「復習しているのに覚えられない」をどう変える?
一生懸命ノートを読み返しているのに、テストになると「見たことはあるのに思い出せない…」という経験は、多くの人に共通する悩みです。実はこの「思い出せない」という問題には、脳の仕組みが大きく関わっています。
ポイントは、「読む」より「思い出す」ほうが、脳にとってはずっと強力な学習になるということ。これを心理学では「テスト効果」と呼びます。ここでいうテストとは、点数をつけられる試験だけでなく、「自分で問題を解いてみる」「思い出しながら説明してみる」といった行為も含みます。
この記事では、テスト効果でどんな脳内回路が鍛えられるのか、そして日々の勉強や資格試験、仕事の学びにも使える「最適な復習法」について、やさしい言葉で整理していきます。
「読むだけ学習」が記憶に残りにくい理由
まず、ノートや教科書を「読むだけ」の学習から考えてみましょう。読むだけの勉強は、情報を目から取り入れている状態で、脳の中では「インプット」の回路ばかりが働いています。
ところが、テスト本番や仕事の場面では、「インプットされた情報を、自分から引き出す」ことが求められます。つまり、必要なのは「思い出すための回路」です。
読むだけの学習では、この「思い出す回路」があまり鍛えられません。結果として、「見ればわかるけれど、自力では出てこない」状態になりやすいのです。
テスト効果とは?脳が「思い出す練習」をしている
テスト効果とは、「テストをすること自体が学習効果を高める」という現象のことです。不思議に聞こえますが、テストは単なる理解度チェックではなく、それ自体が強力な学習トレーニングになっています。
テストに取り組むとき、脳は「どこにしまっておいたっけ?」と記憶の倉庫を必死に探します。このとき、記憶のネットワークをたどる回路が何度も使われ、回数を重ねるほどに太く、通りやすくなります。
イメージとしては、草むらの中に最初は細い道しかなかったところを、何度も通るうちにしっかりした小道になり、やがては「自動的にそこを通れる」ようになる感じです。脳内でも同じようなことが起こり、「思い出す」ための経路が強固になっていきます。
脳内回路は「負荷があるほど」強くなる
テスト効果が強いのは、テストに取り組むとき、「ちょっとキツい」と感じるくらいの負荷がかかるからです。この「少し難しい」「少し時間がかかる」負荷が、脳にとってはトレーニングになります。
たとえば、次の2パターンを比べてみてください。
- ① 教科書を3回読み返す
- ② 教科書を1回読んで、あとは自分で問題を解く・思い出す
多くの研究で、②のほうが長期的な記憶定着に優れていることが示されています。読むだけの①は、いわば軽いストレッチのようなもの。一方、②は筋トレに近く、負荷はあるけれど、その分だけ「思い出す回路」が鍛えられるのです。
「最適な復習法」3つのポイント
では、テスト効果をうまく利用した復習は、具体的にどうすればよいのでしょうか。ここでは、誰でもすぐに取り入れやすいポイントを3つ紹介します。
1. 読む前に「思い出す時間」をつくる
復習を始めるとき、いきなりノートや教科書を開くのではなく、まずは1〜2分でよいので「何も見ずに思い出す時間」を作ってみてください。
- 昨日習った内容を、紙に書き出してみる
- 声に出して人に説明するつもりで要点を整理する
完璧に思い出せなくても問題ありません。「あれ、なんだっけ?」と脳が探している時間こそが、テスト効果が働いている瞬間です。そのあとで答え合わせをするようにノートを確認すると、「できなかったところ」が特に強く記憶に残りやすくなります。
2. 「ちょっと忘れかけた頃」に繰り返す
次に大切なのが、復習のタイミングです。同じ内容を短時間に何度も見直すより、「少し忘れかけた頃」に思い出すほうが、脳には効果的だとされています。これは「間隔をあけた復習」(分散学習)とも呼ばれる考え方です。
目安としては、次のようなタイミングが一つのモデルになります。
- 1回目:学んだその日
- 2回目:1〜2日後
- 3回目:1週間後
- 4回目:1か月後
このサイクルですべてを厳密に行う必要はありませんが、「忘れた頃に、もう一度思い出してみる」を意識するだけでも、記憶の持ちが変わってきます。
3. 「アウトプット型」の復習をメインにする
テスト効果を最大限に活かすには、復習のスタイルを「読む中心」から「アウトプット中心」に切り替えることが重要です。具体的には、次のような方法があります。
- 自作の小テストを作り、時間を決めて解いてみる
- チェック欄を作った単語帳や一問一答集で、隠しながら答える
- 学んだ内容を、友人や家族に3分で説明してみる
- 仕事の知識なら、「新人に教えるとしたら?」と想定してメモに書き出す
大事なのは、「頭の中から情報を引っ張り出す」動きをつくることです。これが、そのまま脳内の「思い出す回路」のトレーニングになります。
「できなかった問題」こそが脳のごちそう
テスト効果を活かすうえで、ぜひ視点を変えたいのが「間違い」や「できなかった問題」の捉え方です。テストで間違えると落ち込んでしまいがちですが、脳のトレーニングとして見ると、ここが一番おいしいところです。
間違えた瞬間、脳は「思い込み」と「正しい情報」を比べて、つながりを修正しようとします。このギャップが大きいほど、記憶の書き換えは強く行われます。つまり、「悔しい」「なんで間違えたんだろう」と感じる問題ほど、長く記憶に残りやすいのです。
そのため、復習のときは、ただ丸つけをするだけでなく、「なぜ間違えたのか」「次に同じタイプの問題が出たらどう考えるか」を一言でメモしておくと、脳はより深く整理された回路を作りやすくなります。
テスト効果を、テスト以外の場面でも活かす
テスト効果は、学校の勉強だけでなく、資格試験や仕事のスキルアップ、趣味の学びなど、さまざまな場面で活かせます。
- 資格試験の勉強:過去問演習や模擬試験を早めに取り入れ、「できなかったところ」中心に復習する
- 仕事の勉強:セミナー後に「3つの学びポイント」を人に話したり、社内で共有資料を作る
- 読書:読み終わったあと、本を閉じて「内容を3行で要約」してみる
どれも共通するのは、「インプットで終わらせず、自分の言葉で引き出してみる」という一歩です。この一手間が、脳内の回路を長く強く保つカギになります。
まとめ:テストは「脳の筋トレ」として味方につける
テストは、評価のためだけでなく、「思い出す力」を鍛えるための絶好のチャンスです。読むだけの安心感に頼るよりも、少し負荷のかかる「思い出す練習」を、あえて日常の中に取り入れてみてください。
今日からできるポイントを振り返ると――
- 復習の前に、まずは何も見ずに思い出してみる
- あえて間隔をあけて、忘れかけた頃にもう一度テストしてみる
- 読むだけでなく、「書く・話す・解く」などアウトプット型の学習を増やす
これらを繰り返すことで、脳内には「いつでも取り出せる」記憶の回路が少しずつ太く、強く育っていきます。テストを「怖いもの」から、「脳を鍛えるツール」として捉え直してみると、学びの景色が大きく変わってくるはずです。
























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