「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を飲めば簡単に痩せる」という情報を見かけることがありますが、これは半分以上が誤解です。防風通聖散は、もともと「肥満を治す薬」ではなく、「体の熱や老廃物をさばいて、体調を整える」漢方薬です。むやみに飲めば副作用もあり、体質に合わない人も少なくありません。
ここでは、防風通聖散が「痩せ薬」と言えない理由と、起こりうる副作用、そしてどんな体質の人に合いやすいのかを、専門用語をできるだけ避けて解説します。
防風通聖散はなぜ「痩せ薬」ではないのか
防風通聖散は、古くから使われてきた漢方薬で、主に次のような状態に使われます。
- 便秘ぎみ
- 顔がほてる、赤くなりやすい
- のぼせやすい
- 体全体に熱がこもったような感じがある
- 肌あれ、吹き出物が出やすい
こうした「熱がこもり、老廃物がたまりやすい人」の体をスッキリさせることで、結果として体重が減ることがある、という位置づけです。
つまり、防風通聖散は「脂肪を直接燃やす薬」ではありません。食べすぎや運動不足を続けたまま、「薬を飲めば痩せる」と考えるのは現実的ではありませんし、かえって体調を崩す原因になります。
どんなメカニズムで体に働くのか
防風通聖散には、複数の生薬(しょうやく)がブレンドされています。ざっくりいうと、次のような働きをねらっています。
- 便通をよくする:大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)などが腸の動きを助け、たまった便や余分な水分を外に出しやすくします。
- 体の熱をさます:黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)などが、体の「ほてり」をクールダウンさせます。
- 水のめぐりを整える:生姜(しょうきょう)、薄荷(はっか)などが、体の水分バランスをととのえる方向に働きます。
このように、「出す」「冷ます」「めぐらせる」という方向に体を動かしていくため、体質が合った人では、むくみが取れたり、便秘が改善したりして、結果として体重が落ちることがあります。
一方で、もともとお腹が弱い人や冷えやすい人が飲むと、「出しすぎ」「冷やしすぎ」になり、体調を崩すリスクが高まります。
防風通聖散で起こりやすい副作用
防風通聖散は市販薬としてもよく見かけますが、「市販だから安心」というわけではありません。飲み方や体質によって、次のような副作用が出ることがあります。
- 下痢・腹痛:便を出す力が強いため、合わないとお腹がゆるくなったり、痛くなったりします。
- 脱水ぎみになる:下痢や発汗が増えることで、水分が足りなくなり、だるさやめまいが出ることがあります。
- 食欲不振・吐き気:胃腸への刺激で、気持ち悪さや食欲低下が起きることがあります。
- 肝機能の異常:まれですが、肝臓の数値が悪くなる例も報告されています。
「お腹がゆるいけど、痩せてきたから続けよう」という考え方は危険です。下痢で体重が減っているだけの場合、体力や栄養が落ちているサインかもしれません。
どんな人の体質に向きやすい?
漢方では、薬を選ぶときに「何の病気か」だけでなく、「どんな体質か」を重視します。防風通聖散が合いやすいのは、一般的に次のようなタイプだとされます。
- 比較的がっしりした体型で、体力がある
- 顔色や肌が赤くなりやすい
- 汗をかきやすく、暑がり
- 便秘ぎみで、お腹が張りやすい
- 脂っこいもの、甘いものが好きで食べすぎる傾向がある
逆に、次のようなタイプの人は、注意が必要です。
- やせ型で、体力に自信がない
- 冷えやすく、手足がいつも冷たい
- お腹が弱く、すぐに下痢や腹痛を起こす
- 食が細く、たくさん食べられない
こうした人が「痩せたいから」と自己判断で防風通聖散を飲むと、体調悪化につながりやすいので、避けた方が無難です。
安全に使うためのポイントと、他の選択肢
防風通聖散を検討する場合、次のポイントを押さえておくと、安全性が高まります。
- 「痩せ薬」と思わない:あくまで体質や症状が合った場合に、体のバランスを整える薬です。
- 今の体調を確認する:下痢がち、冷えやすい、持病がある人は、自己判断で飲まないようにしましょう。
- 長期連用を避ける:市販薬でも、漫然と長く飲み続けず、目安の期間を守ることが大切です。
- 気になる症状が出たら中止:お腹の強い痛み、ひどい下痢、全身のだるさ、黄疸(肌や白目が黄色くなる)などがあれば、すぐに服用を止め、医療機関に相談しましょう。
「どうしても体重を落としたい」という場合、本来は
- 食事内容の見直し(量・バランス・時間帯など)
- 少しでも続けやすい運動習慣(散歩やストレッチなど)
- 睡眠とストレスケア
といった、生活全体の見直しが土台になります。その上で、「体質的に合う人が、医師や薬剤師、漢方に詳しい専門家と相談しながら防風通聖散を使う」というくらいの距離感がちょうどよいと言えるでしょう。
防風通聖散は、正しく使えば役に立つこともある一方で、「誰にとっても安全で、飲めば痩せる魔法の薬」ではありません。広告のイメージだけで判断せず、「自分の体質に合うか」「本当に必要か」を落ち着いて見極めることが大切です。
























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