MRIで金属が危険と言われる本当の理由とは？
人間ドックや検査で「MRIを受ける前に、金属を外してください」と必ず言われます。
「指輪くらい大丈夫でしょ？」「歯の詰め物は平気なの？」と疑問に思ったことはないでしょうか。
MRIは放射線を使わない安全な検査として知られていますが、「強力な磁石」を使うという大きな特徴があります。そのため、金属との相性には注意が必要です。
この記事では、なぜMRIで金属が危険と言われるのか、そしてどんな隠れたリスクがあるのかを、できるだけ専門用語を避けながら解説します。あわせて、検査を受ける前に自分でできる対策も紹介します。
MRIってどんな検査？ざっくりイメージしてみよう
MRIは「磁石」と「電波」を使って、体の中の様子を細かく映し出す検査です。
大きなドーム型のトンネルの中に入って、ガンガン・カンカンという大きな音がするあの検査、と言えばイメージしやすいかもしれません。
ポイントは、とても強い磁石がずっと働いているということ。
日常生活ではまず体験しないレベルの磁力なので、普段は気にならない金属も、MRIの中では別の顔を見せてしまいます。
なぜ金属が危険なの？3つの代表的なリスク
金属が問題になる理由は、おおきく分けて次の3つです。
1. 磁石に引き寄せられて「飛ぶ」危険
MRIの磁石は、鉄などの磁石に反応する金属を一気に強く引きつけます。
その力は想像以上で、うっかり室内に金属製の工具や車椅子などを持ち込むと、「飛んでいって装置にくっついてしまう」ほどです。
この力は人の手では止められないほど強く、もし体の近くで金属が動けば、ケガにつながる危険もあります。
そのため、ポケットの中の硬貨や鍵、ヘアピンなども含め、すべて外すように言われるのです。
2. 体の中の金属が「動く」「熱くなる」可能性
体の中に入っている金属にも注意が必要です。たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 心臓ペースメーカーや除細動器
- 脳動脈瘤クリップ
- 骨折のボルトやプレート
- 人工関節や金属製の歯科インプラント など
金属の種類やつくられた年代によっては、MRIの磁力でズレたり、回転しようとしたりする可能性があります。また、電波が当たることで金属が少しずつ温まり、熱を持つことも考えられます。
もちろん、最近の医療用金属はMRIに対応しているものも多く、すべてが危険というわけではありません。ただし、「自分では分からないけれど入っている金属」がある人は、必ず事前に申告することが大切です。
3. 画像がゆがんで、正しく診断できなくなる
金属が近くにあると、MRIの画像がぼやけたり、ゆがんだりすることがあります。
たとえば、歯科金属が多いと、あごや首の画像が見えにくくなることがあり、せっかく検査をしても診断の正確さが下がってしまう可能性があります。
これは命の危険というよりも、検査の意味が薄れてしまうという点で問題になります。そのため、医師は「どの部位を撮るか」と「どんな金属が入っているか」を慎重に確認します。
意外と忘れがちな「隠れた金属」に要注意
「指輪やネックレスは外せばOK」と考えがちですが、実はもっと見落とされやすい金属もあります。
- カラーコンタクト・一部の通常コンタクト
装飾や色素に金属成分を含む場合があります。 - つけまつげ・まつげエクステの接着剤
種類によっては金属成分を含むことがあります。 - 湿布・貼り薬・塗り薬
「冷感」「温感」を出す成分に金属が使われている製品もあります。 - 入れ墨・アートメイク
インクに金属を含む場合、熱を持つおそれがあります。 - ヘアカラー・ヘアマニキュア
金属成分を含む一部のものは、検査前に注意が必要です。
これらは「アクセサリーっぽく見えない」ため、うっかり申告し忘れやすいポイントです。
不安な場合は、「こういうものを使っていますが大丈夫ですか？」と検査スタッフに相談するようにしましょう。
MRIを安全に受けるために、事前にできること
MRIの安全性を高めるために、次のポイントを意識しておくと安心です。
- 問診票は正直に、細かく書く
ペースメーカー、手術歴、インプラント、入れ墨などは必ず記入しましょう。 - 「昔ケガして金属が残っているかも」も申し出る
覚えていない手術や古い治療についても、分かる範囲で伝えましょう。 - 検査当日はアクセサリー類をすべて外していく
ピアス、ネックレス、指輪、時計、ヘアピン、カイロなども忘れずに。 - 入れ墨やアートメイクがある場合は事前相談
位置や大きさによっては、検査方法が調整されることがあります。
医師や検査技師は、危険だからMRIを「やめる」だけではなく、安全にできる方法がないかを一緒に考えてくれます。不安に思うことは、遠慮せずに質問してみてください。
「危ないからやめる」ではなく、「知って工夫する」検査へ
MRIと金属の関係は、一言でいえば「とても相性の悪い組み合わせ」です。
しかし、正しく申告し、十分に注意すれば、多くの人が安全に検査を受けることができます。
・金属は「飛ぶ」「動く・熱くなる」「画像をゆがめる」可能性がある
・体の中や肌の下にある金属は、自分では見えないからこそ申告が大切
・不安なことは隠さずに伝えることで、安全性はぐっと高まる
MRIは、がんや脳疾患、関節のトラブルなどを早期に見つけるための大切な検査ツールです。「危なそうだから避ける」のではなく、仕組みを知って上手につきあうことで、健康管理にうまく役立てていきましょう。
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