5Gの注目は高い一方で、「ミリ波は本当に使えるの？」「ローカル5GはWi‑Fiと何が違うの？」といった戸惑いもあります。ポイントは“どこで・何に使うか”を見極め、既存のネットワークと賢く使い分けること。本稿では、ミリ波とローカル5Gの強み・弱みを整理し、現場で成果を出すための進め方を提案します。
5Gミリ波の今——超高速の魅力と、使いどころ
ミリ波は非常に高速で大容量、遅延も小さいのが魅力です。一方で、電波が遠くまで届きにくく、建物や人の影で遮られやすいという弱点があります。つまり、広域をまんべんなくカバーするよりも、「人や機器が密集し、瞬間的に大容量が必要な地点」をピンポイントで強くするのがコツ。スタジアム、イベント会場、駅構内、商業施設、固定無線アクセス（FWA）によるオフィス/店舗の高速回線代替などは相性が良い領域です。屋内は小型基地局やリピーターで、屋外は小セルのきめ細かな配置で性能を引き出します。
ローカル5Gの価値——自前ネットで現場を変える
ローカル5Gは、企業や自治体が自営できる5Gネットワーク。限られたエリアで帯域を専有でき、安定性やセキュリティ、可視化・制御のしやすさが強みです。工場や倉庫、建設現場、港湾、キャンパスなど「決まった敷地で多数の機器が動く」環境にぴったり。エッジコンピューティングと組み合わせれば、カメラ映像の即時解析、AGV/AMRの経路最適化、AR作業支援などを低遅延で実現しやすくなります。
活用最前線のユースケース
- スタジアム/イベント会場（ミリ波）：多視点ライブ配信、AR演出、売場混雑の可視化。
- スマート工場（ローカル5G）：無線化でレイアウト変更に強く、品質検査のAI解析を即時化。
- 倉庫/物流（ローカル5G）：AMR群制御、在庫トラッキング、ピッキング支援を安定帯域で。
- 建設現場（ローカル5G＋エッジ）：重機映像の伝送、安全エリアの見える化、遠隔支援。
- 商業施設/駅（ミリ波）：来場者向け高速通信、広告の高精細配信、来流解析。
- オフィス/店舗の固定無線（ミリ波FWA）：短期間での高速回線導入やバックアップ回線に。
導入の壁と、現実的な解き方
よくある壁は「コスト」「端末対応」「運用スキル」「許認可/電波設計」。対策はスモールスタートが基本です。まずは課題が明確なエリアに限定し、PoC（試行導入）で効果を数値化。Wi‑Fiや有線と役割分担を決め、投資対効果を可視化します。端末は5G対応のカメラ/ゲートウェイ/スマホを優先導入し、ファーム更新やeSIM管理をルール化。ミリ波はサイトサーベイ（電波調査）と小セル設計が肝心で、遮蔽物対策に反射やリピーターも検討します。ローカル5Gは免許や周波数選定、セキュリティ設計（SIM認証、ネット分離、ログ管理）をパートナーと並走し、冗長化や監視を最初から組み込みましょう。補助金・実証事業の活用も有効です。
成果を出すためのチェックリスト
- 目的とKPI：例）「検査リードタイム30％短縮」「来場者体験評価+1.0」
- 使い分けの設計：ミリ波＝超高速スポット、ローカル5G＝専有・安定、Wi‑Fi＝日常トラフィック。
- エリアと端末：電波測位、混雑・遮蔽物の把握、対応端末の優先調達。
- エッジ/クラウド分担：遅延に敏感な処理はエッジ、学習・集計はクラウド。
- セキュリティ：SIM/eSIM管理、ゼロトラスト方針、ログ可視化、自動パッチ。
- 運用とSLA：監視ダッシュボード、故障時の切替手順、バックアップ回線。
- 将来拡張：スタンドアロン5G対応、ネットワークスライシングの導入余地。
まとめ——2025年に向けた「現場発」の5G
ミリ波は「ここ一番の体感向上」に、ローカル5Gは「現場の安定と可視化」に強みがあります。万能な一撃ではなく、課題に合わせた最適配置が鍵です。小さく始めて数値で成果を示す——この積み重ねが、現場の合意と投資の継続を生み、5G活用は加速します。自社のボトルネックを洗い出し、パートナーとともに“勝てるスポット”から攻める。これが2025年に効く、生成AIが導く現実解です。
