葬儀に参列するとき、意外と多くの人が戸惑うのが「焼香の回数」です。「このお葬式では何回あげればマナー違反にならないのだろう」「宗派ごとに違うと聞くけれど、全部覚えるのはむずかしい」と不安になる場面も多いものです。ここでは、主な宗派ごとの違いと、迷ったときの基本的な考え方を整理しながら、「失礼にならない焼香作法」のポイントをご紹介します。
焼香回数が宗派で違うのはなぜ？
そもそも焼香の回数は、仏教の教え方や歴史の違いによって変化してきました。「何回が正しいか」というより、「その宗派では、どんな意味を込めて何回と決めているか」の違いだと考えると分かりやすくなります。
たとえば、「仏・法・僧」の三つの教えを意識して3回にする宗派もあれば、「心を一つに集中する」意味で1回にしている宗派もあります。回数そのものよりも、「故人を悼む気持ちを静かに表す」ことが本来の目的だという点は、どの宗派でも共通しています。
代表的な宗派ごとの焼香回数の目安
地域や寺院によって細かな違いはありますが、一般的に言われる「目安」は次の通りです。厳密な「正解」ではなく、「こうしておけば大きく外さない」くらいの感覚でとらえると気が楽になります。
- 浄土真宗（本願寺派、真宗大谷派など）
基本は「1回」が多いです。香をつまんで、額におしいただかずにそのまま香炉に入れる作法が一般的とされています。 - 浄土宗・臨済宗・曹洞宗など
「1回または2回」という考え方が広く見られます。地域や寺院によっても違いがありますが、会場でアナウンスがある場合はそれに従うと安心です。 - 天台宗・真言宗など
3回とされることが多い宗派です。香を額におしいただく作法をとる場合もあり、厳かな雰囲気を大切にする傾向があります。
実際の葬儀では、会場入口の案内や僧侶、葬儀社スタッフからの説明があることも多いので、迷った場合は事前に確認しておくと安心です。
迷ったときの「無難な焼香」の基本ルール
細かな作法に自信がないときは、次のポイントを押さえておくと、ほとんどの場合失礼にはなりません。
- 焼香の回数に極端にこだわりすぎない
- 動作を大きくしすぎず、静かで落ち着いた所作を意識する
- 前後の人の様子をさりげなく参考にする
- どうしても不安なときは「1回」にしておく（多くの宗派で受け入れられやすい）
焼香の場面で重要なのは、「形式の完璧さ」よりも、「相手や周囲への配慮」と「落ち着いた態度」です。少し回数が違ってしまったからといって、真剣に手を合わせていれば、強いマイナス印象を持たれることはほとんどありません。
具体的な焼香の流れと作法のポイント
ここでは、一般的な「立礼焼香（立って行う焼香）」の流れを、宗派をまたいで共通しやすい基本形として整理します。
- 順番が来たら祭壇前へ進む
喪主や遺族に軽く一礼してから焼香台へ向かいます。歩くスピードは早すぎず、ゆっくりすぎずを心がけます。 - 祭壇に向かって一礼
焼香台の前に立ったら、まず祭壇（故人の遺影）に向かって一礼します。 - 香をつまみ、静かに香炉へ
指で少量の香をつまみ、額へおしいただく作法がある宗派もありますが、迷う場合はおしいただかずにそのまま香炉に落とす形でも大きな失礼にはなりません。回数は1回または2回程度にとどめる人が多いです。 - 合掌・黙祷
焼香を終えたら胸の前で合掌し、短く黙祷します。故人との思い出を簡単に心に浮かべ、別れの言葉を静かに伝えるような気持ちで目を閉じるとよいでしょう。 - 一礼して席に戻る
再び祭壇に一礼し、遺族の方へも軽く一礼してから席に戻ります。他の参列者の視界をさえぎらないように、姿勢を少し低めに意識して歩くと丁寧な印象になります。
宗派が違う家のお葬式に参列するときの考え方
自分の家の宗派と、参列するお葬式の宗派が違うことは、決して珍しいことではありません。その場合は、基本的に「葬儀を執り行う側の宗派に合わせる」のが一般的です。
とはいえ、すべての宗派の作法を覚えるのは現実的ではありません。次のような考え方で十分だと捉えておきましょう。
- その場の案内（葬儀社スタッフの説明など）を最優先する
- マナー本と違っていても、「この場ではこうするのだ」と受け止める
- 作法の違いよりも、「失礼にならない態度」を意識する
宗派が違うからといって、焼香を遠慮する必要はありません。「故人を悼む気持ちを表す」という点は、どの宗派でも共通して大切にされているからです。
焼香回数にとらわれすぎないための心構え
焼香の回数は、ネット上でもさまざまな情報があふれており、「こうしなければならない」という意見も散見されます。しかし現実の場では、少し回数が違ったからといって、強く問題視されることは多くありません。
むしろ、
- スマートフォンの電源を切っておく
- 服装や持ち物の色合いを控えめにする
- 会場内での私語や立ち歩きを控える
といった、全体の雰囲気を乱さない配慮のほうが、よほど重要なマナーだともいえます。焼香回数に過度なプレッシャーを感じるより、「できる範囲で丁寧に」を心がけるくらいが、実際の場には合っているでしょう。
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