格安SIMを使っていると、「なぜかお昼休みだけ急に遅くなる」「地図もなかなか開かない」といった経験はないでしょうか。
同じスマホなのに、キャリア（ドコモ・au・ソフトバンクなど）を使っている人は普通に使えていそう…そんな違いが生まれるのには、きちんとした“仕組み上の理由”があります。
この記事では、難しい専門用語はできるだけ避けながら、「格安SIMが昼休みに遅くなる本当の仕組み」と「どう対策すればよいか」を解説します。
格安SIMが「お昼だけ遅い」ように感じる理由
まず知っておきたいのは、「格安SIMだから常に遅い」というわけではない、という点です。
多くの人が体感しているのは、特定の時間帯だけ極端に遅くなる現象です。特に次の時間帯で速度低下が起きやすくなります。
- 12時〜13時ごろ（お昼休み）
- 18時〜22時ごろ（帰宅後の時間帯）
この時間帯は、多くの人が一斉にスマホを使い始める「ラッシュ時間」。
電車のラッシュと同じで、通信の世界でも「道路（回線）が混み合う」ことで渋滞＝速度低下が起きます。
仕組みのポイント：格安SIMは「帯域」をシェアしている
格安SIM会社（MVNOと呼ばれます）は、自前で全国のアンテナ網を持っているわけではありません。
ドコモやau、ソフトバンク、楽天モバイルなど、大手キャリアの回線の一部を「まとめて借りて」、そこから自社のユーザーに分けているイメージです。
ここで重要になるのが「帯域（たいいき）」という考え方です。
ざっくり言うと、帯域とは「同時に流せる通信量の大きさ」のこと。水道管の太さのようなものです。
- 大手キャリア：太めの水道管を自社ユーザーのために持っている
- 格安SIM：その水道管の一部だけを時間帯・容量を決めて借りている
お昼休みになると、多くの人が動画を見たりSNSを開いたりして、一気に通信量が増えます。
大手キャリアはもともとの水道管が太く、さらに自社ユーザーを優先的に流せる仕組みになっているため、ある程度混んでも速度を維持しやすいのです。
一方、格安SIMは「借りている分」の水道管しか使えません。
そこにたくさんの利用者が一斉にアクセスするため、すぐに“詰まりやすい”状態になり、結果として「Webページがなかなか開かない」「地図アプリが重い」といった体感につながります。
なぜ「お昼の混雑」を前提にした料金設計になっているのか
「だったら、もっとたくさん回線を借りてくれればいいのに」と思うかもしれません。
ここには「料金」と「混雑」のトレードオフがあります。
- より多くの帯域を借りる → コストが上がる → 月額料金を高くせざるを得ない
- 借りる帯域を抑える → コストを抑えられる → 月額料金を安くできるが、混雑時は遅くなりやすい
格安SIMが「月額1,000円台」「データ量の割に安い」といった料金を実現できている裏側には、
「混雑時間の快適さをある程度あきらめる代わりに、コストを抑えている」という事情があります。
つまり、お昼休みの速度低下は、単なる“手抜き”ではなく、
「安さを優先する」というサービス設計の結果として、ある程度は避けられない面があるのです。
格安SIMでも「比較的速い」会社があるのはなぜ？
とはいえ、同じ格安SIMでも「ここは昼でもそこそこ速い」と評判のところもあります。
この差は、おもに次のような工夫や方針の違いから生まれます。
- 借りている帯域の量を多めに確保している
- 特定の時間帯向けに帯域を増やす契約をしている
- ユーザー数の増え方に合わせて帯域をこまめに増強している
- 自社内で通信を圧縮したり、やり取りを効率化する工夫をしている
ただし、これらはすべてコストと関係します。
そのため、「月額は最安値ではないけれど、その分“そこそこ速い”」というバランス型の格安SIMも多いのです。
お昼の遅さをできるだけ避けるための工夫
完全に混雑をなくすことはできませんが、工夫次第でストレスをかなり減らせます。
日常で実践しやすい対策をいくつか挙げます。
1. 大容量データはお昼を避けて使う
- 動画視聴や大きなアプリのダウンロードは、朝・夜・Wi-Fi環境で行う
- OSやアプリの自動アップデートは「Wi-Fiのみ」に設定しておく
2. 「軽い使い方」に切り替える
- 地図アプリは事前にオフライン地図をダウンロードしておく
- SNSや動画は画質・自動再生設定を下げておくと読み込みが軽くなる
3. プランや会社を見直す
- 「少し高くてもお昼もある程度速い」タイプの格安SIMを検討する
- 大手キャリアの「オンライン専用・サブブランド系プラン」も候補に入れる（料金と安定性の中間的な選択肢）
最近は、公式サイトやレビューサイトで「お昼の実測速度」を公開しているケースも増えてきました。
契約前に、料金だけでなく「混雑時間の速度の評判」も確認しておくと失敗しにくくなります。
「自分にとって許せる遅さ」はどのくらいかを考える
最終的には、「スマホで何をどれくらい使うか」で、最適な選択は変わってきます。
- メールやテキスト中心で、お昼は少し遅くても構わない → 料金重視の格安SIM
- お昼休みに動画やSNSをよく使う → 多少高くても混雑に強いプラン
- 仕事でリアルタイム性が必要 → 大手キャリアや品質重視のサブブランド系
格安SIMの「昼休みに遅い」という特徴は、言い換えれば「安く使える代わりに、ピーク時間は少し我慢する」仕組みです。
この仕組みを知っておくと、「なんで自分のスマホだけ遅いんだろう」とイライラするよりも、
自分の使い方にあったプラン選びや、使い方の工夫で上手に付き合っていけるようになります。
通信の世界にも、「安いには訳がある」「快適さにはコストがかかる」という、シンプルだけれど大事な原則があります。
そのバランスを理解したうえで、自分に合った“ちょうどいい”スマホ環境を見つけてみてください。
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