ノートを手書きでびっしり取る人もいれば、パソコンで素早くメモを打ち込む人もいます。「どっちのほうが頭に残るんだろう?」と感じたことはないでしょうか。
仕事でも勉強でも、同じ時間を使うなら、できるだけ記憶に残る方法を選びたいものです。本稿では、「手書き」と「タイピング」で、脳の中で何が違うのかをやさしく整理し、それぞれを上手に使い分けるヒントを考えていきます。
手書きは「ゆっくりだからこそ」記憶に効きやすい
手書きの最大の特徴は、スピードが遅いことです。一見デメリットに思えますが、脳の観点ではこれが強みになります。
- 全部は書ききれないので「要約」する
話をそのまま書き写そうとすると追いつかないため、「何が重要か」「どうまとめるか」をその場で考えることになります。この「取捨選択」や「要約」の過程が、記憶を強くする重要なステップです。 - 手の動きが「形の記憶」として残る
文字を一筆ずつ書くことで、視覚だけでなく「手の感覚」も一緒に使っています。
・紙を見る目
・ペンを動かす手
・書くときのリズム
といった複数の感覚が同時に働くことで、脳の中に「立体的な記憶の痕跡」が残りやすくなります。 - 考えながら書くので「理解」と「記憶」が一体化する
手書きでは、書くスピードが遅いぶん、内容を理解しながら言い換えて書くことが増えます。単に「聞いたことを保存する」のではなく、「意味を噛み砕いて自分の言葉にする」時間が増えるため、理解と記憶が結びつきやすいのです。
タイピングは「速く大量に」記録するのが得意
一方のタイピングには、手書きとは違う強みがあります。
- 情報をほぼそのまま保存できる
キーボードなら会話や講義の内容をかなりのスピードで打ち込めます。
「まず全部残しておきたい」「聞き逃しを防ぎたい」ときには大きなメリットです。 - 後から検索しやすい
デジタルデータなら、キーワード検索ができます。紙のノートをめくるよりも、目的の情報に早くたどり着きやすいのは、タイピングメモならではの利点です。 - 頭を使わなくても「写し取れてしまう」リスク
ただし、速く打てるがゆえに、「聞いたことをほぼ自動的に写すだけ」になりやすい側面もあります。
その場ではたくさんメモを取ったつもりでも、後から読み返すと内容を覚えていない、という経験がある人も多いのではないでしょうか。
タイピングは便利な反面、「楽をしすぎると脳をあまり使わない」道具にもなってしまうのです。
脳の中では何が違う?手書きvsタイピングのざっくりイメージ
専門的な脳科学の話を細かく語り出すと難しくなりますので、ここではイメージしやすい範囲で整理してみます。
- 手書き:
・視覚(文字や図を見る)
・運動(手や指を動かす)
・言語(言葉を選ぶ)
など、複数の役割を持つ脳の領域が同時に働きます。さらに、書くペースが遅いことで「理解」「要約」「構造化」を考えざるを得ないため、単なる記録以上の処理が脳の中で進んでいます。 - タイピング:
こちらももちろん脳を使っていますが、「決まったキーを素早く押す」という動きは、ある程度パターン化されて自動運転になりがちです。そのぶん、「意味を考える」部分が手書きほど強く働かないことがあります。
ざっくり言えば、手書きは脳の広い範囲をじっくり使うので記憶の”刻まれ方”が濃くなりやすく、タイピングは情報の保存と検索に強いが、意識して使わないと記憶の”定着”は弱くなりがち、というイメージです。
状況別のおすすめ:「覚えたいとき」と「残したいとき」
では、実際の生活ではどう使い分ければよいのでしょうか。目的別に考えてみます。
- 本気で覚えたい内容(試験勉強・資格・重要な会議の要点など)
・キーワードや図解は、できるだけ手書きでまとめる
・自分の言葉で「要点」や「なぜそうなるか」を書き出す
・同じ内容を、回数を分けて何度か書いてみる
こうすることで、「理解」と「記憶」をセットで強くできます。 - とにかく抜け漏れなく残したい内容(会議の議事録・インタビューなど)
・まずはタイピングで素早く記録する
・後から、重要な部分だけを手書きで整理し直す
この「二段構え」にすると、タイピングの利便性と、手書きの記憶定着力を両方活かせます。
どちらか一方に決めてしまうのではなく、「覚えるフェーズでは手書き」「集めるフェーズではタイピング」といったように、役割分担をしてしまうのが現実的です。
デジタル時代こそ「手を動かす」ひと工夫を
オンライン授業やリモート会議が増え、パソコンやタブレットで完結する場面も多くなりました。その中でも、少し工夫することで「手書きの強み」を活かすことができます。
- タブレット+スタイラスペンで、図やキーワードだけ手書きする
- タイピングで取ったメモを、後から紙に手書きで要約してみる
- 重要なポイントだけ、あえてノートに大きく書き出してみる
ポイントは、「頭を使いながら、手も動かす」時間をあえて作ることです。
どんな便利なデジタルツールが出てきても、手で書くという行為が、脳にとって良い刺激であることは変わりません。
手書きとタイピング、どちらが正解かではなく、「どう組み合わせれば、自分の記憶にいちばん残りやすいか」を試しながら、自分なりのスタイルを見つけてみてください。
























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