最下ボタンは本当に留めないべき?まずは課題整理と提案
スーツジャケットの最下ボタンは「留めないのがマナー」と聞く一方で、フォーマル度や体型、デザインによって迷うことも多いのではないでしょうか。結論から言うと、基本は「最下ボタンは留めない」。ただし、ジャケットの型やTPOに合わせて例外もあります。本稿では有名なエドワード7世の逸話を手がかりに、歴史的背景と現代の実用的な着こなしルールを、一般の方にもわかりやすく整理します。
由来の王道エピソード:エドワード7世の“外し”が広まった
最下ボタンを留めない習慣は、英国のエドワード7世にまつわる逸話がもっとも有名です。彼は体格がよく、ジャケットの最下ボタンを外して着ていたため、それが英国紳士の間で洗練された着こなしとして広まった――というもの。事実かどうかは諸説ありますが、「最後のボタンは機能より見た目・動作のために外す」考え方を象徴する話として長く受け継がれました。
歴史的背景:乗馬と仕立てが教える“動きやすさ”
もう一つの背景は、乗馬文化です。腰まわりの可動域を確保するため、裾に余裕を持たせる必要があり、最下ボタンを外すと動作がスムーズになります。伝統的な仕立てでは、前合わせやラペルの“ロール”が美しく見えるよう設計されており、最下ボタンを留めるとシワが出たり、シルエットが崩れることも。つまり「外した方がジャケット本来の形がきれいに見える」――これが現在まで続く合理性です。
現代ルールの整理:シングル、ダブル、ベストの違い
- シングル2ボタン:上だけ留める、下は留めないが基本。
- シングル3ボタン:真ん中のみ、または上と真ん中。段返り(上が自然に折り返る)なら、真ん中だけが見た目◎。最下は留めない。
- ダブル(6×2など):基本は留める。モデルによっては内側の留め位置や下ボタンを飾り扱いにする場合もあるので、試着時のシルエット優先。
- ベスト(ジレ):最下ボタンは外すのが伝統。裾の動きを妨げず、縦のラインがきれいに出ます。
女性用テーラードでも、“設計されたロールやシルエットを崩さない”という考え方は同様。ブランドの推奨スタイリングや鏡でのバランス確認が有効です。
迷ったときの実践ヒント:鏡と動作でチェック
- 鏡の前テスト:最下ボタンを留める/外すで、ラペルのロール、裾の跳ね、腰回りのシワを比べる。きれいに落ちる方が正解。
- 動作テスト:歩く、ポケットに手を入れる、軽く腕を上げる。突っ張りや裾の引きつりが出るなら外す。
- 着席マナー:座るときは前ボタンを外すのが基本。生地の負担を避け、見た目も自然です。
- 体型補正:ウエストの絞りが強いジャケットほど、最下ボタンは外したほうがウエストラインがきれいに出やすい。
TPOでの使い分け:かっちりと自然体のバランス
ビジネスの改まった場や式典では、立っている間は基本のボタンルールを守ると整った印象に。カジュアルジャケットやアンコン仕立て(芯地が軽いタイプ)では、シーンに応じて外し気味でも違和感はありません。大切なのは、「清潔感」と「そのジャケットの設計に合う留め方」。自分の一着ごとに、ベストな見え方を見つける意識がスマートです。
よくある疑問とミニ回答
- 下だけ留めるのはダメ? → シルエットが崩れ、意図しない印象に。避けるのが無難。
- 全部留めると真面目に見える? → 場合によっては窮屈な印象。基本に沿ったほうがきれい。
- 流行は関係ある? → 細身〜ゆったりのトレンドはあるが、「最下ボタンは外す」原則は長く有効。
まとめ:伝統は“形を美しく見せる”ためのガイド
エドワード7世の逸話は象徴的ですが、根底には「動きやすさ」と「美しいシルエット」を守るための合理性があります。最下ボタンを外すことは、歴史を受け継ぐだけでなく、そのジャケットが最もきれいに見える形を選ぶという実用的な選択。大切なのは、型と場に合わせた“気づかれない上品さ”。鏡と動作で確かめ、あなたの一着の最適解を見つけてください。




















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