遅れを招きがちです。本稿では、費用相場をざっくりつかむコツと、補助金を賢く組み合わせる基本の型を、一般の方向けに分かりやすく整理します。ポイントは、面積とグレード、見えない工事（配管・断熱・耐震）をセットで考えること。そして補助金は「省エネ・耐震・バリアフリー・空き家活用」の4系統で当てはめることです。
中古住宅リノベ費用の相場感
- 表層リフレッシュ（壁紙・床・塗装中心）：200万〜500万円
- 部分リノベ（水回り更新＋一部断熱・間取り調整）：500万〜1,200万円
- フルリノベ（スケルトン、配管更新・断熱全面）：1,200万〜2,500万円
面積で見る目安は、部分リノベで1㎡あたり5万〜12万円、フルで12万〜20万円程度。築年数、構造（木造・RC）、地域単価、設備グレードで上下します。見積の大きなブレは「見えない工事」をどこまで含むかで生じやすい点に注意しましょう。
代表的な工事項目と単価の目安
- キッチン交換：80万〜200万円（レイアウト変更や配管移設で増）
- 浴室交換：80万〜180万円（ユニット→ユニットの方が割安）
- トイレ交換：20万〜50万円
- 内装（クロス・床）：クロス1,000〜1,800円/㎡、床7,000〜15,000円/㎡
- 窓の断熱改修（内窓・ガラス交換）：2万〜10万円/箇所
- 外壁・屋根断熱内側施工：1.5万〜3万円/㎡
- 給湯器：20万〜50万円、ヒートポンプ：80万〜150万円
- 耐震補強：100万〜300万円（調査結果に依存）
- 造作収納・建具：10万〜100万円
同じ工事でも、既存活用の可否や搬入経路、下地の痛みで費用は変わります。現地調査の上で数量と仕様を明記した見積を取りましょう。
予算オーバーを防ぐ3つのコツ
- 優先順位付け：A＝性能（断熱・耐震・劣化対策）、B＝暮らし（動線・収納）、C＝意匠（素材グレード）の順で配分。
- 既存の活かし：使える下地・建具・設備は再生。標準仕様を基準に、メリハリして部分的にグレードアップ。
- 予備費の設定：想定外に備え、工事費の10〜15％を予備として確保。
補助金活用の基本整理
- 省エネ系：窓・断熱材・高効率給湯器などに定額または定率で支援。上限は工事内容に応じ数十万〜数百万円。
- 耐震系：診断＋補強工事に上限100万〜150万円程度（自治体ごとに要件・金額が異なる）。
- バリアフリー系：手すり、段差解消、浴室改修などで数万円〜十数万円の補助が一般的。
- 空き家活用・移住促進系：取得＋改修で上限拡大のケースあり（地域要件・年齢要件に注意）。
共通ルールとして、同一工事の二重取りは不可、事前申請が必要な制度が多い、年度予算は先着消化されやすい、が鉄則です。必要書類は、見積書、図面、仕様書、契約書、施工前後の写真、性能を示す書類（窓の性能値など）など。名称や条件は毎年度更新されるため、国交省・環境省・経産省の公式サイトや自治体窓口、施工会社に最新要件を必ず確認しましょう。
活用イメージ：800万円の部分リノベ
例）水回り更新300万、内装150万、窓断熱80万、給湯器40万、間取り調整120万、その他110万＝計800万円。
- 省エネ系：窓改修・高効率給湯器に対し合計で20万〜60万円程度の補助イメージ。
- バリアフリー系：手すり・段差解消で数万円〜十数万円。
- 自治体上乗せ：省エネや子育て世帯向けに追加で数万〜数十万円。
結果として、総額で30万〜100万円程度の補助が期待できるケースも。制度は年度や地域で変動するため、申請タイミングと対象工事の適合確認が成功のカギです。
物件選び・進め方の型
- 購入前インスペクション：劣化や構造の状態を把握し、見えない工事の規模感を掴む。
- 同条件で相見積もり：仕様書・数量表を統一し、3社程度で比較。曖昧な項目は単価と数量を明記。
- スケジュール感：設計・見積1〜2カ月、補助金申請0.5〜1カ月、工期2〜4カ月が目安。
まとめ：費用は「見える×見えない」をセットで、補助金は早めに
中古リノベの成功は、見える仕上げと見えない性能工事をバランスよく設計し、予備費を確保しながら、補助金の要件に合わせて工事内容と時期を調整することに尽きます。相場を面積とグレードで捉え、優先順位を明確に。制度は毎年更新されるため、最新情報の確認と早めの申請準備を心がけましょう。
