課題整理と提案:為替の「TTM・TTS・TTB」をやさしく理解して損を減らす
海外旅行やネットショッピング、海外送金で「思ったより円が必要だった」「戻ってきた円が少ない」と感じたことはありませんか。多くの人がつまずくのは、ニュースで見る為替レートと、実際に両替やカード決済で使われるレートが違うからです。本稿では、TTM・TTS・TTBの違いをやさしく整理し、外貨両替で損をしないための実践的な見分け方とコツを提案します。
TTM・TTS・TTBの基本
まず用語の整理です。
- TTM(仲値):銀行が目安に使う「真ん中のレート」。ニュースで見かけるのは多くがこれに近い指標です。
- TTS(対顧客電信売相場):銀行があなたに「外貨を売る」時のレート。あなたが外貨を買うときに適用されるので、TTMより不利(円高側ではより高く支払う)になりがちです。
- TTB(対顧客電信買相場):銀行があなたから「外貨を買う」時のレート。あなたが外貨を売るとき(円に戻すとき)に適用され、TTMより不利(受取が少ない)です。
要するに、TTSは「買うとき高い」、TTBは「売るとき安い」。この差が実質的なコスト=スプレッドです。
数字でイメージ:どれくらい差が出る?
例として、1ドル=150円(TTM)だとします。銀行の表示がTTS=151.5円、TTB=148.5円ならスプレッドは3円です。
- 1000ドルを買う(旅行前):151.5円×1000=151,500円が必要
- 余った1000ドルを売る(帰国後):148.5円×1000=148,500円が戻る
往復でみると3,000円の差がコストです。ニュースで「150円」と見ていても、実際の両替ではこれだけのズレが生まれます。
損得のカギは「スプレッド+手数料」
両替の実質コストは、表示レートのスプレッドと、別途かかる手数料の合計です。窓口によっては「手数料無料」と書いてあっても、レートに手数料を含めて広めのスプレッドを設定していることもあります。逆に、レートはTTMに近いが明示的な手数料がある場合も。重要なのは合計コストで比べることです。
どこで両替するのが得?実務のヒント
- 国内銀行・空港の窓口:手軽さは抜群。ただしスプレッドは広めのことが多い。慌てて空港一択にせず、事前比較が無難。
- オンライン両替・外貨宅配:事前にレートが確認でき、比較的有利なことがある。受取までの時間に余裕を。
- 現地ATM+国際ブランドのデビット/クレジット:ネットワークの基準レートに上乗せの為替手数料(例:1~3%)がかかるのが一般的。トータルで有利なことも多い。
- マルチカレンシー口座/プリペイド:アプリでレートを見ながら必要額だけ両替でき、スプレッドが比較的狭いサービスも。
注意点として、カード決済時に出る「自国通貨で支払いますか?」という選択(DCC:ダイナミック・カレンシー・コンバージョン)は、上乗せが大きいケースが多く、現地通貨を選ぶ方が有利なことが一般的です。
見分け方:損しないためのチェックリスト
- 買値(TTS)と売値(TTB)の差を必ず見る。差が大きい=コスト大。
- 「手数料無料」の表示でも、レートに上乗せがないか合計コストで比較。
- カードやATM利用時は、為替手数料の%とATM利用料(現地/発行体の両方)を確認。
- レートが「目安」か「約定レート」か。申し込み時に固定されるか、引き落とし時点で決まるかも重要。
- 週末・深夜はスプレッドが広がることがある。大きな両替は市場の開いている時間帯が目安。
戦略:小さく試し、分散してリスクを抑える
最初から全額を両替せず、必要分だけ小さく試すのが安全です。現金は最低限、あとはカード決済や現地ATMで補うなど、手段を組み合わせれば、スプレッドや手数料の高い局面を避けやすくなります。また、旅行前に複数サービスのレートと手数料をメモしておくと、現地で焦らず選べます。
まとめ:TTMは目安、実際はTTS/TTBで決まる
覚えておきたいのは、「TTMは目安、あなたの取引はTTS/TTB」で実行されるという点です。スプレッドと手数料の合計を見比べ、手段を分散すれば、外貨両替のコストはしっかり下げられます。小さな工夫で、旅行や海外通販の出費が着実に変わります。






















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