スマホやワイヤレスイヤホンでおなじみの「Bluetooth」。毎日のように目にする言葉なのに、その名前の由来やロゴの意味まで考えたことがある人は意外と少ないかもしれません。
「なんで青い歯?」「あの不思議なマークは何?」といった素朴な疑問には、実は北欧の歴史とロマンがたっぷり詰まっています。
この記事では、Bluetoothという名前とロゴに隠れた北欧史のエピソードを、難しい専門用語をできるだけ避けて、雑学として楽しめる形で紹介します。日常で何気なく使っているデジタル技術が、歴史や文化とどのようにつながっているのかを知るきっかけになれば幸いです。
Bluetoothはなぜ「青い歯」なのか?
まず気になるのが名前そのもの。「Bluetooth」を直訳すると「青い歯」。なぜこんな名前になったのでしょうか。
答えは、10世紀のデンマーク王「ハーラル・ブロタン(Harald Bluetooth)」に由来します。彼は、当時バラバラだったデンマークとノルウェーの部族をまとめあげた王として知られています。「ブロタン(Bluetooth)」というあだ名は、諸説ありますが、目立つ色の歯があった、あるいはブルーベリーの食べ過ぎで歯が青黒く見えたなどの、少しユニークな由来が語られています。
1990年代、さまざまなメーカーが「ワイヤレスで機器同士をつなぐ」技術を開発していましたが、規格がバラバラで互換性がありませんでした。そこで「バラバラな規格をひとつにまとめたい」という願いを込めて、
「北欧の部族をまとめた王・ハーラル Bluetooth にならって、無線規格の世界もひとつにしよう」
という発想が生まれ、コードネームとして「Bluetooth」が採用されたのです。
やがてこのコードネームがそのまま正式名称となり、今に至ります。「青い歯」という一見不思議な名前の裏側には、“分断されたものをつなぐ”という歴史へのオマージュが隠れているわけです。
あのロゴ、実は古代文字の合体マーク
次に、Bluetoothのロゴを思い出してみてください。青い楕円の中に、稲妻のような白い記号が描かれています。このマークも、単なるデザインではなく北欧の古代文字「ルーン文字」が元になっています。
ハーラル・ブロタンの頭文字であるH(Harald)とB(Bluetooth)を、ルーン文字で表すと以下のようになります。
- H:ハガル(ᚼ などで表現される)
- B:ベヤルカン(ᛒ)
Bluetoothロゴは、これら2つのルーン文字を重ね合わせた合体マークです。ですから、ロゴ自体がハーラル・ブロタン王のイニシャルのシンボルになっているのです。
しかも、ルーン文字はもともと北欧の石碑や木片に刻まれて使われていた古い文字体系。
現代のデジタル技術のロゴの中に、古代の文字文化がさりげなく生き続けていると考えると、ちょっとしたロマンを感じませんか。
北欧史とIT企業の「ネーミングセンス」
Bluetoothの誕生には、当時のIT企業の「遊び心」も大きく関わっています。
この規格づくりを進めていたのは、エリクソン、インテル、ノキア、IBM などの企業でした。特に北欧系企業が多く関わっていたこともあり、北欧の歴史や伝説をモチーフにするアイデアが受け入れられやすい土壌があったとされます。
実はこうした歴史由来の名前は、IT業界では珍しくありません。
- Appleの「カリフォルニアの地名」由来のOS名(Mavericks, Yosemite など)
- ブラウザ「Firefox」の前身である「Phoenix(不死鳥)」というコードネーム
- Linuxディストリビューションが神話や動物から名前を取るケース
Bluetoothも同じように、技術開発の裏で生まれた「プロジェクト名」が、そのまま世界共通のブランド名になった例だと言えます。
開発者の遊び心や歴史好きな一面が、今に続くデジタル文化の一部になっていると考えると、テクノロジーがぐっと身近に感じられます。
「つながり」をテーマにした名前としてのBluetooth
Bluetoothが象徴するテーマは、何と言っても「つながり」です。
- 歴史上:バラバラな部族や地域を「つないだ」王、ハーラル・ブロタン
- 現代技術:バラバラな機器やメーカーを「つなぐ」無線規格
この「つながり」のコンセプトは、デジタル社会全体にも広がっています。
スマホ、PC、イヤホン、スピーカー、クルマのナビ……さまざまな機器がBluetoothで接続され、ケーブルに縛られない世界が当たり前になりました。
一方で、規格が増えすぎたり、設定方法が複雑になったりすることで、逆にユーザーが混乱しやすい面もあります。だからこそ、「ひとつのシンプルな規格でつなぐ」Bluetooth的な発想は、今後も重要になっていくでしょう。
もし今後、新しい無線規格やアプリ、ソフトウェアが登場するときも、
「何を、どうつなげたいのか」というコンセプトを、Bluetoothのように名前とロゴに込めることができれば、ユーザーにとって覚えやすく、親しみやすいデジタル体験につながっていきます。
身近なテクノロジーから歴史を楽しむ
Bluetoothの名前とロゴに隠れた北欧史を知ると、日常のデジタル機器を見る目が少し変わってきます。
- 「設定」画面でBluetoothマークを見たら、ハーラル王のイニシャルを思い出す
- ワイヤレスイヤホンをつなぐとき、「昔の部族をまとめるのと同じ発想だな」と想像してみる
- ほかのアプリやソフトウェアの名前の由来にも興味を持ってみる
こうした小さな視点の変化が、デジタル技術=味気ないもの、難しいものというイメージを変え、文化や歴史と地続きの「人間くさい」営みとして感じられるきっかけになるはずです。
次にBluetooth機器をペアリングするとき、ぜひ「青い歯の王様」の物語を思い出してみてください。
あなたのスマホとイヤホンがつながる瞬間、その背後には1000年以上前の北欧の物語が、ひっそりと息づいているのです。





















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