「テストは最後にやるもの」というイメージが強いかもしれませんが、最近の学習科学では「勉強の前にテストをする」ことが記憶をぐっと定着させると注目されています。まだ習っていない内容をテストするなんて意味があるの? と思うかもしれませんが、そこには脳の仕組みに根ざした理由があります。
この記事では、「勉強前のプレテスト」がなぜ記憶に効くのか、その科学的な背景と、日常の勉強に取り入れるための簡単な工夫を紹介します。
勉強前にあえて「わからない問題」を解く理由
プレテストとは、本格的に学ぶ前に、そのテーマに関する問題を先に解いてみることです。当然、ほとんど間違えます。しかし、この「間違える」という体験こそが、後の学びを深くする「下ごしらえ」のような役割を果たします。
脳は、ただ情報を眺めるよりも、「自分で考えて失敗したあとに、正しい答えを知る」ほうが、強く印象に残る傾向があります。これは、脳にとって「予想外」が重要な信号になるからです。自分の予想と正解がズレた瞬間に、「あれ?なんで違うんだろう」と注意が高まり、記憶に残りやすくなるのです。
脳は「答え合わせ」で学ぶ生き物
プレテストの大きなポイントは、「自分の考え」と「正しい情報」のギャップに気づくことです。
- まず、自分なりに答えを予想する(たとえ勘でもOK)
- そのあとで、正しい答えや解説を読む
この流れによって、脳の中では次のようなことが起きると考えられています。
- 予想を立てることで、関連する記憶や知識が引き出される
- 正解を知ったときに「間違いに気づく」ことで、注意が集まる
- ずれを修正するプロセスそのものが、記憶の上書きを強くする
ただ受け身で解説を読むだけだと、「知っているつもり」になりがちです。しかし、プレテストをはさむと、「どこがわかっていないのか」「どの部分があいまいなのか」がはっきりします。これが、その後の勉強の効率を上げるポイントになります。
「間違えるのが恥ずかしい」をどう乗り越える?
プレテストがうまく機能するには、「間違えることへの抵抗感」を小さくすることが大切です。多くの人は、「間違える=ダメ」というイメージを持っていますが、プレテストではむしろ「間違えるほど得をする」と考えたほうがよいくらいです。
プレテストは、「点数を取るためのテスト」ではなく、「脳に予告をするためのテスト」と捉えると気持ちが楽になります。「これからこの分野を勉強するよ」というシグナルをあらかじめ脳に送っておくことで、関連する情報が入りやすくなるのです。
今日からできるプレテストの取り入れ方
プレテストと聞くと大掛かりに感じますが、やり方はとてもシンプルです。以下のような方法から試してみてください。
- 教科書の章タイトルを見て、問を自作する
これから読む章のタイトルや見出しを眺めて、「この章で出てきそうな問題」を自分で3問ほど作り、答えを予想してみます。その後、実際に読みながら答え合わせをします。 - 問題集の該当ページを先にざっと解いてみる
まだきちんと理解していなくてもかまいません。制限時間を短めにして「今の自分はどこまでできるか」をチェックするだけでも、立派なプレテストになります。 - 「3つ思い出すルール」を作る
新しい単元を始める前に、そのテーマについて「知っていることを3つ書き出す」と決めておきます。この“思い出そうとする行為”が、プレテストと同じように脳をウォーミングアップさせます。
プレテスト+復習で記憶がさらに固まる
プレテストは、単体でも効果がありますが、復習と組み合わせるとさらに力を発揮します。一度プレテストと学習を終えた後、少し時間をあけてから、もう一度プレテスト形式で思い出す練習をすると、記憶が長持ちしやすくなります。
例えば、以下のような流れです。
- 勉強前にプレテストをする
- 内容を学ぶ(教科書・動画・授業など)
- 翌日か数日後に、同じテーマで自作プレテストをする
この「思い出すタイミング」を少しずつ伸ばしながら繰り返すことで、脳は「これは大事な情報なんだ」と判断し、長期記憶として定着しやすくなると考えられています。
完璧にやろうとせず、「ゆるく続ける」がコツ
プレテストの効果は、「毎回完璧にやる」ことよりも、「小さくてもいいから、続ける」ことによって現れます。1日5分でも、「今日学ぶ前にちょっとだけ問題を考えてみる」という習慣をつけるだけで、学び方そのものが変わってきます。
大切なのは、「間違えてもOK」「プレテストは脳のウォーミングアップ」という考え方です。点数ではなく、「考えた回数」「思い出そうとした回数」を自分なりの成長の指標にしてみてください。
勉強の前に、ひと手間かけてプレテストを取り入れることは、脳の特性に寄り添った、シンプルで強力な学習戦略です。普段の勉強に少しだけ工夫を加えて、記憶が残りやすい学び方を試してみてはいかがでしょうか。























