大きな総合病院を受診したあと、会計で「紹介状なし初診時選定療養費」という見慣れない項目を見て、金額の大きさにびっくりした人は少なくありません。「診察料以外に、なぜこんなお金を払うの?」と疑問に思うのは当然です。
この記事では、この「紹介状なし初診時選定療養費」の仕組みや背景、その成り立ちや考え方のカラクリを、できるだけわかりやすく解説します。大病院にかかる前に知っておきたいポイントや、お金を抑えるためのちょっとした工夫もあわせて整理してみましょう。
「紹介状なし初診時選定療養費」とは何か?
まず、名前が長くて覚えづらいこの費用。かんたんに言うと、
- 大きな病院を「いきなり受診」したときにかかる追加料金
- 診察料とは別に、自費で支払うお金
という位置づけのものです。
もっと正確に言うと、一定規模以上の大病院(一般的には「特定機能病院」や、ベッド数400床以上など)で、かかりつけ医などからの紹介状なしに初診を受けたときに、病院側が患者さんに請求できる「特別な料金」です。健康保険の対象外なので、窓口で全額自己負担になります。
なぜわざわざ追加料金を取るのか?背景にある2つの事情
「具合が悪くて病院に行ったのに、なんで追加料金?」という素朴な疑問の裏側には、大きく分けて次の2つの事情があります。
- 大病院の混雑を防ぎ、本当に高度な医療が必要な人のための余力を確保したい
- 身近なクリニックや診療所(かかりつけ医)を、もっと上手に使ってもらいたい
大病院は、救急や高度な手術、重い病気の治療などを担う「地域の最後の砦」です。ところが、ちょっとした風邪や軽いケガで、いきなり大病院を受診する人が多いと、検査や手術が必要な人の診療が後回しになりかねません。
そこで国は、「まずは身近な町のお医者さんへ行きましょう」「必要なときだけ大病院へ紹介します」という流れをつくるために、紹介状なしで大病院を受診したときは、追加料金をお願いするというルールを整えてきました。
意外と知られていない「金額の目安」と「対象になる病院」
この選定療養費には、厚生労働省が定めた最低ラインの金額があります。実際の金額は病院ごとに違いますが、ざっくりしたイメージとしては、
- 初診で数千円~1万円台(それ以上の病院もある)
- 再診でも、一定の条件で追加料金がかかることがある
という水準になっています。ふつうの診察料にプラスされるので、「思ったより高かった」と感じる人が多いのも無理はありません。
対象となるのは一般的に、
- 特定機能病院(大学病院など)
- ベッド数が多い地域の中核病院
などですが、どの病院が対象か・いくらかかるかは、各病院のホームページや受付に表示されています。受診前に一度チェックしておくと安心です。
「カラクリ」といわれる理由:お金の流れと制度の本音
この制度が「カラクリ」と感じられるのは、
- 診察料とは別に「特別料金」がある
- 保険証を出しても、なぜか全額自己負担
- 病気が軽い・重いにかかわらず、一律の金額
といった、わかりにくさがあるからでしょう。
ただし、制度の本音としては、
- お金をたくさん取ることが目的ではない
- 患者さんに「受診の入口」を意識してもらうための「値札」のような役割
という面が大きいのです。
裏を返せば、紹介状を持っていけばこの費用は原則不要です。つまり、「まずかかりつけ医に相談し、必要なときに大病院を紹介してもらう流れ」を利用してほしい、というメッセージでもあるわけです。
この費用がかからない・軽減されることがあるケース
すべての人が必ずしも選定療養費を払うわけではありません。病院や地域のルールにもよりますが、一般的には次のようなケースで、免除・軽減されることがあります。
- 救急車で運ばれた場合や、救急外来で緊急性が高いと判断された場合
- すでにその病院に定期的にかかっていて、同じ病気の再診にあたる場合
- 自治体の独自制度などで、特定の条件の患者さんの負担を軽減している場合
ただし、細かい条件は病院ごとに異なります。自分が当てはまりそうかどうかは、受付や医療相談窓口に確認してみると安心です。
かしこく利用するコツ:かかりつけ医と情報の整理
この制度とうまく付き合うためのシンプルなポイントは、次の2つです。
1. まずは「かかりつけ医」を決めておく
ふだんから、風邪やちょっとした体調不良で相談できる近所のクリニック・診療所を決めておくと、大病院を受診すべきかどうかも含めてアドバイスをしてもらえます。必要だと判断されれば、紹介状も書いてもらえます。
2. 自分の健康情報をメモしておく
大病院に行くことになったとき、
- 今飲んでいる薬
- これまでにかかった大きな病気や手術
- アレルギーの有無
などをメモしておくと、紹介状に書かれている情報と合わせて、診察がスムーズになります。結果的に、ムダな検査が減る・受診回数が減るといったメリットにもつながりやすくなります。
「高いだけのムダなお金」なのか?制度との付き合い方
選定療養費は、たしかに患者さんにとっては負担を感じやすいお金です。「知らずに払う」と、なおさら不満が募ってしまうでしょう。
一方で、大病院の役割分担をはっきりさせ、限られた医療資源を守るための「合図」のような制度でもあります。制度そのものに賛否はありますが、現時点では、
- 大病院に行く前に、紹介状の有無と費用を確認する
- かかりつけ医を上手に活用する
- どうしても不安なときは、医療相談窓口で事前に聞いてみる
といった工夫で、納得感を持ちながら制度と付き合っていくことが現実的です。
「なんとなく大病院が安心だから」と受診する前に、自分の状態と医療資源のバランスを一度立ち止まって考えてみる。その小さな一歩が、結果的に自分の時間とお金、そして社会全体の医療の質を守ることにもつながっていきます。























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