頑張って暗記しているのに、テストになると「あれ、出てこない…」という経験はないでしょうか。ノートもきちんとまとめた、問題集も解いた。それなのに、本番で思い出せない。実は、その悩みをぐっと減らすシンプルな方法があります。それが「人に教えるつもりで勉強する」というやり方です。
この記事では、「人に教えるつもり効果」がなぜ暗記力を高めるのか、脳のしくみの観点から、できるだけやさしい言葉で解説します。あわせて、すぐに実践できる具体的な勉強法も紹介します。
「人に教えるつもり効果」とは何か?
「人に教えるつもり効果」とは、その名の通り、「あとで誰かに説明する前提で学ぶと、記憶に残りやすくなる」という現象です。
ここで大事なのは、実際に誰かに教えなくてもよいという点です。「明日、友だちにこの内容を説明しよう」と心の中で決めておくだけでも、勉強の質が変わります。もちろん、実際に教えるところまでできれば、さらに効果は高まります。
このシンプルな意識の違いが、なぜ暗記力を劇的に変えるのでしょうか。その背景には、脳の「準備モード」が深く関係しています。
脳は「テストされる」と思うとスイッチが入る
私たちの脳は、ぼんやり情報を眺めているときと、「後で使うぞ」と意識しているときで、働き方が変わります。
人に教えるつもりで勉強するとき、脳は次のようなモードになります。
- 重要なポイントを選び取ろうとする(全部覚えるのではなく、核になる部分を探す)
- 筋道を立てて理解しようとする(流れや理由を意識する)
- 自分の言葉に置き換えようとする(教えやすい表現を考える)
この「選ぶ」「つなげる」「言い換える」という作業が、脳にとっては深い処理になります。深く処理された情報ほど、記憶として定着しやすいとされています。
逆に、「とりあえず読んでおこう」「線を引いておこう」くらいの気持ちだと、情報が流し見になりやすく、記憶の入り口までしか届きません。
記憶が定着するカギは「整理」と「意味づけ」
人に教えるつもりで勉強すると、自然と次のような作業が生まれます。
- どこから説明すればわかりやすいか、順番を考える
- 似ている点・違う点を整理して、分類する
- 覚えにくいところに、例え話やイメージをつける
これは、脳の中で情報をフォルダ分けしているようなものです。バラバラに覚えようとすると、どこに何をしまったか分からなくなりますが、意味のあるかたまりに整理されていると、思い出すときに取り出しやすくなります。
例えば、歴史の年号をただ暗記するより、「この出来事の原因は何だったか」「その後、どう影響したか」を筋道立てて説明できるようにすると、数字もいっしょに定着しやすくなります。
「話す」「書く」でさらに脳が活性化する
人に教えるとき、ただ頭の中だけで考えることはほとんどありません。多くの場合、
- 声に出して説明する
- 図やメモを書いて見せる
といったアウトプットを伴います。この「話す」「書く」という行為は、読むだけ・聞くだけよりも、多くの脳の領域を動かします。
・言葉を組み立てる部分
・口や手を動かす指令を出す部分
・相手の反応を見て調整する部分
こうした複数の働きが同時に動くことで、情報は一本の線ではなく、脳内に張り巡らされたネットワークとして結びつきます。ネットワークが太く広いほど、時間がたっても思い出しやすくなると考えられます。
一人でもできる「教えるつもり勉強法」
「教える相手がいないから無理」と思う必要はありません。一人でもできるやり方があります。
- 架空の相手に説明する
「中学生の自分に教えるとしたら…」など、想像上の相手を思い浮かべて、声に出して説明してみます。 - 1ページ先生法
ノート1ページを「授業用スライド」と考え、重要ポイントを箇条書きと図だけでまとめてみます。そのページを見ながら、実際に授業をしているつもりで話してみると効果的です。 - 3分ミニ授業
勉強したあと、「今の内容を3分で説明する」と時間を区切ってまとめて話してみます。時間制限があることで、要点をつかむトレーニングにもなります。
ポイントは、「完璧に分かっていなくても、いったん説明してみる」ことです。説明してみて詰まったところこそ、理解が浅い部分です。そこをもう一度テキストに戻って確認することで、弱点がピンポイントで分かります。
覚えるだけでなく「使える知識」に変わる
人に教えるつもりで学ぶと、単純な暗記にとどまらず、「使える知識」に変わっていきます。
- 自分なりの言葉で説明できる
- 別の問題や場面でも応用できる
- 思い出すまでの時間が短くなる
これは、脳の中で知識が一本の「線」から、立体的な「地図」になっている状態です。地図になった知識は、多少時間がたっても道筋をたどって思い出しやすくなります。
今日からできることはシンプルです。勉強を始める前に、ひと言だけ心の中で唱えてみてください。
「この内容を、あとで誰かに教えるつもりでやろう」
それだけで、脳のスイッチの入り方が変わり、同じ時間の勉強でも、記憶の残り方が変わっていきます。





















