課題と提案:不動産広告の「徒歩◯分」はどこまで信用できる?
物件探しでまず目に入る「駅徒歩◯分」。便利さを直感的に伝える便利な指標ですが、「実際に歩くと違った」「信号待ちや坂道がきつい」などの声もよく聞きます。実はこの表記には全国共通の計算基準があり、知っておくと「期待値のギャップ」を小さくできます。本稿では「徒歩1分=80m」というルールの理由と、計算の仕組み、上手な読み解き方をやさしく整理します。
「徒歩1分=80m」の理由
不動産広告は各社の裁量ではなく、「不動産の表示に関する公正競争規約(および施行規則)」に沿って表記されます。歩く速さは人それぞれですが、広告の公平性を保つために平均的な成人の歩行速度(約4.8km/h)をもとに「1分=80m」とする統一ルールが定められています。速い人にも遅い人にも偏らない、現実的でわかりやすい基準として長く使われてきました。
距離と時間の出し方:地図計測+切り上げ
- 距離は地図上で道路に沿って計測。直線距離ではなく、実際に通れるルートをたどります。
- 駅は「改札」ではなく「最寄りの出入口」まで。物件から駅の最寄出入口までの道路距離が対象です。
- 計算は「距離(m)÷80=分」。少数は切り上げます(9.1分でも10分表記)。
- 信号待ち、踏切待ち、混雑、坂道・階段の負荷などは加味しません。
- 通行できない時間帯がある私道や施設内ショートカットは基本的に除外されます。
例:距離が750mなら、750÷80=9.375。広告では切り上げて「徒歩10分」と表記されます。
よくある疑問と注意点
- 「実際はもっとかかる」問題:信号や人混み、ベビーカー・荷物の有無、雨・雪、体力差で体感時間は伸びがちです。
- 「駅ナカが長い」問題:表記は出入口まで。改札やホームまでの移動は含まれません。大規模駅は中で数分かかることも。
- 「最寄出口の選び方」:最短距離の出口基準。特定時間帯に閉まる出口が最短の場合、常時使える出口で再計算されるのが原則です。
- 「裏道はOK?」:一般通行可能で安全な道路なら可。施設敷地内通り抜けなどは不可になりやすいです。
数字の読み解き方:逆算して距離感をつかむ
「徒歩◯分」を距離に直すと、空間のイメージが一気に掴みやすくなります。
- 徒歩12分=約960m(12×80m)
- 徒歩8分=約640m
- 徒歩5分=約400m
また、距離が明記されている場合は「距離÷80」で分数を見積もれます。微妙な差が生活の快適さに直結するので、8分と10分、10分と12分の違いは意外と大きいと心得ておきましょう。
実用アドバイス:内見前にチェックしておきたいポイント
- 地図アプリで「歩きルート」を確認し、最寄出口までの道幅や信号の数を把握。
- ストリートビューで夜道の明るさ、歩道の有無、坂の有無、階段の有無をチェック。
- 駅の構内図で目的路線の改札やホームまでの動線を確認(大きな乗換駅は特に)。
- 朝夕の通勤時間帯に実際の人流を観察できるとベター。混雑は体感時間を押し上げます。
- ベビーカー・自転車・キャリーケースを使う予定があれば、段差回避ルートがあるか確認。
どんなときに「ズレ」を見込むべき?
坂の多いエリア、信号や踏切が多い幹線道路沿い、冬季に路面状況が悪化する地域、観光地やイベント会場近くの物件では、広告表記より体感が伸びやすい傾向があります。逆に、フラットで信号が少なく歩道が広いルートなら、表示どおりかそれ以下で到着することもあります。
まとめ:ルールを知って、暮らしの時間を自分基準で評価
「徒歩1分=80m」は統一ルールに基づく客観的な目安です。一方で、生活者にとって重要なのは「あなたの生活リズムで何分か」。広告の数字は距離を把握する入口として捉え、地図・現地確認・駅構内の動線チェックを組み合わせて、自分基準の所要時間を見積もりましょう。数字に強くなるほど、物件選びは後悔の少ない選択に近づきます。





















