MRI検査は、強い磁石と電波を使って体の中を詳しく映し出す、とても役に立つ検査です。一方で、刺青(タトゥー)や貼り薬(貼付薬)があると「やけどをする」「検査が受けられない」など、不安な話を耳にすることもあります。実際には、きちんと注意点を守れば安全に検査できるケースが多く、むやみに怖がる必要はありません。ただし、何も知らずに検査を受けるのは避けたいところです。
この記事では、なぜMRI検査で刺青や貼り薬が問題になるのか、その理由と検査前に気をつけたいポイントをわかりやすく解説します。
MRIとはどんな検査?「強力な磁石」がポイント
MRIは「磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)」という名前の通り、強い磁場と電波を使って身体の断面を撮影する検査です。CTのようなX線は使わないため、放射線被ばくはありません。
ただし、この「強力な磁場」が曲者です。金属や、金属を含むインク・薬剤などが体や皮膚にあると、
- 磁石に引っ張られる
- 電波の影響で熱を持つ(やけどのリスク)
- 画像に影(アーチファクト)が出て見えにくくなる
といった問題が起こる可能性があります。刺青や貼り薬が話題になるのは、この仕組みと関係しています。
刺青(タトゥー)がMRIで危険と言われる理由
刺青のインクには、色を出すためにさまざまな成分が含まれています。その中には、わずかながら金属成分(鉄、銅、チタンなど)が入っているものもあります。この「わずかな金属」が、強い磁場の中では問題になることがあります。
考えられるリスクとしては、
- インクの金属成分が電波に反応して一時的に熱を持ち、ヒリヒリ感や軽いやけどのような症状が出る可能性
- 刺青の部分に画像の乱れが出て、周辺の診断がしにくくなる可能性
が挙げられます。ただし、必ず大きなトラブルが起こるわけではなく、
- 使われているインクの種類
- 刺青の大きさ・位置
- MRI装置の強さ(磁場の強さ)
などによりリスクは変わります。最近の報告では、命に関わるような重い合併症は非常にまれとされていますが、「チクチクする」「熱い感じがした」といった軽い痛みを訴える方は一定数います。
刺青がある人がMRIを受けるときの注意点
刺青があっても、多くの場合は工夫をしながらMRI検査を行うことができます。大事なのは「隠さず、事前にきちんと伝える」ことです。
- 刺青がある部位と大きさを事前申告する
問診票や技師さんの質問に対して、「どこに」「どれくらいの大きさで」刺青があるのかを正直に伝えましょう。アートメイク(アイラインや眉のアートメイク)も同様です。 - 検査中に違和感があればすぐ伝える
MRI中はインターホンやブザーで外と連絡がとれるようになっています。「熱い」「痛い」と感じたら、我慢せずに合図をして検査を中断してもらいましょう。 - 刺青の位置と検査部位を相談する
刺青の場所と撮影したい場所が離れていれば、大きな問題にならないこともあります。医師や技師と相談しながら安全性を検討します。
「刺青があるからMRIは絶対無理」と決めつけず、まずは病院側に相談することが大切です。
貼り薬がMRIで問題になる理由
意外と見落とされがちなのが、痛み止めや禁煙補助薬、ホルモン剤などの「貼り薬(貼付薬)」です。一見ただの薄いシートに見えますが、
- 粘着面やシート部分に、ごく薄い金属が使われている製品がある
- 薬剤や台紙の種類によっては、電波を受けて熱を持つことがある
といった理由で、MRI中に「局所的なやけど」の原因になりうるとされています。
また、貼り薬をつけたまま検査すると、
- 熱で薬が予想外のスピードで吸収される可能性
- パッチの接着力が落ちて、途中で剥がれてしまう可能性
といった問題も考えられます。そのため、多くの施設では「原則として貼り薬は事前に剥がしてから検査」という運用をしています。
検査前に知っておきたい貼り薬の扱い
MRI検査が決まったら、貼り薬については次の点を確認しましょう。
- 貼り薬を使っていることを必ず申告する
市販薬・処方薬を問わず、「体に貼っている薬」があれば名前が分からなくても伝えてください。薬剤情報用紙やお薬手帳があればより安心です。 - 病院の指示に従って剥がすタイミングを決める
薬の種類によっては、「検査の○時間前に剥がす」などの指示が必要なものもあります。自己判断でやめず、主治医や検査担当者と相談しましょう。 - 検査後の再貼付も確認する
貼り薬は、貼る位置や時間が決まっていることが多く、検査後の貼り直しも重要です。中断によって効果が弱まらないかも確認しておきましょう。
MRI検査前に確認したいその他のポイント
刺青や貼り薬以外にも、MRI前にチェックしておきたいことはたくさんあります。代表的なものを挙げておきます。
- カツラ、ヘアピン、アクセサリー、時計、スマートウォッチなどの金属類は外す
- カラコン(カラーコンタクト)や磁石入りのつけまつげなど、目の周りの装飾も要注意
- 補聴器、入れ歯、矯正装置などは、種類によって外すかどうかが変わるので、必ず相談する
- ペースメーカー、人工関節、ステントなど体内に金属がある場合は、必ず事前に申告し、検査の可否を医師と判断する
「これは関係ないだろう」と思うものでも、MRIには影響することがあります。少しでも心配なものは、遠慮なく検査スタッフに質問しましょう。
不安があるときは「話すこと」がいちばんの安全対策
MRI検査は、正しく準備すれば非常に有用で、安全性も高い検査です。刺青や貼り薬があっても、
- 事前の情報共有
- 検査中のこまめなコミュニケーション
- 必要に応じた代替検査の検討(CTや超音波など)
といった工夫で、リスクを最小限に抑えることができます。「恥ずかしいから」「忙しそうだから」と遠慮せず、気になることは小さなことでも医師や技師に相談してください。それが結果的に、あなた自身の安全と検査の質を高めることにつながります。






















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