先進国の裁判件数比較:人口10万人あたりで見る主要国の「訴訟の多さ」
「日本は訴訟が少ない国」とよく言われますが、実際に他の先進国と比べるとどの程度違うのでしょうか。本稿では、国際機関(主に欧州評議会CEPEJやEU Justice Scoreboardなど)の統計を基に、「人口10万人あたりの裁判件数(主に第一審の民事・商事事件件数)」を中心に、主要先進国の水準を比較しやすい形に整理しました。
利用できる統計は国・制度ごとに定義が微妙に異なるため、ここでは「傾向をつかむための近似値」として、直近数年の代表値を概算し、一般の読者にも分かりやすいレベルに丸めて提示しています。

出典元情報
・日本の裁判所構成と事件種別(地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の役割) 国立国会図書館「司法判例情報(Research Navi)」:https://ndlsearch.ndl.go.jp/en/rnavi/politics/hanrei
・日本の民事・家事・刑事事件の件数(年次推移、裁判所種別別) 最高裁判所『司法統計年報』各年版(民事編・刑事編・家事編)
・日本の事件件数(二次データ)Statista:Number of cases at courts in Japan by type ほか関連ページ
・欧州の民事・商事事件数、EU平均値 欧州委員会「EU Justice Scoreboard 2025」:https://www.eumonitor.eu/…
・フランスの刑事事件数と欧州平均との比較 Statista:Criminal cases in first instance per 100 inhabitants
・その他各国(ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、北欧諸国、韓国)の裁判件数・訴訟利用状況:各国司法統計(司法省・裁判所年報)、OECD・欧州評議会CEPEJの司法統計、国際法律事務所・調査会社の比較レポート等を参照し、人口10万人あたりへ換算・概算。
解説・読み解き
・日本は主要先進国の中で人口当たりの「裁判に乗る件数」が際立って少なく、EU平均の半分以下とみられます。背景には、行政処分・示談・ADRの活用、訴訟コストや時間・社会的コストの回避志向、紛争の早期調整文化などが指摘されます。
・ドイツやフランス、イギリスは、労働・行政・商事などで裁判所利用が比較的活発。アメリカは民事の提訴が極めて多く、刑事の件数も高水準で、人口当たりでは突出します。
・韓国は民事・家事・行政を含む全般で裁判利用が高く、日本とのギャップが大きい点が特徴です。
前提・注意点
・国ごとに統計の定義やカバレッジ(第一審のみか、控訴審を含むか、民事のみか刑事を含むか 等)が異なるため、本稿の数値は傾向をつかむための概算レンジです。
・同一国でも年度によって変動し、制度改正や人口動態、起訴・受理の運用などの影響を受けます。
・国際比較では、訴訟に至る前段(行政処分、和解、調停、仲裁、苦情処理制度等)の厚みの差が数字に表れやすい点にも留意が必要です。






















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