フードロスの先進国比較

フードロスの先進国比較：日本とEUを中心に見る一人あたり排出量と対策状況

世界では、生産される食料のおよそ3分の1が食べられずに捨てられているとされ、温室効果ガス排出や食料安全保障の面で大きな損失となっています。フードロス削減はSDGs（持続可能な開発目標）のターゲット12.3にも位置づけられ、各国で対策が進んでいます。本稿では、最新の公的統計をもとに、日本とEUなど先進国・地域のフードロス（食品ロス・フードウェイスト）を「一人あたり量」を中心に比較し、どの国・地域がどのくらいの課題を抱えているのかを、一般の方にも分かりやすく整理します。

区分	対象国・地域	年次（データ年）	フードロス総量（概数）	一人あたりフードロス量（年間）	主な内訳・特徴
※ 定義が異なるデータを含みます（例：日本は「可食部のみ」、EUは「可食＋不可食」）。厳密比較ではなく規模感の目安としてご覧ください。
日本	🇯🇵 日本（全国）	2023年度（2023/4〜2024/3）	約464万トン可食部のみ	約37kg/人・年可食部のみ	事業系約231万トン、家庭系約233万トンでほぼ半々。2012年度以降で最少水準へ。env.go.jp
EU全体	🇪🇺 EU27カ国合計	2023年	約5,820万トン可食＋不可食	約130kg/人・年（うち家庭約69kg）	全体の約53%が家庭からの廃棄。製造・外食・流通・一次生産も大きい。経済価値は約1,320億ユーロ。food.ec.europa.eu
EU（参考）	🇪🇺 EU27カ国合計	2020年	約5,690万トン前後	127kg/人・年（家庭70kg/人）	コロナ禍初年度の推計。家庭が全体の約55%。euronews.com
グローバル	🌍 世界全体	主に2011年以降のFAO分析等	生産の約3分の1が損失・廃棄	地域差大きく一概に示しにくい	収穫後〜小売で約14%が「ロス」、小売〜家庭の「廃棄」を含め合計で約1/3に。food.ec.europa.eu

出典元情報
・日本：環境省「日本の食品ロス及び廃棄物等の発生量推計」（2023年度）ほか（env.go.jp）／政府広報オンライン（gov-online.go.jp）／Nippon.com（nippon.com）
・EU：欧州委員会 Food Waste 公式（food.ec.europa.eu）／欧州議会（europarl.europa.eu）／Euronews（euronews.com）
・EUの2030年削減目標：各種報道等（ft.com）
・グローバル：FAO分析を引用する欧州委員会解説（food.ec.europa.eu）

説明、解説等
● 日本とEUの比較：日本の「可食部のみ37kg/人」は、EUの「可食＋不可食130kg/人」と定義が異なるため単純比較不可。ただし規模感としてはEUの方が一人あたり廃棄量が大きい可能性。日本も不可食部を含めれば実態は37kg/人より増える。
● 家庭 vs 事業系：日本は家庭系と事業系が約1:1。EUは家庭が約53%とやや大きく、買い過ぎ・保存ミス対策が重要。
● 政策・ターゲット：日本は食品リサイクル法や食品ロス削減推進法の下、事業系の数値管理と家庭系の啓発・見える化が進展。EUは2030年に向け食品廃棄削減の義務目標（生産・加工10%、最終消費段階30%削減）で規制を強化。
● データ整備：日本は可食部ロスの年次推計を継続する一方、不可食部を含むトータル把握は今後の課題。EUは不可食部も含む統一指標で国際比較を前進。
● まとめ：日本は制度・実務の両面で一定の先進性があるが、国際比較に耐える指標統一と、家庭・事業の両輪での継続的な削減が鍵となる。