寝つけない、夜中に目が覚める、朝起きてもすっきりしない——忙しさやデジタル機器、季節の変化が重なる今、睡眠とストレスの悩みは「よくあること」になりました。とはいえ、同じ方法が誰にでも効くわけではありません。漢方は「体質」に合わせて整える発想が得意。自分の傾向を知って、シンプルな生活ケアと漢方を組み合わせることで、じわっと眠りと心の土台を育てることができます。
睡眠とストレスを巡る課題と漢方の視点
睡眠は「脳だけ」の問題ではなく、からだ全体の巡り、冷え・ほてり、胃腸や自律神経の負担などが絡みます。漢方では、気（エネルギー）、血（栄養や潤い）、水（体内の水分）と、それらの巡りを整えることで、寝つき・中途覚醒・眠りの深さを底上げしていきます。
かんたん体質チェックのヒント
- ため息・胸のつかえ・イライラが多い…「気の巡り」が滞りがち
- 疲れやすい・声が小さい・食後に眠い…「気不足」タイプ
- 顔色が淡い・爪が割れやすい・眠りが浅い…「血不足」傾向
- 肩こり・刺すような痛み・月経トラブル…「血の滞り」傾向
- ほてり・口の渇き・寝汗…「潤い不足（陰虚）」
- むくみ・重だるさ・いびき…「水の滞り（痰湿）」
複数が重なることもよくあります。目立つ特徴から始めるのがコツです。
体質別・漢方で整える睡眠とストレスケア
1）気の巡りが滞り（気滞）
特徴：イライラ、胸や喉のつかえ、ため息、考えが頭でぐるぐる。寝つきが悪い。
代表的な処方：加味逍遙散、半夏厚朴湯など。
生活ケア：5分の深呼吸散歩、香り（柑橘・ラベンダー）、肩とあごの力を抜くストレッチ。
2）気不足（気虚）
特徴：だるい、声が小さい、食後に眠い、寝ても疲れが抜けない。
代表的な処方：補中益気湯、帰脾湯など。
生活ケア：温かい汁物と主食をしっかり、15分の昼寝は16時前まで、頑張り過ぎない予定づくり。
3）血不足・血の滞り（血虚・瘀血）
特徴：眠りが浅い、夢が多い、肩こりや冷え、月経に伴う不調。
代表的な処方：当帰芍薬散、桂枝茯苓丸など。
生活ケア：首・背中を温める入浴、ゆっくり伸ばすストレッチ、鉄分・たんぱく質を意識。
4）潤い不足（陰虚）
特徴：ほてり、口や喉の渇き、寝汗、夜中に目が覚めやすい。
代表的な処方：酸棗仁湯、滋陰を助ける処方群。
生活ケア：就寝2～3時間前の入浴をぬるめで、辛い・刺激物や夜カフェインを控える、加湿と保湿。
5）水の滞り（痰湿）
特徴：頭や体が重い、むくみ、いびき、胃もたれ。
代表的な処方：苓桂朮甘湯、半夏厚朴湯など。
生活ケア：就寝前の飲食を控えめに、塩分と冷たい飲み物を減らす、起床後のコップ一杯の白湯と軽い体操。
今夜からできる「眠りの土台」5つ
- 光の調整：寝る1時間前は画面を弱め、暖色の灯りに。朝はカーテンを開けて日光を浴びる。
- 入浴のタイミング：寝る2～3時間前、ぬるめのお湯で15分。深部体温の波をつくる。
- 呼吸と姿勢：4秒吸って6秒吐くを5セット、枕は首の自然なカーブを保てる高さに。
- 食事とカフェイン：夕食は腹七分、就寝3時間前まで。カフェインは午後は控えめに。
- 「ほどよい疲労」をつくる：日中の太陽光＋20分の早歩き。昼寝は短く、夕方以降は避ける。
漢方を取り入れるときのポイント
- 体質に合うものを少量から。変化の目安は2～4週間。
- 妊娠・授乳中、持病のある方、服薬中の方は医師・薬剤師に相談。
- コーヒーやアルコールと同時摂取は避け、食間または指示どおりに。
- 自己判断で長期連用しない。合わないと感じたら中止して専門家へ。
まとめ：あなたの体質から、あなたの眠りへ
眠りとストレスの悩みは「がまん」で解決しません。体質のサインに耳を傾け、生活の小さなテコ入れと、からだに合う漢方を味方につける。焦らず続けることで、朝の軽さや気分の波の小ささに、静かな変化が積み上がっていきます。迷ったら、漢方に詳しい専門家に気軽に相談して、あなた仕様の整え方を見つけていきましょう。
