「宝くじの当せん金は非課税なのに、競馬の払戻金には税金がかかるってどういうこと？」と不思議に思ったことはないでしょうか。同じ「当たったお金」なのに、扱いが違うのはパッと聞くとかなり不公平にも感じられます。
この記事では、宝くじと競馬の払戻金が税金の面でどう違うのか、そしてなぜそうなっているのかを、できるだけ専門用語を使わずに解説します。違いの背景を知ることで、ちょっとした税金リテラシーが身につき、うっかり申告漏れをしてしまうリスクも減らせます。
宝くじはなぜ「非課税」なのか？
まず大前提として、日本の宝くじ（ジャンボ宝くじ、スクラッチ、ロト、ナンバーズなど公的なもの）の当せん金は、所得税がかからない「非課税所得」として扱われます。これは所得税法という法律の中で、はっきりと定められています。
理由を簡単に整理すると、次のようになります。
- 国や自治体が運営する「公共性の高い制度」だから
宝くじは、発売元が自治体などの公的機関であり、収益の一部は地方自治体の財源や公共事業に使われます。 - 購入時点ですでに「実質的な税金」が含まれていると考えられているから
宝くじの売上のうち、当せん金に回るのは約半分程度とされます。残りは運営費や自治体の収入になっており、ここに「税」の性格があると考えられています。 - 当たっても申告不要にして、制度をシンプルにするため
当たる人がまれで、しかも当たった人それぞれに細かく税金を計算させると、事務も複雑です。最初から「非課税」としておけば、当せん者も税務署もシンプルに済みます。
このように、宝くじの当せん金は、制度の性格上、「税金がもう前払いされているようなもの」とも理解されやすく、個人が受け取る段階では課税されません。
競馬の払戻金にはなぜ税金がかかるのか？
一方で、競馬・競輪・競艇・オートレースなどの払戻金は、原則として税金の対象になります。こちらは法律上、「当せん金付証票の払戻し」といった扱いではなく、「一定の取引の結果として得た利益」とみなされやすいからです。
個人が楽しみで馬券を買って、ときどき当たる程度であれば、税務上は多くの場合、「一時所得」として扱われます。ポイントは次の通りです。
- 競馬の払戻金＝「たまたま得た利益」とみなされる
給与や事業のように継続して得る収入ではなく、偶然的な収入として考えられ、「一時所得」に区分されます。 - ハズレ馬券がすべて経費になるわけではない
一般的な一時所得では、「その収入を得るために直接かかった費用」だけが差し引けるとされ、競馬ではどこまでが「直接の費用か」が争点になりがちです。 - 一時所得には50万円の特別控除がある
保険の一時金や競馬の払戻金など、いろいろな「一時所得」を合計したうえで、その年の合計から50万円を差し引いた額の半分が、課税の対象になります。
たとえば、ある年の競馬の払戻金（必要経費控除前）が80万円で、計算上の経費が30万円だとすると、利益部分は50万円。ここから50万円の特別控除を引くと0円なので、その年は競馬の払戻金については課税されない、というイメージです。
実はグレー？ 競馬で「継続的に」儲けている人の場合
もう少しややこしいのが、「ほぼ専業のように競馬をやっている人」「大量に馬券を買って、継続的に利益を出している人」のケースです。
過去の裁判では、コンピューターで大量に馬券を買い続けた人の払戻金について、「一時所得」ではなく「雑所得（ある意味、事業に近い継続的な所得）」と認定されたこともあります。この場合、ハズレ馬券の多くが「必要経費」として認められました。
つまり、競馬の払戻金と一口にいっても、
- たまに楽しみで買っている人：
多くは「一時所得」扱いで、50万円の特別控除などのルールが適用される。 - ほぼ事業のように大規模・継続的に行っている人：
「雑所得」など別の扱いになる可能性があり、その分、経費の考え方も変わる。
といった違いが生まれるのです。どちらに該当するかは、購入頻度や金額、手法など、個別事情を踏まえて判断されます。
宝くじと競馬、法律上の「位置づけ」の違い
では、なぜ宝くじと競馬でここまで扱いが違うのでしょうか。ざっくりと整理すると、次のような法律上の位置づけの違いがポイントです。
- 宝くじ：公的な「くじ」制度の当せん金
所得税法で明確に「非課税」とされており、国・自治体の財源確保という側面をもつ。 - 競馬：公営ギャンブルだが、払戻金は「所得」として課税対象
宝くじのような特別な非課税規定がなく、原則として所得税のルールの中で処理される。 - 「税金のかかる・かからない」は、制度ごとに法律で決まる
似たように見えるお金でも、「くじの当せん金として特別扱いされるのか」「偶然得た収入として通常のルールで扱われるのか」で、結果が変わる。
つまり、「どちらも運が良くて当たったお金」ではあるものの、法律がスタートの時点で違う扱いをしている、というのが根本的な理由です。
実生活で意識しておきたいポイント
一般の人が意識しておきたいポイントを、最後にまとめます。
- 宝くじの当せん金は、原則として税金を気にしなくてよい
高額当せんでも、その受取りに対して所得税はかかりません。ただし、そのお金で不動産を買ったり、誰かに大きな贈与をしたりすると、別の税（贈与税・相続税など）の話は出てきます。 - 競馬・競輪などで大きく当たったときは、税金の可能性を意識
「ちょっとしたお小遣い」程度なら気にしない人も多いですが、金額が大きくなるほど、税務上の扱いが問題になりやすくなります。 - 継続的に投票している人は記録を残す習慣を
購入履歴や払戻金の記録を残しておくことで、「利益がどれくらいか」「必要経費として認められそうなものは何か」を後から確認しやすくなります。 - 不安な場合は早めに専門家に相談
金額が大きい場合や、継続的に投票している場合は、税理士など専門家に相談すると安心です。
制度の背景を知っておくと、「宝くじは非課税、競馬は課税」という一見不公平に見えるルールも、ある程度は筋道立てて理解できるようになります。税金の仕組みは難しく感じられますが、自分のお金に関わる大切なルールです。日常生活で触れる身近な例から、少しずつ理解を深めていきましょう。
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