マンションに住んでいると、キッチンの換気扇とは別に、24時間ずっと弱く動いている換気設備があります。「電気代がもったいない」「音が気になる」といった理由で、ついスイッチを切りたくなる設備ですが、実はこれを止めると、意外な“副作用”が起きることがあります。この記事では、24時間換気を止めると何が起きるのか、そして上手な付き合い方について、できるだけ専門用語を使わずに解説していきます。
24時間換気って、そもそも何をしているの?
マンションの24時間換気は、ざっくり言うと「家の中の空気をゆっくり入れ替え続ける装置」です。
部屋のどこかにある換気口や浴室・トイレの換気扇とつながっていて、外から新しい空気を取り込み、古い空気を外に出しています。
この仕組みには、次のような役割があります。
- 人が出す二酸化炭素を外に出して、こもった空気を薄める
- 調理や生活で発生した湿気を外に逃がす
- 建材や家具から出るニオイや化学物質を外に出す
- カビやダニが好む「ジメジメ環境」を作りにくくする
つまり、「換気=空気の掃除係」のようなもの。
その掃除係を止めると、空気の中でいろいろなことが起き始めます。
換気を止めると起きる“空気の濃ゆさ”
24時間換気を止めると、部屋の空気がゆっくりと「濃く」なっていきます。
ここでいう「濃い」とは、ニオイや湿気、二酸化炭素などが、じわじわ溜まっていくイメージです。
よくあるのが、こんな変化です。
- 朝起きたときに、なんとなく空気がどんよりしている
- 人が集まると、すぐに部屋がムッとする
- 料理のニオイが、いつまでも残るようになった
- 窓を開けた瞬間、「外のほうが爽やかだ」と感じる
普段はゆっくり入れ替わっているので気づきにくいですが、換気を止めると、部屋の空気が「閉じ込められている」ことがよくわかります。
カビや結露が増えるという意外な副作用
24時間換気を止めたときに、多くの人が体感しやすい副作用が「カビや結露の増加」です。
特にマンションは、気密性(外とのすきまの少なさ)が高いため、湿気が逃げにくい構造になっています。
こんなところに影響が出やすくなります。
- 北側の部屋やクローゼットの隅に、うっすらカビが
- 窓ガラスの下部やサッシに、ベタベタと結露がつく
- 押し入れの中の布団や革製品が、しっとり湿っぽい
- 浴室の赤カビ・黒カビが、以前より増えた気がする
湿気は、目に見えないだけで家中に広がります。
24時間換気は、その湿気をこっそり外に逃がす役割を担っているため、止めてしまうと「カビが育つステージ」が整いやすくなるのです。
ニオイがマンション内を“旅する”ことも
換気を止めると、思わぬルートでニオイが動くことがあります。
本来は外へ出るはずの空気が、逆にどこかのすきまから入ってきたり、隣の部屋や上下階へ流れていったりすることも。
例えば、こんな現象が起きることがあります。
- トイレや浴室のニオイが、廊下や寝室まで広がる
- 配管スペースを通じて、他の部屋のニオイが漂ってくる
- ベランダでのニオイが、思わぬ部屋に入り込む
マンションは、見えないところでさまざまな空気の通り道がつながっています。
24時間換気を止めると、空気の流れが乱れ、ニオイのルートも変わってしまうことがあるのです。
電気代節約のつもりが、逆効果になることも
24時間換気を止める理由として多いのが「電気代が気になるから」。
しかし、実は「節約したつもりが、別の出費が増える」というケースもあります。
例えば、次のようなことが起きる可能性があります。
- カビが増えて、除湿機や空気清浄機をフル稼働することに
- ニオイが気になって、消臭剤や芳香剤を買い足す
- 結露対策のグッズや、カビ取り用品にお金がかかる
24時間換気にかかる電気代は、1か月あたり数百円〜千円前後と言われることが多く、意外と少ない場合もあります。止める前に、「止めた結果、他で余計にお金がかからないか」をイメージしてみるのも一つの考え方です。
どうしても止めたいときの、現実的な付き合い方
とはいえ、音が気になる、花粉の時期は外気がつらい…など、24時間換気をずっと動かし続けるのが難しい場面もあります。
そんなときは、「完全に止める」のではなく、「メリハリをつけて使う」意識を持つと、リスクを減らしやすくなります。
例えば、次のような工夫です。
- 人が長時間いる時間帯(夜〜朝など)は、できるだけONにしておく
- どうしても止めたい時間は、窓を少し開けるなど、代わりの換気をする
- 浴室やキッチンを使ったあとは、しばらくは換気を強めにしておく
- 花粉の季節は、給気口にフィルターを追加するなど、対策を組み合わせる
また、マンションごとに設備や設計が違うため、管理組合の資料や取扱説明書を一度読み直して、「この建物では、どんな使い方を想定しているのか」を確認しておくと安心です。
“止めるかどうか”より、“どう付き合うか”を考える
マンションの24時間換気は、「動かして当たり前」の存在になっているため、つい理由もわからないままスイッチを操作しがちです。
しかし、その裏では「湿気」「ニオイ」「空気の流れ」といった、目に見えにくいバランスを保つ役目を担っています。
24時間換気を止めるかどうかは、正解が一つではありません。
大切なのは、
- 止めることで起きる“副作用”を知っておくこと
- 自分の暮らし方やマンションの環境に合うルールを決めること
- 「完全に止めっぱなし」ではなく、状況に応じて使い分けること
という視点です。
毎日なんとなく回っている24時間換気を、あらためて「自分の部屋の空気の管理人」として見直してみると、マンション暮らしの快適さが少し変わって見えてくるかもしれません。























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