「親に終活の話をどう切り出せばいいのか分からない」「重くならずに進める方法が知りたい」。多くの人が感じるこの戸惑いには、コツがあります。大切なのは、親の不安をあおらず、希望を中心に、少しずつ形にしていくこと。本稿では、はじめやすい場面づくりから、言い方の例、進め方の全体像、記録方法までを一気通貫でまとめました。今日からムリなく動き出せる実践ガイドです。
はじめやすいタイミングときっかけ
- 身近なきっかけを活用:保険の更新、引っ越し、友人の話題、季節の片づけなど。
- 「自分ごと」から入る:自分の書類整理や非常連絡先の更新を話題にして橋渡し。
- 短時間で切り上げる:約15分の雑談から。続きは次回へ。重くしないのがコツ。
切り出しの言い方サンプル
- 「もしもの時に慌てないように、連絡先だけ一緒に確認しておきたいな」
- 「この前ニュースで見て、うちも大事な書類の場所を共有しようと思って」
- 「お母さんの希望をちゃんと聞いておきたい。決めるのはあくまでお母さんで、私はメモ係ね」
ポイントは「心配だから」ではなく「安心のため」「あなたの希望を大切にしたい」という前向きな軸で伝えることです。
全体の進め方:3ステップ
- 初回(雑談と希望):何を大切にしたいかをざっくり確認。話題は「連絡先」「保管場所」など軽めから。
- 二回目(情報の整理):メモやノートに書き出す。無理に全部はやらない。優先テーマを1~2つ。
- 三回目(共有と更新):きょうだいや配偶者へ共有。年に1回見直す「更新日」を決める。
まず話すべき3つの優先テーマ
- 連絡先の整理:親の携帯が使えない時、誰に連絡する?家族・親族・近所・かかりつけ先の一覧。
- 大切な物の保管場所:通帳や印鑑、保険証券、年金書類、鍵、マイナンバーカードなどの場所。
- 本人の希望の方向性:暮らし方(自宅で過ごしたい等)、葬送の雰囲気、相続の考え方の大枠。
余裕があれば「介護が必要になった時の連絡順」「デジタル遺品(スマホ・PC・サブスク)」「葬送の希望」なども少しずつ。
記録の残し方(カンタン&続くやり方)
- ノート1冊方式:表紙に更新日、最初の見開きに連絡先一覧。後ろに保管場所メモ。
- 家族で共有フォルダ:写真で書類の表紙だけ撮って保存。詳細は紙の原本を優先。
- 見えるところに「ノートの場所」メモ:冷蔵庫や電話横に小さな案内を貼る。
- 更新ルール:「誕生日」や「年末の掃除」を更新日として固定化。
家族間の合意形成のコツ
- 役割分担:聞き役、書記、調整役を分けるとスムーズ。
- 反対意見への配慮:「今すぐ全部決めない。今日は連絡先だけ」など小分けで合意。
- 記録で透明性:決めたこと・保留したことをメモに残し、写真で共有。
つまずいた時のリカバリー
- 親が拒否する:無理強いせず一旦終了。「また今度ね」と余韻を残す。次は別のきっかけから。
- 話が重くなる:思い出話や好きなことに戻して、安心感をつくる。
- 話が広がりすぎる:テーマを1つに絞り、時間を区切る。「今日はここまで」を口にする。
よくある質問(簡潔版)
Q. 何から始めるべき?
A. 連絡先一覧と重要書類の場所。ここが整えば、いざという時の混乱が大きく減ります。
Q. きょうだい間で意見が割れる。
A. 「親の希望を最優先」という軸で共通認識をつくり、決められないことは保留して期限だけ決める。
Q. 書きたがらない親には?
A. 書くのが苦手な人もいます。代筆やチェック方式、音声メモなど、負担の少ない方法を選びましょう。
今日からできるミニチェックリスト
- 親と15分だけ話す時間を予約(電話でも可)。
- 「連絡先一覧」を自分でたたき台作成。
- 重要書類の保管場所を1つだけ確認。
- ノート1冊とペンを用意、表紙に更新日欄。
- 次回の見直し日をカレンダーに登録。
終活は「大切な人の安心を育てる家族プロジェクト」。小さく始めて、続けていくことが最大のコツです。




















