「マーモットをペットにできるの？」——珍しい動物に惹かれる気持ちは自然ですが、実際には法規制や入手ルート、広大な飼育環境、季節ごとの管理など、想像以上のハードルがあります。本稿では、飼育の可否から費用・性格・環境づくりのポイントまでをやさしく整理し、無理のない選択につながる考え方を提案します。
マーモットは飼える？法規制と入手の現実
マーモットは野生性が強く、国や地域によっては飼育や輸入に厳しい制限があります。日本国内では正規のペット流通はきわめて稀で、手続きや許可が必要なケースも想定されます。まずは自治体・関係機関の最新情報を確認し、グレーな個人輸入や不透明な販売経路は避けるのが基本です。倫理面でも、野生動物の保全や福祉に十分配慮する姿勢が欠かせません。
費用の目安（初期・年間コスト）
- 初期設備費：広い頑丈なケージ（もしくは専用部屋）、掘れる床材、シェルター、冷却・換気設備などでおよそ20〜50万円。
- 生体価格：正規ルートが少なく想定は難しいものの、高額・希少となりがちです。
- 年間維持費：乾草や葉物などの飼料、床材・消耗品、電気代等で目安5〜10万円＋α。エキゾチック対応病院の診療費は割高になりやすい点も考慮を。
費用は地域や設備グレードで大きく変わります。金額だけでなく、日々の手間やスペースも「見えないコスト」として見積もりましょう。
性格・魅力と注意点
マーモットは昼行性で、好奇心が強く、群れで暮らす社会性も持ちます。一方で警戒心もあり、繁殖期や環境変化で気性が荒くなることも。体重は大型の個体で数kgになり、鳴き声が響く場面や、強い「掘る・かじる」欲求が日常的に見られます。寿命は目安で8〜12年と長めで、最後まで責任を持てる体制が必要です。
住環境づくりのポイント
- スペース：運動量が多いため、上下運動と直線ダッシュの両方ができる広さを。頑丈な金属製ケージや専用部屋を検討。
- 床材・掘る場所：30cm以上の掘削ができる深い床材や、土に近い質感の環境づくりで本能を満たす。
- 温度・湿度：冷涼で乾いた気候を好む傾向。高温多湿は避け、夏場の冷却や換気を強化。
- 安全性：脱走・かじり対策を徹底。電気コードや家具の保護、二重扉などの工夫が役立ちます。
食事の基本
草食中心で、乾草（チモシーなど）を主食に、葉物野菜や野草を適量、根菜や果物はごく少量に留めます。清潔な水は常に新鮮な状態で。国内では「マーモット専用フード」はほぼ入手困難なため、ウサギやモルモット用フードを参考にしつつ、個体の様子を見て専門家に相談しながら調整しましょう。
ふれあい方・トレーニングのコツ
- 短時間・低ストレス：無理に抱えず、近づくこと自体をポジティブに学習させる。
- ご褒美活用：ターゲットスティックなどで「来る・待つ」などの簡単な行動を強化。
- 環境エンリッチメント：掘る箱、齧れる木材、探索パズルで退屈を防ぎ、問題行動を減らす。
- 来客時の管理：別室で安心させるなど、刺激をコントロール。
飼う前の現実チェック
- 法的可否と手続きは明確か。
- 近隣への音・匂い配慮ができるか。
- 夏場の冷却、季節サイクルに合わせた管理が可能か。
- エキゾチック対応の動物病院が通える範囲にあるか。
- 住環境の改修（掘る・齧る対策）を行えるか。
総合すると、一般家庭でのマーモット飼育は難易度が高く、現実的でない場合も少なくありません。近い魅力を求めるなら、モルモット（テンジクネズミ）やチンチラ、ウサギなど、流通と飼育情報が整った草食小動物を検討するのも賢い選択です。
まとめ：無理のない「好き」の叶え方
マーモットは魅力的ですが、現状では「飼えるケースは非常に限られる」のが実情です。まずは動物園や専門施設で観察し、学びを深めることから。どうしても一緒に暮らしたい場合も、合法性・福祉・環境面を丁寧に確認し、代替案を含めて家族で話し合うことが満足度の高い選択につながります。
