オンライン診療の利用状況:日本と世界の最新データ整理【2024年時点】
コロナ禍をきっかけに一気に広がったオンライン診療は、その後も「通院時間の削減」や「感染リスクの低減」といった利便性から、一定の利用が続いています。一方で、「名前は知っているが使ったことはない」「医療機関側の導入は進んでいるが、診療全体に占める割合はまだ小さい」といった実態も見えてきました。ここでは、国内外の公開データや民間調査をもとに、オンライン診療の利用状況を一般の方向けに整理しました。

| 項目 | データ | 備考 |
| 1. 日本におけるオンライン診療の認知・利用状況(一般生活者) | ||
| 認知率 | 「オンライン診療を知っている」人の割合:64.1% | 2024年6月・全国一般生活者調査(株式会社GO TO MARKET)dxmagazine.jp |
| 利用経験率(通算) | これまでに一度でもオンライン診療を利用したことがある人:12.3% | 同上 dxmagazine.jp |
| 直近1年の利用率(全体) | 過去1年間にオンライン診療を利用した人:約2% | 2024年10月・インターネット調査(マイボイスコム、N=約1万人)prtimes.jp |
| 直近1年の利用率(10〜20代) | 過去1年間にオンライン診療を利用:約7% | 同上 prtimes.jp |
| 利用した主なきっかけ① | かかりつけ医がオンライン診療を実施:利用者の約25% | 同上 prtimes.jp |
| 利用した主なきっかけ② | 待ち時間・通院時間をかけたくなかった:利用者の約25% | 同上 prtimes.jp |
| その他の理由 | 遠方の医師の診察/薬を自宅に配送:各2割強 | 同上 prtimes.jp |
| 2. 日本におけるオンライン診療への意向(今後使いたいか) | ||
| 利用意向(全体) | 今後「利用したい」「やや利用したい」:約5割 | 2023年6月・18〜59歳男女調査(LINEリサーチ)prtimes.jp |
| 若年女性の現在利用率 | 10〜20代女性で上昇傾向(具体率は非公表) | 同上(トレンドとして増加)prtimes.jp |
| 利用意向の背景 | コロナ禍での普及と「便利さ」の定着(定性的) | 同上 prtimes.jp |
| 3. 医療機関側から見たオンライン診療の利用実態(日本) | ||
| 導入率(2021年時点) | オンライン診療(電話含む)導入医療機関:15.0% | 2021年6月末・総務省「令和4年版 情報通信白書」prtimes.jp |
| 導入時期 | 実施医療機関のうち、直近3年以内に開始:50%以上 | 2024年9–10月・医療従事者328名調査(日本テレネット)prtimes.jp |
| オンライン診療比率① | 全診療に占める比率が5%未満:66.2% | 同上 prtimes.jp |
| オンライン診療比率② | 全診療に占める比率が5〜10%未満:21.3% | 同上 prtimes.jp |
| オンライン診療比率③ | 全診療に占める比率が10〜20%未満:7.9% | 同上(「20%未満」が95%以上)prtimes.jp |
| 診療時間への影響 | 「対面と変わらない」:46.3% | 同上 prtimes.jp |
| 診療時間短縮① | 「25%未満になった」:22.6% | 同上 prtimes.jp |
| 診療時間短縮② | 「25〜50%未満になった」:11.9% | 同上(約3割で“半分未満”まで短縮)prtimes.jp |
| 月額費用 | オンライン診療にかかる毎月の費用「1万円未満」:39.6% | 同上 prtimes.jp |
| 月額費用が無料 | 「無料」と回答:30.5% | 同上(合計で約7割が1万円未満)prtimes.jp |
| 患者側の主な課題 | 操作説明や準備に時間、通話品質課題など:各2〜4割前後 | 同上 prtimes.jp |
| 導入後の診療件数 | 「変わらない」:56.1% | 同上 prtimes.jp |
| 導入後の診療件数増加 | 「多少増加した」:21.9%(約25%が増加を実感) | 同上 prtimes.jp |
| 4. 政策・制度面から見たオンライン診療(日本) | ||
| オンライン診療の定義 | スマホ・タブレット・PC等で、自宅などから医師の診察や処方を受ける診療形態 | 触診等ができないため「対面診療との適切な組み合わせ」が前提/厚労省 mhlw.go.jp |
| 実施主体 | 原則「かかりつけ医」が実施 | 既に信頼関係のある医師が行うことが基本/厚労省 mhlw.go.jp |
| 適用範囲 | 医師が「オンラインでは適切でない」と判断した場合は利用不可 | 症状・病状により対面受診が必要/厚労省 mhlw.go.jp |
| コロナ特例 | 電話・オンライン診療の時限的・特例的取扱い(歯科の特例は2024年3月末で終了) | 厚労省 mhlw.go.jp |
| 5. 世界におけるテレメディシン(参考) | ||
| 世界全体 | 医療機関・サービス側のテレメディシン導入・提供状況:2023年時点で採用率80%以上(推計) | Telemedicine Statistics(Market.Biz)market.biz |
| アジア太平洋地域 | プライマリケア等でのテレヘルス利用率:4%→56%へ(コロナ前後、+52pt) | 同上 market.biz |
| 欧州地域 | 提供率:テレラジオロジー84%、テレメディシン77%、テレ精神医療51% 等 | 同上 market.biz |
| 米国 | オンラインサービスを提供する医療機関:約50%(予約・結果閲覧等) | 同上 market.biz |
| 北欧(スウェーデン) | オンライン医療サービス提供率:約58% | 同上 market.biz |
| 6. オンライン診療利用状況のポイント整理(要約) | ||
| 認知と利用のギャップ | 認知64.1%に対し利用経験12.3%、直近1年利用は約2% | 「知っているがまだ使っていない」層が大多数で伸びしろ大 |
| 年代差 | 10〜20代の直近1年利用率:約7%と相対的に高め | 若年層ほどアプリ・オンラインサービスへの抵抗感が小さい |
| 医療機関側の比率 | 導入は進むが、診療全体に占めるオンライン比率は20%未満が95%以上 | 現状は対面診療の「補完」的な位置づけ |
| 費用と効率 | 月額費用は約7割が1万円未満、診療時間短縮も約3割で確認 | 費用負担は比較的軽く、生産性向上の余地 |
| 制度的枠組み | 「かかりつけ医」「対面との組み合わせ」を前提に運用 | 安全性確保を優先しつつ利便性向上の設計が論点 |
| 国際比較 | 世界的にテレメディシン導入は高水準 | 日本も制度・ニーズ両面から活用領域拡大の可能性 |
出典元情報
・マイボイスコム株式会社「オンラインでの医療相談・診察(第3回)」インターネット調査結果(2024年10月実施)。prtimes.jp
・LINEリサーチ「今と近未来の流行予想調査(第二十五弾・オンライン診療編)」プレスリリース(2023年6月)。prtimes.jp
・日本テレネット株式会社「オンライン診療の現状と課題に関する調査」プレスリリース(2024年10月)。prtimes.jp
・株式会社GO TO MARKET「オンライン診療の利用率は12.3%、最新調査から見る利用動向」(DXマガジン、2024年8月)。dxmagazine.jp
・総務省「令和4年版 情報通信白書」オンライン診療導入率(2021年6月末時点)。prtimes.jp
・厚生労働省「オンライン診療について」公式解説ページ。mhlw.go.jp
・Market.Biz「Telemedicine Statistics By Usage, Demographics and Facts (2025)」。market.biz
本稿のデータからは、日本ではオンライン診療の「認知は進んだが実利用は限定的」という現状が確認できます。若年層の利用率や医療機関側の導入は着実に広がる一方、診療全体に占める比率は小さく、補完的な役割にとどまっています。費用やオペレーションのハードルは比較的低減しており、利便性(移動・待ち時間の削減)が価値として定着しつつあります。制度面では安全性を担保する設計(かかりつけ医、対面併用)が前提となるため、対象疾患や診療プロセスの最適化が今後の普及鍵となるでしょう。海外ではテレメディシンが高水準で普及しており、日本でもニーズと制度整備の進展に伴い、適応領域の拡大が見込まれます。




















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