「これって法律的にどうなんだろう？」
日常生活の中で、ふとそんな疑問が頭をよぎる瞬間はありませんか。SNSでの心ない一言、ご近所との騒音トラブル、ネットショッピングでの問題など、私たちの周りには法的なトラブルの種が意外とたくさん潜んでいます。しかし、いざ「弁護士に相談しよう」となると、「費用が高そう」「こんな些細なことで相談していいのかな？」といった心理的なハードルを感じてしまう方が多いのではないでしょうか。
そんな「法律は遠い存在」というイメージを覆し、もっと身近なものにしてくれるのが、テクノロジーの力で法律問題を解決する『リーガルテック』です。特に、最近目覚ましい進化を遂げている「生成AI」がこの分野と結びつくことで、これまで専門家でなければ難しかった対応が、誰でも手軽にできるようになりつつあります。今回は、知らないと損する、生成AIを活用した最新のリーガルテック活用術をご紹介します。
そもそもリーガルテックって何？
「リーガルテック」とは、その名の通り「リーガル（Legal＝法律）」と「テクノロジー（Technology＝技術）」を組み合わせた造語です。難しく聞こえるかもしれませんが、要は「IT技術を使って、法律に関する様々な手続きや業務を効率化・自動化するサービス」のことです。
例えば、膨大な量の契約書の中から、自社に不利な条項がないかをAIが自動でチェックしてくれたり、過去の裁判例をAIが瞬時に検索してくれたりといったサービスが、すでに企業法務の世界では広く使われています。
そして今、この波が私たち個人の生活にも押し寄せてきています。生成AIの登場により、まるで法律の専門家とチャットで会話するように、自分の悩みを相談し、解決の糸口を見つけられるサービスが増えているのです。
こんな時どうする？生成AI×リーガルテック活用シーン
では、具体的にどのような場面で生成AIを活用したリーガルテックが役立つのでしょうか。日常で起こりうる3つのケースを見ていきましょう。
ケース1：SNSでの心ない書き込みに悩んでいる…
匿名の相手からの誹謗中傷や事実無根の噂。精神的に追い詰められるだけでなく、どう対処すればいいかわからず、泣き寝入りしてしまうケースは少なくありません。
こんな時、生成AIを活用したサービスが役立ちます。問題の投稿が法的に見て名誉毀損や侮辱にあたる可能性を判定してくれたり、投稿者特定（発信者情報開示請求）のためにどのような証拠を集めればよいか、その手順を分かりやすく教えてくれたりします。さらに、弁護士に相談する前に、状況を簡潔にまとめた相談シートをAIが作成してくれることも。感情的にならず、冷静に次の一手を考えるための強力なサポーターになります。
ケース2：大家さんから突然「来月出て行って」と言われた…
賃貸アパートに住んでいて、大家さんから正当な理由なく急な立ち退きを要求されたら、誰でもパニックになってしまいますよね。「契約書には何て書いてあったっけ？」「法律ではどうなっているの？」と不安になるでしょう。
このような場面では、生成AIチャットボットに状況を説明することで、賃貸借契約に関する法律（借地借家法）に基づいた一般的なアドバイスを得ることができます。例えば、「正当な事由がなければ大家は一方的に契約を解除できない」といったあなたの権利や、契約書で確認すべきポイントなどをAIが示してくれます。大家さんとの交渉に使える丁寧な文面のメール案を作成してもらうことも可能で、言われるがまま不利な条件を飲んでしまう事態を防ぐ手助けになります。
ケース3：ネットショップで買った商品が届かない！返金もされない！
オンラインでの買い物は便利ですが、代金を支払ったのに商品が届かなかったり、不良品が届いても返金に応じてくれなかったりといったトラブルも後を絶ちません。
被害額が少額だと「面倒だから」と諦めてしまいがちですが、そんな時こそリーガルテックの出番です。AIにトラブルの経緯を伝えるだけで、消費者契約法などの関連法規に基づき、業者に送るための催促状や返金を求める内容証明郵便の文案を自動で作成してくれるサービスがあります。また、少額訴訟といった法的手続きの概要や流れを平易な言葉で解説してくれるため、泣き寝入りせずに権利を主張するための第一歩を踏み出しやすくなります。
トラブルの「最初の相談相手」として賢く活用しよう
生成AIを活用したリーガルテックは、まさに「ポケットの中の法律アドバイザー」のような存在です。24時間365日、いつでもどこでも、低コスト（あるいは無料）で相談できる手軽さは、これまでの法律サービスの常識を大きく変えるものです。
もちろん、注意点もあります。AIは弁護士ではありません。AIが提供するのはあくまで一般的な情報や過去のデータに基づいた提案であり、個別の事情を完全に汲み取った最終的な法的判断を下すことはできません。また、最新の法改正が反映されていなかったり、誤った情報を生成したりする可能性もゼロではありません。したがって、AIの助言は「初期対応」や「情報整理」のためのツールと捉え、最終的に重要な判断を下す際や、実際に訴訟などを行う場合には、必ず人間の弁護士に相談することが不可欠です。
とはいえ、トラブルの初期段階で「何から手をつければいいかわからない」という不安を解消し、冷静に行動するための道筋を示してくれる価値は計り知れません。「おかしいな？」と感じたときに、専門家への相談という高いハードルを越える前に、まずは生成AIリーガルテックに相談してみる。そんな新しい習慣が、あなたの権利を守り、理不尽なトラブルから身を守るための強力な武器になるはずです。
