海外旅行に欠かせないパスポート。空港のカウンターや出国審査で、自分のパスポートを手に取る瞬間は、いつも少しだけ特別な気持ちになりますよね。ふと周りを見渡すと、さまざまな国の人が色とりどりのパスポートを持っていることに気づきます。しかし、実はそのパスポートの色、世界中を見渡しても大きく分けて「赤」「青」「緑」「黒」の4色に集約されることをご存知でしたか？
なぜ、無数の国が存在するのに、パスポートの色はこの4色に限られているのでしょうか。そこには何か国際的なルールがあるのでしょうか。今回は、そんな素朴な疑問について、生成AIに尋ねながら、パスポートの色に隠された各国の政治・地理、そして歴史の物語を紐解いていきたいと思います。
なぜ世界には4色のパスポートしかないのか？
まず驚くべきことに、パスポートの色を規定する国際的なルールは一切存在しません。パスポートのサイズや様式、必要な記載事項については、ICAO（国際民間航空機関）という国連の専門機関が標準を定めていますが、表紙の色については完全に各国の裁量に委ねられています。つまり、理論上はピンクでも黄色でも、どんな色を選んでも良いのです。
それにもかかわらず、世界中のパスポートが赤、青、緑、黒の4色に収斂しているのはなぜでしょうか。生成AIに尋ねてみると、いくつかの理由が浮かび上がってきました。一つは、「威厳と公式感」です。パスポートは国の顔とも言える公的な身分証明書。そのため、奇抜な色よりも、落ち着きと信頼性を感じさせる伝統的な色が選ばれやすい傾向にあります。また、製造上の理由で、耐久性があり、かつ安定して供給できる染料がこれらの色に多かったという歴史的な背景も考えられます。
しかし、最も興味深いのは、それぞれの色が持つ象徴的な意味合いです。各色が、その国のアイデンティティをどのように表現しているのか、詳しく見ていきましょう。
赤色（RED）：共産主義とEUの象徴
赤系のパスポートは、世界で最も広く使われている色の一つです。この色を選ぶ国には、大きく分けて二つのグループが見られます。
一つは、EU（欧州連合）の加盟国です。フランス、ドイツ、イタリアなど、多くのEU加盟国が「ブルゴーニュレッド」と呼ばれるワインレッド系の色を採用しています。これは、EUとしての連帯感や統一性を象徴するためと言われています。イギリスがEUを離脱した際、パスポートを伝統的な青色に戻したことは、この象徴性を物語る出来事でした。
もう一つのグループは、歴史的に共産主義や社会主義体制であった国々です。中国、ロシア、ベトナムなどが赤色のパスポートを採用しており、これは共産主義の象徴である「赤」に由来すると考えられています。また、南米のアンデス共同体（ボリビア、コロンビアなど）の国々も赤系で統一しており、地域的なつながりを示しています。日本のパスポートも、10年有効なものは赤色ですね。
青色（BLUE）：「新世界」とカリブの海
赤色と並んでポピュラーなのが青色のパスポートです。この色には「新世界」というキーワードが隠されています。
代表的なのはアメリカ合衆国です。1976年に、国旗の星条旗を構成する色の一つであるダークブルーに変更されました。これに追随するように、カナダや多くの中南米諸国が青系のパスポートを採用しています。このことから、青色は「新世界」を象徴する色とも言われています。ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイなどが加盟する南米南部共同市場（メルコスール）でも、公式カラーとして青が採用されています。
また、地理的な意味合いで青を選ぶ国もあります。カリブ共同体に加盟する多くの国々が青いパスポートを持っているのは、美しいカリブ海を象徴しているのかもしれません。オーストラリアのように、広大な海に囲まれた国が青を選ぶのも自然な流れと言えるでしょう。日本の5年有効パスポートも紺色（ダークブルー）です。
緑色（GREEN）：イスラム教とアフリカの自然
緑色のパスポートは、特定の宗教や地理的背景を持つ国々で多く見られます。
最も顕著なのが、イスラム教を国教とする、あるいはイスラム教徒が多数を占める国々です。サウジアラビア、パキスタン、モロッコ、インドネシアなどが緑色のパスポートを採用しています。緑は、イスラム教の預言者ムハンマドが好んだ色とされ、「楽園」や「生命」を象徴する神聖な色として大切にされているためです。
また、アフリカの一部の国々でも緑が選ばれています。特に、ナイジェリアやセネガルなどが加盟する西アフリカ諸国経済共同体（ECOWAS）では、加盟国が緑色のパスポートを採用しており、これは地域の豊かな自然や農業、そして希望を象徴していると言われています。
黒色（BLACK）：実用性と威厳のシンボル
黒色のパスポートは、他の3色に比べて採用している国は少ないですが、非常に力強く、実用的な意味合いを持っています。
黒が選ばれる理由の一つは、その実用性です。汚れが目立ちにくく、パスポートの表紙を長期間きれいに保つことができます。また、黒はフォーマルで威厳のある色と見なされるため、国の権威を示すのにふさわしいと考える国もあります。
代表的な国は、ナショナルカラーが黒であるニュージーランドです。ラグビー代表「オールブラックス」でもおなじみですね。また、ボツワナやザンビアなど、一部のアフリカ諸国でも採用されています。さらに、国によっては外交官が使用する外交旅券など、特別な地位を示すパスポートに黒色が使われることもあります。
このように、私たちが何気なく手にしているパスポートの色には、国際的なルールではなく、各国の政治、宗教、地理、そして国民のアイデンティティが色濃く反映されています。次にあなたが空港を訪れる際には、ぜひ周りの人々のパスポートの色に注目してみてください。その小さな冊子から、その国の壮大な物語が見えてくるかもしれません。
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