こんにちは。『クラウドシステムの歴史』を専門に解説しているAIインサイト編集部です。今や私たちの仕事や生活に欠かせない「クラウドサービス」。しかし、「具体的にどの会社のサービスが世界で使われているの?」と聞かれると、意外と答えに詰まる方も多いのではないでしょうか。この素朴な疑問を、今話題の「生成AI」にぶつけてみたら、どんな答えが返ってくるのでしょうか。そして、その答えは本当に正しいのでしょうか?
今回は、そんな好奇心から「クラウドサービスの売上TOP10を生成AIに聞いてみた」というテーマで、AIの回答を専門家の視点から検証し、現代のクラウド市場の姿を分かりやすく解き明かしていきたいと思います。AIが示すデータと、現実の市場との間にギャップはあるのか。その答えから、私たちがAIとどう付き合っていくべきか、そのヒントも見えてくるかもしれません。
生成AIが導き出した「クラウドサービス売上TOP10」
早速、いくつかの主要な生成AIに「現在のクラウドサービスの売上ランキングTOP10を教えてください」と尋ねてみました。すると、各AIは少しずつ表現や順位に違いはあれど、おおむね以下のような企業リストを提示してくれました。これは、多くの市場調査会社のレポートとも一致する、現在のクラウド業界の勢力図をよく表していると言えるでしょう。
【生成AIが示したクラウドサービス売上ランキング(推定)】
- Amazon Web Services (AWS)
- Microsoft Azure
- Google Cloud
- Alibaba Cloud
- Oracle Cloud
- Salesforce
- IBM Cloud
- Tencent Cloud
- SAP
- Huawei Cloud
このランキングを見て、皆さんはどう感じましたか? 「Amazonって通販の会社じゃないの?」「SalesforceやSAPは少し毛色が違うのでは?」と感じた方もいるかもしれません。このランキングこそが、クラウド市場の奥深さを示しています。次章で、この結果を詳しく読み解いていきましょう。
ランキングから読み解く!クラウド市場の「今」と「これから」
このランキングは、現在のクラウド市場の大きなトレンドを3つのポイントで示しています。
1. 不動の3強「AWS、Azure、Google Cloud」
まず注目すべきは、トップ3社の圧倒的な存在感です。AWS、Microsoft Azure、Google Cloudの3社だけで、世界のクラウドインフラ市場の実に3分の2以上を占めていると言われています。
中でも、王者AWSは、もともと自社のECサイト「Amazon.com」を支えるために構築した巨大なインフラを外部に貸し出したことから始まった、まさにクラウドの生みの親。その先行者利益と豊富なサービス群で、長年トップに君臨しています。
それを猛追するのが、法人向けビジネスで絶大な信頼を誇るMicrosoft Azureです。多くの企業が利用するWindows ServerやOffice 365といった既存の製品との親和性の高さを武器に、驚異的なスピードでシェアを拡大しています。
そして、検索エンジンやYouTubeで培った高い技術力を背景に持つGoogle Cloud。特にデータ分析やAI・機械学習の分野で強みを発揮し、独自のポジションを築いています。
2. グローバル市場を狙う第2集団
4位以下には、それぞれが強みを持つ企業が名を連ねています。Alibaba CloudやTencent Cloudは、巨大な中国市場を基盤にアジアで絶大な力を持ち、世界展開を加速させています。また、データベースの巨人であるOracleは、自社の強力な顧客基盤を武器にクラウド事業へとシフトを進めており、その成長率はトップ3を脅かす勢いです。
3. 「クラウド」の定義を広げるSaaS企業
ランキングの中盤にSalesforceやSAPといった企業が入っていることに、疑問を持った方もいるでしょう。AWSなどが提供するサーバーやデータベースといった「インフラ(IaaS/PaaS)」に対し、Salesforceは営業支援(SFA/CRM)、SAPは企業経営(ERP)といった「ソフトウェア(SaaS)」をクラウドで提供しています。
一般的にクラウド市場のシェアを語る際はインフラ(IaaS/PaaS)が中心となりますが、より広い意味での「クラウドサービス」として捉えると、こうしたSaaSの巨人たちも市場の主要プレイヤーであることが分かります。生成AIがこれらの企業を含めてきたのは、ユーザーが求める「クラウドサービス」という言葉を広く解釈した結果と言えるでしょう。
生成AIの答えは「どこまで信頼できるのか?」
さて、今回生成AIが示したランキングは、概ね市場の実態を反映したものでした。しかし、ここで一つ重要な注意点があります。それは、生成AIが持つ情報は「リアルタイムではない」ということです。
生成AIは、学習した膨大なデータの中から最も「それらしい」答えを生成します。そのため、学習データが少し古い場合、四半期ごとに目まぐるしく変わる最新の売上高や市場シェアを正確に反映できない可能性があります。今回も、あるAIは「2023年初頭のデータに基づくと…」といった注釈を付けて回答してきました。
つまり、生成AIは「市場の全体像をざっくりと把握する」ための非常に優れたアシスタントですが、最新かつ正確なデータを求める場合には、公式な決算発表や信頼できる市場調査会社のレポートを必ず確認する必要があります。
今回の試みは、生成AIが私たちの情報収集を劇的に効率化してくれる可能性と、その情報の正確性を最終的に判断するのは人間であるという、現代における「賢いAIとの付き合い方」を改めて示してくれたように思います。クラウド市場の動向を追いかける際も、AIをきっかけにしつつ、その答えを鵜呑みにせず、自らで情報の裏付けを取る姿勢が大切になってくるでしょう。




















