神前式は「凛とした空気感」と「日本らしい美意識」が同居する挙式スタイル。けれど、いざ準備を始めると、神社の選び方や和装ヘア、挙式演出、写真の残し方で迷いがちです。本稿では、初めてでも迷わないように、要点をシンプルに整理しながら、満足度が上がるコツを提案します。決め手は、雰囲気だけでなく「動線・光・音」の三要素。これを意識すると、当日の体験も写真もぐっと豊かになります。
神社選びは「雰囲気×実用性」で
憧れだけで決めず、見学時に以下を必ず確認しましょう。
- 立地と動線:最寄駅からの距離、タクシーのつけやすさ、雨天時の回廊移動のしやすさ
- 収容人数と控室:親族の席数、授乳・着替え・高齢ゲストの休憩スペース
- 挙式内容:雅楽生演奏や巫女舞の有無、言葉の説明があるか
- 撮影可否:挙式中は撮禁の神社が多め。境内撮影の範囲・時間・申請方法も確認
- 費用感:初穂料の目安、持ち込み料(衣装・美容・写真)、駐車場料金
見学のコツは「写真の画角で見る」こと。集合写真の背景に看板や電線が入らないか、拝殿前の光の向きはどうか、回廊の幅は打掛がきれいに広がるか……など、フォト視点でチェックすると後悔が減ります。
和装ヘアは「衣装・顔立ち・儀式感」の三点合わせ
白無垢は厳か、色打掛は華やか、引振袖はしなやか。衣装の印象でヘアの方向性を決めます。
- 伝統的日本髪風:格式重視。簪やつまみ細工で格を足す
- 低めシニヨン:今風の上品さ。面を整え、後れ毛は控えめが神前向き
- アクセント:胡蝶蘭や金箔、水引、椿の造花。白無垢なら白で統一、色打掛は一色差しで引き算
メイクは赤リップ一択ではありません。肌色に合う深みカラーを選び、チークは薄めで凛と。必ずヘアメイクリハを実施し、かんざしの位置やボリューム感を写真で確認。生花は季節と持ち時間(枯れやすさ)も考慮しましょう。
挙式演出は「静けさを味方に」
神前式は、参進、三献の儀、誓詞奏上、玉串奉奠など、所作が主役。余計な演出を足すより「音・間・動線」を整えるのがおすすめです。
- 参進:歩幅は小さく、視線はやや下へ。雅楽の生演奏があれば臨場感が数段アップ
- 指輪・リングピロー:ちりめんや檜素材で和の統一感を
- アフター:折り鶴シャワーや和傘で退場カットを演出(神社の可否を事前確認)
- 言葉のフォロー:神職の方に意味説明をお願いできるか確認しておくとゲスト満足度が高い
写真映え術・保存版
神前式は「光沢・質感・線」が命。白無垢は露出が飛びやすいので、木陰や回廊の柔らかい光で。色打掛は逆光で刺繍の立体感を強調すると映えます。
- 時間帯:午前は凛と、午後は温かい。境内の光の向きを下見し、ベスト30分を押さえる
- 背景:鳥居、回廊、拝殿前、玉砂利の抜け感。看板・車・電線はフレームアウト
- 小物:番傘・白扇・懐紙。色数は3色以内にして主役(ふたり)を際立たせる
- 所作:新婦は体を45度ひねり袖口にそっと添える。新郎は袴のひだを整え顎は引く
- 集合写真:段差と玉砂利に注意。フォトグラファーの号令を通しやすい静かな場所で
- 雨の日:濡れた玉砂利の艶は最高のレフ板。回廊×和傘でドラマチックに
可能なら事前ロケハンを。撮影可能エリアや移動時間、衣装の扱い方をカメラマンと共有すると、当日の迷いがなくなります。
段取りとタイムラインの基本
目安は「支度2.5〜3時間→移動→参進・挙式30分→境内撮影30〜45分」。神社と披露宴会場が離れる場合は、移動と着替えに余白を。高齢ゲストの休憩、控室の飲み物、お手洗い動線も事前に。草履が痛くなりやすい人は、足指保護やクッション中敷きを用意すると安心です。
費用と手続きの見通し
- 初穂料:5万〜15万円が目安(神社規模や内容で変動)
- オプション:雅楽・巫女舞・写真撮影申請・持ち込み料
- 交通:駐車場の確保、タクシー台数の事前予約
- 引き出物・縁起物:和菓子や檜アイテムなど、式の世界観に合わせて
見積もりは「何が含まれているか」を細かく確認。写真データの納品形態や枚数、アルバムの有無も忘れずに。
迷ったらこのチェックリスト
- 神社の動線と光を下見したか
- 挙式中の撮影ルールを把握したか
- ヘアメイクリハで衣装・飾りと通し確認をしたか
- アフター演出(折り鶴・和傘)の可否を確認したか
- タイムラインに移動の余白を確保したか
神前式は、派手な仕掛けがなくても「静けさ」自体が演出です。場の空気を整え、所作を美しく、光を味方にできれば、何年経っても色褪せない一日になります。






















