「SLA99.9%だから、ほぼ止まらない」は本当?
クラウドサービスや通信サービスの説明でよく見かける「SLA99.9%」という数字。
なんとなく「ほとんど止まらない、高品質なサービス」というイメージがありますが、実際にはどれくらい止まってもOKという意味なのか、具体的な時間まで意識している人は多くありません。
この記事では、生成AIに「SLA99.9%って、月あたりどれくらい止まってもいいの?」と問いかけながら整理した内容をもとに、身近な時間感覚で分かりやすく解説していきます。イメージと現実のギャップを知ることで、クラウドや通信サービスとより上手に付き合うヒントになるはずです。
SLAってそもそも何?「約束ごとのメニュー表」だと思おう
SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)は、サービス提供側と利用者側の「約束ごと」を書いたメニュー表のようなものです。
- どれくらいの時間、サービスを使えるようにしておくか(稼働率)
- 障害が起きたとき、どれくらいの時間で対応を始めるか
- どんな場合に返金や料金割引が発生するか
中でも、多くの人の目に触れるのが稼働率(アップタイム)の数字です。「99.9%」「99.99%」といった形で表現されます。
この「.9がいくつ付くか」が、しばしば“品質の格付け”のように語られますが、その裏にあるのは「どれだけ止まっても許されるか」という数字です。
「99.9%」を時間に変換するとどうなる?
では、SLA99.9%(いわゆる「スリーナイン」)は、月あたりどれくらいの停止を許容しているのでしょうか。ここでは分かりやすく、1か月を30日(=43,200分)として計算してみます。
99.9%ということは、0.1%は止まってもいいという意味です。
- 1か月の総時間:30日 × 24時間 = 720時間
- その0.1%:720時間 × 0.001 = 0.72時間
0.72時間を分に直すと、
- 0.72時間 × 60分 = 約43分
つまり「SLA99.9%」は、1か月あたり約43分の停止は許容されている、ということになります。
「43分の停止」、多い?少ない?現実的なイメージ
「1か月で43分くらいなら少ない」と感じる人もいれば、「業務システムが1時間近く止まるのは困る」と感じる人もいるでしょう。
ここで重要なのは、SLAの数字は“最悪これくらいまで止まる可能性がある”というラインでもあることです。
しかも実際の現場では、この43分が以下のような形で現れます。
- 5分程度の細かい障害が、月に数回起きるケース
- 1回で30~40分の大きめの障害が発生するケース
- 夜中ではなく「平日の昼間」に起きてしまうケース
数字だけを見ると「99.9%=ほぼ大丈夫」に思えても、ビジネスのピーク時間帯に30分止まると大問題ということも十分ありえます。
このギャップこそが、「SLAをなんとなく理解しているつもり」でいるときの落とし穴です。
「9が一つ増える」と、どれくらい変わる?99.99%との比較
「じゃあ、もっと高いSLAなら安心なのでは?」と考えるのが自然です。代表的なのが99.99%(フォーナイン)です。
同じように30日で計算してみましょう。
- 99.99% → 許容される停止時間は0.01%
- 720時間 × 0.0001 = 0.072時間
- 0.072時間 × 60分 = 約4.3分
99.9%(約43分)と比べると、「9が1つ増えるだけ」で、およそ10分の1の許容停止時間になります。
この差をどう見るかが、サービス選定のポイントです。
ただし、SLAの「9」を一つ増やすためには、裏側の仕組みに大きなコストがかけられていることがほとんどです。
その結果として、
- 料金が高くなる
- 利用条件が厳しくなる
- 一部の機能が制限される場合もある
といったトレードオフが生まれます。
「SLAの数字だけを上げれば万事OK」というわけではなく、自分たちの用途に本当に必要なレベルかどうかを見極めることが大切です。
「SLA99.9%」の現実と、ユーザー側が取れる対策
では、一般的なクラウドや通信サービスを利用する立場として、SLA99.9%とどう付き合っていけばよいのでしょうか。
- 「落ちる前提」で大事な予定を組む
オンライン会議やライブ配信、ネットショップのセールなど、重要なイベントは「もしかすると一時的に繋がりにくくなるかも」という前提で、予備の回線・別サービス・録画や予約投稿など、代替手段をセットで考えると安心です。 - SLAの範囲を確認する
同じ「99.9%」でも、何をもって「停止」と数えているのか、細かい条件はサービスによって違います。
例:メンテナンス時間はカウント外、障害のうち一部は対象外、など。
これを知らないと、「こんなに止まったのにSLA違反にならないの?」というモヤモヤにつながります。 - 「止まっても致命傷にならない」設計にする
業務で使う場合、サービスが一時的に止まっても、最低限の仕事は続けられる仕組みを考えておくことが重要です。
・代替サーバーや別リージョンの用意
・オフラインでも編集できるツールの併用
・重要データのバックアップ先を複数用意 など
「サービスはいつか必ず止まる」という前提に立つと、「SLA99.9%」は安心材料の一つであって、完全な保証ではないという見方が自然になってきます。
数字に振り回されず、うまく付き合うために
SLA99.9%という数字を、なんとなく「高品質」と受け止めていると、実際に障害が起きたときに「話が違う」と感じてしまいがちです。
しかし、その中身を具体的な時間に落とし込んでみると、
- 月に約43分は止まる可能性がある
- タイミングによっては業務に大きく影響する
- より高いSLAを選ぶには、コストや条件とのバランスが必要
といった「現実的な姿」が見えてきます。
クラウドや通信の世界では、「100%止まらないサービス」はほぼ存在しません。
だからこそ、「どれくらいなら止まっても許容できるか」を自分たちの業務や生活に照らして考え、必要なところには予備を用意しておくことが、結果的にストレスを減らす近道になります。
数字のマジックに惑わされず、SLAを冷静に読み解きながら、自分にとってちょうどいいクラウド・通信サービスとの付き合い方を探っていきましょう。





















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