山の中や海辺などでスマホの電波が「圏外」になったとき、「もし事故が起きたら110番はどうなるんだろう?」と不安になったことはないでしょうか。実は、画面に「圏外」と表示されていても、条件によっては110番などの緊急通報がつながる仕組みが用意されています。本稿では、その仕組みをできるだけ専門用語を避けて、わかりやすく解説していきます。
110番は「特別扱い」されている
私たちが普段、家族や友人に電話をかけるときと、110番・119番などの緊急通報をするときでは、携帯ネットワークの扱いが少し違います。簡単にいうと、緊急通報は次のような「特別扱い」を受けます。
- 契約中の携帯会社の電波がなくても、他社の電波でかけられる場合がある
- 通話が混み合っていても、なるべく優先的につながるように設計されている
- SIMカードが入っていなくても、かけられる機種や状況がある(ただし国やルールによって違う)
つまり、「いつも使っている携帯会社の電波が届かない」=「すべての電波が届いていない」とは限らない、という点がポイントです。
「圏外」でもつながることがあるのはなぜ?
スマホの画面に「圏外」と出ていても、実際には次のような違いがあります。
- 自分の契約している携帯会社の電波がない圏外
- どの携帯会社の電波も届いていない本当の圏外
前者の場合、他社の基地局の電波だけがかろうじて届いていることがあります。通常の通話やインターネットでは、契約した会社のネットワークしか使いません。しかし、110番などの緊急通報の場合は、他社のネットワークを一時的に借りてでもつなごうとする仕組みがあるのです。
イメージとしては、「いつもの路線(自分の携帯会社)が止まっているけれど、緊急時だけは他社の路線に特別に乗せてもらう」といった感じです。ただし、他社の路線(=電波)がそもそも全く届いていない山奥やトンネルの中では、この方法も使えません。
スマホの中では何が起きている?
110番をダイヤルしたとき、スマホの中では次のような流れで動きが進みます。
- 「これは緊急通報だ」とスマホが判断する
- まず、自分の契約している会社の電波でつなごうとする
- つながらない場合、周囲に他社の電波があるかを探す
- 他社の電波でもよいので、緊急通報として接続を試みる
この一連の動きはかなり短時間で行われるため、利用者は「普通に番号を押してかけただけ」のように感じますが、裏側ではスマホとネットワークが一生懸命「別ルート」を探してくれているイメージです。
「完全な圏外」ではどうにもならない
もちろん万能ではなく、「どの会社の電波もまったく届いていない」場所では、110番もかけられません。山深い場所、地下の奥深く、海上の遠方などはその代表例です。
このような場所に行く可能性がある場合、次のような備えがよく検討されています。
- あらかじめ電波状況を調べておく(自治体やキャリアのエリアマップなど)
- 登山用の通信機器や衛星電話、衛星通信サービスの利用を検討する
- 複数キャリアのスマホやモバイルルーターを持つ(エリアの「保険」をかける)
「圏外でも絶対に110番がつながる」と思い込まず、「つながらない場所も確実にある」と理解して行動を計画することが大切です。
「通信できないのに位置情報はわかる」場合もある
また、「インターネットはつながらないのに、地図アプリで現在地だけはなんとなくわかる」という経験をしたことがある方もいるかもしれません。これは、スマホが衛星からの位置情報(GPSなど)を受信しているためです。位置情報の取得自体は、携帯回線とは別の仕組みで行われます。
ただし、110番通報の際に位置情報を自動で伝えるシステムは、携帯ネットワークとの連携が前提です。電波が完全にない場所では、たとえスマホが自分の位置を把握できていても、それを警察や消防に伝える手段がない、ということになります。
知っておきたい実用的なポイント
この記事の内容を踏まえて、普段から覚えておくとよいポイントを整理します。
- 「圏外」表示でも、他社の電波が届いていれば110番がつながることがある
- ただし、「どの会社の電波もない場所」では110番も不可
- 山や海、地下など電波が不安な場所に行くときは、事前の情報収集と通信手段の備えが重要
- スマホのバッテリー切れはどうにもならないので、モバイルバッテリーなどの準備も有効
携帯ネットワークの仕組みをざっくり理解しておくだけでも、「どこまで頼れるのか」を冷静に判断できるようになります。技術はあくまで「助けてくれる存在」であって、「何があっても絶対に大丈夫」という保証ではない、という意識を持っておくとよいでしょう。
これからの携帯ネットワークと緊急通報
最近では、スマホが衛星と直接通信して緊急メッセージを送れるサービスも海外を中心に広がりつつあります。今後、日本でも同様の仕組みが一般化すれば、「完全な圏外」でも最低限の救助要請ができるようになるかもしれません。
一方で、どれだけ技術が進んでも、「電波が届きにくい場所にむやみに一人で入らない」「自分の居場所や予定を誰かに共有しておく」といった基本的な備えは、引き続き重要です。携帯ネットワークの「裏側の工夫」を知ることは、その技術に頼り切りになるためではなく、うまく付き合いながらリスクを減らしていくための一歩といえるでしょう。























