婚礼や弔事での「水引（みずひき）」は、結び方ひとつで意味が変わります。特に、結び切りと蝶結びの使い分けは迷いやすいポイント。間違えたからといって即失礼になるわけではありませんが、相手への心配りを形にするためにも、基本を気負わず押さえておきたいところです。ここでは「一度きりの願いか、繰り返しを喜ぶか」というシンプルな視点で、婚礼と弔事を中心にわかりやすく整理します。
結論の覚え方：一度きりは「結び切り」、繰り返しは「蝶結び」
- 結び切り：固く結んでほどけない結び。二度と繰り返したくないこと、または「一度きりであってほしい」お祝いに使う。
- 蝶結び：何度でも結び直せる結び。何度あっても喜ばしい出来事のお祝いに使う。
この基本に「慶弔の色」と「のしの有無」を重ねれば、ほとんどの場面に対応できます。
婚礼の基本：結婚関連はすべて「結び切り」
婚礼関係は「人生で一度きりであってほしい」お祝いなので、原則として結び切り（または同じ意味合いの「あわじ結び」）を用います。色は慶事の定番である紅白。のしは付けて構いません。
- 結婚祝い：紅白の結び切り／表書きは「寿」「御結婚御祝」など。
- 結婚内祝い：紅白の結び切り／表書きは「内祝」「寿」。
- 結納・婚約関連：地域により「あわじ結び」も広く用いられます。
なお、出産や引っ越しは婚礼と違い「繰り返しても良い喜び」なので、婚礼と混同しないよう注意します。
弔事の基本：色と「のし無し」、結びは「結び切り」
弔事は蝶結びを使いません。結び切り（またはあわじ結び）が基本で、色は黒白や銀白（地域により黄白）。のしは付けません。
- 香典・不祝儀：黒白（または銀白・黄白）の結び切り／のし無し。
- 法要・忌明け後の返礼：同じく結び切りで色は地域慣習に合わせる。
表書き（「御霊前」「御仏前」など）は宗派や時期で変わるため、迷ったら会場案内や葬家の意向を確認すると安心です。
お見舞い・快気関連：どちらも「結び切り」だが、のし有無に注意
- お見舞い（御見舞）：紅白の結び切り。ただし「のしは付けない」のが一般的。繰り返しを避ける気持ちを表します。
- 快気祝い（全快・退院のお礼）：紅白の結び切り。のしは付けて可。表書きは「快気祝」もしくは「快気内祝」。
お見舞いに蝶結びを選ぶのは避けましょう。「再発しても良い」という意味にとられかねません。
繰り返しを喜ぶお祝い：出産・入学・季節の贈り物は「蝶結び」
何度あっても喜ばしい出来事には蝶結びが向きます。色は紅白、のしは付けてOK。
- 出産祝い・内祝い：紅白の蝶結び。
- 入園・入学・進学・就職・昇進：紅白の蝶結び。
- 新築・新居祝い、引っ越し祝い：紅白の蝶結び（上棟など祭事は地域差あり）。
- お中元・お歳暮・季節のご挨拶：紅白の蝶結び。
地域差とよくある迷いどころ
- 色の違い：弔事の黄白は関西圏などで見られます。迷ったら土地の慣習に合わせるのが安心。
- あわじ結び：結び切りと同様「固く結ぶ」意味。婚礼や弔事のほか、縁を深める意図で用いられることも。
- のしの有無：弔事全般とお見舞いは「のし無し」。慶事は基本「のし有り」。
- 既製品の選び方：表書き（用途）と水引の色・結び方が合っているかを確認。迷ったら店員に用途を伝えると確実です。
迷ったときの簡単チェックリスト
- 喜びか、悔やみか → 喜びは紅白、悔やみは黒白・銀白・黄白。
- 一度きりが望ましいか → 望ましいなら結び切り、何度でも良いなら蝶結び。
- のしは必要か → 慶事は有り、弔事とお見舞いは無し。
- 地域の慣習は → 会場・店舗・家族に一言確認。
水引は「相手を思う気持ち」を形にする道具です。大切なのは、場にふさわしい意味を選ぶこと。結び方と色、そしてのしの有無という三点を押さえておけば、婚礼と弔事の使い分けはぐっと迷いにくくなります。
