最近、「紹介状なしで大きな病院を受診したら、初診料がとても高くてびっくりした」という声をよく耳にします。
なぜ紹介状がないだけで、こんなに高くなるのか？そもそも「選定療養費（せんていりょうようひ）」って何なのか？
この記事では、その仕組みと背景を、できるだけやさしい言葉で整理してみます。
紹介状なし初診が高く感じる素朴な疑問
街のクリニックより、大学病院や総合病院のほうが安心な気がして、「最初から大きな病院へ行きたい」と考える人は少なくありません。
ところが、いざ受診してみると、診療費とは別に数千円〜数万円の「選定療養費」を請求されて驚くことがあります。
「体調が悪いから病院に行ったのに、なぜ別料金をとられるの？」
「自由に病院を選べるんじゃないの？」
こうした疑問は、とても自然なものです。
このモヤモヤをほどくカギが、「病院の役割分担」と「医療費のしくみ」にあります。
そもそも選定療養費とは何か？
選定療養費とは、紹介状なしで大病院を受診したときに、通常の保険診療とは別に自己負担する追加料金のことです。
具体的には、病床数が一定以上の大きな病院で、紹介状なしの初診・再診の場合にかかることが多くなっています。
このお金は、「保険外の追加負担」という扱いになるため、高額療養費制度の対象外です。
つまり、医療費が高額になったときに戻ってくるお金の計算には、この選定療養費は含まれません。
病院ごとに金額は違いますが、国が定めた最低金額以上を設定する必要があるため、
「思ったより高い」と感じる人が多いのも無理はありません。
なぜ国は選定療養費を導入したのか？
選定療養費の背景には、大きく分けて次のような理由があります。
- 大病院への患者集中を防ぐため
軽い風邪や、簡単なけがなど、本来は街のクリニックで対応できる人まで大病院に集まると、
本当に高度な検査や手術が必要な人の診療が後回しになってしまいます。 - 「かかりつけ医」を持ってもらうため
まずは身近なクリニック（かかりつけ医）で診てもらい、
必要に応じて専門的な検査や治療ができる大病院を紹介してもらう――
こうした役割分担を進めるための仕組みでもあります。 - 医療資源を有効に使うため
大病院には、たくさんの医師・看護師・検査機器が揃っていますが、そのぶんコストも高くなります。
重い病気や難しい手術に集中して対応してもらうことで、
医療全体としての質を保ちやすくなる、という考え方です。
つまり、選定療養費は、大病院が「本来の役割」に専念できるようにするための仕組みとも言えます。
紹介状があるとなぜ違うのか？
では、紹介状があると何が変わるのでしょうか。
- 追加の選定療養費がかからない、または軽減される
多くの場合、紹介状があれば選定療養費は不要です（病院によって扱いが異なる場合もあります）。 - 診療がスムーズに進みやすい
紹介状には、これまでの経過や検査結果、使用してきた薬などの情報が詳しく書かれています。
そのため、大病院の医師は一から聞き直す必要が減り、効率よく診察や検査の計画を立てやすくなります。 - 重複検査を減らせる
すでに受けた血液検査や画像検査などの情報が共有されれば、
同じ検査を何度も受ける必要が減り、費用と時間の節約にもつながります。
紹介状は、「医療機関同士のバトンリレー」のようなもの。
患者さんにとっても、「自分の情報を正しく引き継いでもらう」という意味で、大きなメリットがあります。
どんなときに大病院を受診すべき？
とはいえ、「すべてをクリニックで済ませるべき」という話ではありません。
次のような場合には、大きな病院での診察が必要になることも多いです。
- 専門的な検査（MRI、CT、内視鏡など）が必要と言われたとき
- 長く続く症状があり、詳しい精密検査をすすめられたとき
- 手術が必要になるかもしれないと言われたとき
- 複数の持病があり、総合的に診てほしい場合
こうしたときには、まずかかりつけ医や近所のクリニックを受診し、「紹介状を書いてください」と相談するのがおすすめです。
患者側ができる上手な受診のコツ
選定療養費を必要以上に払わずに、必要な医療はきちんと受けるために、患者側ができる工夫もあります。
- 日ごろから「かかりつけ医」を決めておく
具合が悪くなったときにすぐ相談できるクリニックがあると、
大病院へ行くべきかどうかも含めてアドバイスをもらえます。 - 急に大病院へ行かないといけなくなったら、まず電話で確認
救急外来なのか、時間外なのか、選定療養費がかかるのかなど、事前に聞いておくと安心です。 - 大病院を「最初の窓口」にしない意識を持つ
「とりあえず大病院へ」ではなく、「まず近くのクリニックで相談してから必要なら紹介してもらう」という流れを意識すると、
時間もお金もムダになりにくくなります。
まとめ：選定療養費は「罰金」ではなく、医療の役割分担のサイン
選定療養費は、最初は「なんでこんなお金を取られるの？」と感じやすい仕組みです。
しかし、その背景には、
- 大病院が重い病気の人に集中して対応できるようにする
- 身近な「かかりつけ医」との役割分担を進める
- 医療資源をうまく配分して、全体としての質を保つ
といった目的があります。
患者としては、「まずはかかりつけ医、必要に応じて紹介状を持って大病院へ」という流れを知っておくだけでも、
医療費の負担を抑えつつ、自分に合った医療を受けやすくなります。
もし選定療養費について不安や疑問があるときは、遠慮せず、受付や医師に質問してみてください。
仕組みを知ることは、自分の健康を守るための大事な一歩になります。
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