飛行機に乗るとき、ふと「A、B、C…と続くのに、どうしてI列（アイ列）がないんだろう？」と疑問に思ったことはないでしょうか。
さらに、座席番号だけでなく、ゲート番号や予約番号など、数字とアルファベットが入り混じる空の旅では、「1（いち）」と「I（アイ）」を見間違える不安もあります。
本稿では、飛行機の座席からあえて「I列」が抜かれている理由と、人が混同しやすい「1」と「I」をどう防いでいるのか、設計の工夫をやさしく紐解いていきます。
飛行機にI列がないのはなぜ？
多くの航空会社の座席表を見ると、「A、B、C、D、E、F…」と続くものの、途中で「I」だけが欠けているケースがよくあります。
これは、単なる気まぐれではなく、見間違いによるトラブルを防ぐための設計です。
特に、アルファベットの「I（アイ）」は、数字の「1（いち）」と非常によく似ており、フォントによってはほとんど区別がつきません。
そのため、チケットに「12I」と書いてあった場合、「121」なのか「12I」なのか、パッと見で迷ってしまう可能性があります。
搭乗口での案内、機内での座席確認、非常時の避難誘導など、航空の現場では「一瞬の判断」が重要です。
その場面で、文字の読み違いが起きないようにするために、あらかじめ「誤解を招きやすい記号や文字を使わない」という考え方が取り入れられています。
I列が存在しないのは、その象徴的な例といえます。
「1」と「I」が紛らわしいシーンは意外と多い
実際の旅の流れを思い浮かべてみると、「1」と「I」が紛らわしい場面は意外と多く存在します。
- オンラインで購入したチケットのPDFをスマホで拡大して見るとき
- 搭乗券を急いで確認しながらゲートへ向かうとき
- 暗い機内で自分の座席を探すとき
- 客室乗務員が一瞬で座席番号を読み取るとき
こうした場面では、じっくり文字を眺めている余裕はあまりありません。
人はどうしても「パッと見」の印象で文字や数字を認識しがちです。
そこで「1」と「I」のように見た目が似ているものは、あらかじめ採用しない・組み合わせないという考え方が、安全設計やユーザー体験の向上につながっています。
航空業界で避けられる文字たち
「I」以外にも、航空業界では紛らわしい文字や数字が避けられることがあります。
- O（オー）と0（ゼロ）：チケット番号や座席番号で混同しやすい
- S（エス）と5（ご）：一部フォントでは似て見える
- Q（キュー）と0（ゼロ）：丸っこいフォルムが紛らわしい
航空券の予約番号や手荷物タグのコードは、これらを避けた文字列だけで構成されている場合も多く、「使わない文字ルール」が裏側でしっかりと運用されています。
飛行機の座席表にI列がないのも、こうしたルールの一部だと考えると、規則性が見えてきます。
列番号や座席配置の工夫
実際の座席配置を見てみると、アルファベットの使い方にもいくつかパターンがあります。
- 3列＋3列の機体：A,B,CとD,E,Fで構成し、Iを飛ばして使う
- 2列＋4列＋2列の機体：A,BとC,D,E,FとG,Hなど、中央で分かりやすく区切る
- 大型機：一部の列をあえて飛ばし、避難経路やサービス動線と整合を取る
ここでも共通しているのは、「見やすさ」と「間違えにくさ」を優先するという発想です。
「I」を飛ばすことで、機内での案内放送や非常時の指示もシンプルになり、乗客だけでなく客室乗務員側の負担も軽くなります。
他業界でも進む「紛らわしさ」を減らす工夫
飛行機以外の世界でも、「1」と「I」、「0」と「O」の混同を避ける工夫は広く行われています。
- 銀行の口座番号・支店コード：使う文字を限定して誤入力を防止
- パスワードやプロダクトキー：I、O、l（エル）などを使わない仕様が多い
- 高速道路のインターチェンジ番号：数字と文字が被らないような表記ルール
こうした例からも分かるように、「間違えにくさ」も立派なデザインの一部といえます。
I列の不在は、決して不自然な抜けではなく、むしろ、「人が使いやすく、安全に利用できるようにした結果」なのです。
これからの旅行で意識したいポイント
飛行機の座席からI列がなくなった背景には、「人は完璧には読み取れない」という前提に立った設計があります。
この視点を少し意識してみると、旅の中にもさまざまな工夫が隠れていることに気づけます。
- 座席やゲート番号は、早めに落ち着いて確認する
- スマホ画面が小さい場合は拡大して見間違いを減らす
- 分かりにくいと感じたら、遠慮せずスタッフに確認する
そして、もし機会があれば、次に搭乗するときに座席表をじっくり眺めてみてください。
I列だけでなく、「あ、この文字はあえて使っていないんだな」と気づく瞬間があるかもしれません。
そんな「目に見えない工夫」を見つけることも、旅行の小さな楽しみのひとつになってくれるはずです。
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