「何度も暗記しているのに、テストの時には思い出せない」「昨日は覚えていた英単語が、今日はもうあいまい…」。そんな経験は、多くの人にとっておなじみではないでしょうか。そこで注目されているのが、勉強を一気にやるのではなく、あえて「分散」させて行う学習法と、復習の間隔をあける「間隔効果」です。これらは単なる勉強テクニックではなく、脳の仕組みにかなったやり方だと考えられています。
この記事では、分散学習と間隔効果がなぜ記憶に効くのか、そのとき脳の中で何が起きているのか、そして実際にどのくらいの間隔で復習するとよいのかを、できるだけやさしい言葉で整理していきます。
分散学習とは?「一夜漬け」と何が違うのか
分散学習とは、同じ内容の学習を一度にまとめて大量に行うのではなく、時間をあけて何度かに分けて行う学習スタイルのことです。対照的なのが「集中学習」、いわゆる一夜漬けです。
例えば、英単語を100個覚えたいとき、
- 一夜漬け:テスト前日に2時間ぶっ続けで100個覚える
- 分散学習:1週間前から毎日20分ずつ、何度も見返しながら覚える
この2つを比べると、テストの直後の成績は一夜漬けでも意外と良かったりします。しかし数日〜数週間たつと、分散学習をした人のほうがはっきりと覚えている、という結果が多くの研究で示されています。
つまり、「すぐに点数を取りたいなら集中学習」「長く覚えていたいなら分散学習」とも言えるわけです。では、なぜ時間をあけて学んだほうが記憶が残るのでしょうか。
間隔効果とは?時間をあけるとなぜ覚えやすくなるのか
同じ内容の勉強でも、「間をあけて」何度か繰り返すほうが、まとめて一度にやるよりも記憶に残りやすい。この不思議な現象は「間隔効果」と呼ばれます。
たとえば、
- 同じ問題集を1日に3回解く
- 同じ問題集を3日連続で1回ずつ解く
この2つでは、合計の回数は同じ「3回」ですが、後者のほうが長期的な記憶には有利と言われています。脳は「何度もくり返し出てくる情報」を大事なものと判断しやすく、そのために記憶の痕跡を強くしていくと考えられています。
脳の中で何が起きている?記憶の「強化」の仕組み
記憶は、脳の中の神経細胞(ニューロン)同士のつながりが変化することで形づくられるとされています。たとえるなら、最初は草むらの中の細い踏み跡のような道が、何度も通るうちにしっかりした小道になり、やがて舗装道路になっていくイメージです。
分散学習や間隔効果が効くのは、この「踏み固め」のタイミングに関係していると考えられます。
- 勉強した直後:脳の中にまだ不安定な痕跡しかない状態
- 少し時間を置く:その痕跡を整理・固定する(睡眠中にも進むとされます)
- 忘れかけたころに復習:再びその道を通ることで、道が太くなる
あえて少し忘れかけてから思い出すという「負荷」が、かえって記憶を強くするのです。ゆるい筋トレを何日も続けると筋肉がつくのに似ています。
最適な間隔はどのくらい?目安の考え方
「それなら、どのくらいの間隔で復習すればいいの?」というのが、実践するうえでの大きな疑問です。厳密な「これが正解」という答えはまだ研究途中ですが、目安としてよく紹介される考え方があります。
ひとつの考え方は、「覚えておきたい期間」によって復習の間隔を変えることです。
- 数日〜1週間後のテストなら:
学んだ当日・翌日・テスト前日など、短い間隔で2〜3回 - 1〜3か月先まで覚えたいなら:
当日 → 2〜3日後 → 1週間後 → 2〜3週間後 と、少しずつ間隔を広げる - 半年〜1年レベルで覚えたいなら:
当日 → 数日後 → 2週間後 → 1か月後 → 3か月後…のように、より長い間隔まで伸ばす
ポイントは、最初は短い間隔で何度か復習し、少しずつ「覚え直す間隔」を長くしていくことです。このやり方は「拡大復習」などと呼ばれ、単語学習アプリなどにも取り入れられています。
実生活でどう使う?分散学習のシンプルな取り入れ方
分散学習や間隔効果の考え方は、資格試験の勉強だけでなく、語学、仕事の研修、プレゼンの練習など、さまざまな場面で応用できます。ここでは、すぐに試せるシンプルな方法をいくつか挙げてみます。
- 毎日少しずつ「同じ内容」を見る習慣をつくる
英単語・漢字・重要な用語などは、1日10分でもよいので、数日〜数週間かけて何度も目にするようにします。 - 「忘れないうち」ではなく「ちょっと忘れかけたころ」に復習
完全に覚えているうちに何度も見続けるより、「あれ、何だったっけ?」と少し考えながら思い出すタイミングで復習するほうが、記憶は強くなりやすいとされています。 - 短時間の勉強を1日に分割する
1時間続けて勉強するよりも、30分ずつを朝と夜に分けるだけでも、分散学習の効果が期待できます。 - 寝る前に軽く復習する
睡眠中は、日中に学んだことを整理し、記憶として定着させる時間だと考えられています。寝る前にその日のポイントをざっと見直すのも有効とされています。
「時間をあけて何度も」が記憶の近道
私たちは、「一生懸命に長時間勉強するほど、たくさん覚えられる」と考えがちです。しかし脳の仕組みに沿って考えてみると、「上手に忘れながら、時間をあけて何度も出会う」ほうが、長い目で見て効率のよい学び方だと言えそうです。
がんばっても覚えられないと感じたときは、集中力ややる気の問題だけでなく、「学習のタイミング」が合っていない可能性もあります。少しずつ、何度も、間隔をあけながら学ぶスタイルを生活の中に取り入れていくことで、同じ努力でも記憶の残り方が変わってくるかもしれません。




















