養育費の未払いは、子どもの生活と養育計画に直結する重要な問題です。感情的にこじれる前に、証拠を整え、合意の「強さ」を高め、最終的には家庭裁判所の強制力まで見据えて段階的に進めることが近道です。本稿では、初期対応から強制執行までの流れを、一般の方にも分かりやすく整理します。
未払いが起きたら最初にすること
まずは事実の記録を整えます。支払期日・金額・入金履歴を一覧化し、未払い分を明確にしましょう。そのうえで、落ち着いた文面で支払い催告(メール・書面)を行い、支払期限と振込先、分割などの代替案も提示します。相手の事情(転職・病気・収入減)を確認する姿勢も有効です。やり取りは必ず保存し、「言った・言わない」を避けましょう。
合意の強さを高める三段階
- ① 私的な合意書:当事者間の取り決め。効力はあるが、強制力は弱め。
- ② 公正証書(強制執行認諾付き):支払が滞ったとき、裁判を経ずに差押えへ進める「債務名義」になります。
- ③ 家庭裁判所の調停・審判:調停調書や審判も債務名義。将来の見直しや履行確保の仕組みと相性が良いです。
未払いが続く・再発が心配な場合は、②か③を目指して合意の土台を固めるのが実務的です。
家庭裁判所でできること
養育費の額や支払い方法で合意できないときは、養育費請求の調停を申し立てます。成立後に履行されない場合、家庭裁判所には「履行勧告」や「履行命令」という催促の制度があり、命令違反には過料(罰金に似た制裁)が科されることもあります。収入が大きく変わった場合には、減額(または増額)の調停・審判も可能です。
強制執行の完全ガイド
強制執行に進むには、債務名義(公正証書・調停調書・審判など)と、相手の財産情報が必要です。給与や預貯金を狙うのが一般的で、勤務先や銀行名・支店名が鍵になります。情報が無い場合は「第三者からの情報取得手続」により、市区町村・年金機構・法務局などから勤務先や名義不動産などの手掛かりを得られる仕組みがあります。
差押えの対象は、給与、預貯金、退職金の一部、賃料など多岐にわたります。給与差押えは手取りの一定割合までで、生活に配慮した上限が設けられています。養育費は「将来分の定期金」も差押え可能で、毎月自動的に天引きされる形を目指せます。
実務のチェックリスト
- 必要書類:戸籍(親子関係の確認)、住民票、合意書・公正証書・調停調書、未払い一覧、入金履歴、相手の連絡先や勤務先メモ
- 費用と期間:申立手数料・郵券などの実費が数千円〜、進行は数週間〜数カ月が目安(内容・混雑で変動)
- 送金ルール:日付・金額・方法を固定化し、記録に残る形(振込)を推奨
- 相談先:家庭裁判所の手続案内、法テラス、市区町村の相談窓口、弁護士への依頼も選択肢
再トラブルを防ぐ予防策
面会交流と養育費は「別問題」として扱い、相手の面会態度で支払いを止めるのは避けましょう。年1回の見直し条項(収入・物価の変化に応じた調整)を入れておく、給与天引きや自動振込を設定する、共有カレンダーや家計アプリで管理するなど、仕組みで再発を防ぐのが有効です。支払いが苦しい側は、滞納前に早めの減額調停を。
生成AIの上手な活用
催告書の雛形作成、時系列の整理、手続のチェックリスト作成、想定質問への準備など、生成AIは下書きの相棒に適しています。最終的な内容の確認や法的判断は、人の目や専門家の助言と併用すると安心です。























