結婚式で、新婦が新郎の「左側」に立つ――。多くの人が当たり前のように受け入れているこの並び方にも、実はちょっと物騒で、でも面白い「レアな雑学」が隠れています。それが「新郎は右手でいつでも剣を抜けるように、花嫁を左に立たせた」という説です。
もちろん、現代の結婚式では剣を抜く必要などありません。それでも、この由来を知ると「なぜ左なのか?」という素朴な疑問に、歴史と物語のある答えが見つかります。また、単なる雑学にとどまらず、「今の自分たちの結婚式で、どんな立ち位置にどんな意味を込めるか」を考えるヒントにもなります。
結婚式で新婦が左、新郎が右に立つのはなぜ?
教会式や人前式など、西洋スタイルの結婚式を思い浮かべると、多くの場合、新郎は右側、新婦は左側に立ちます。写真スタジオでのポーズ指示でも、「新郎さんはこちら側、新婦さんはこちら」と自然とこの並びに誘導されることが多いはずです。
しかし、なぜ「左」と「右」が決まっているのかを説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。「なんとなくそう決まっている」「写真写りの問題?」と感じている方も多いかもしれません。
この素朴な疑問に対する答えのひとつが、「新婦が新郎の左に立つ理由は、剣を抜く右手を空けておくため」という、ヨーロッパの古い風習をもとにしたものです。
「右手を空けるため」説の歴史的な背景
ヨーロッパの中世から近世にかけて、男性は腰に剣を帯びることが一般的でした。多くの人は右利きで、剣を抜くのも右手。そこで「いざ戦う必要があるときに、右側を空けておきたい」という考え方が生まれます。
この考えが結婚の場面に持ち込まれると、次のような発想になります。
- 新郎は花嫁を守る立場なので、いつでも戦えるように右手を自由にしておく。
- 剣を帯びた右側を開けるために、花嫁は新郎の左側に立つ。
さらに、別の説として「花嫁略奪」の風習とも結びつけて語られることがあります。昔は、他の男性から花嫁を奪い合うような習慣が一部の地域で存在したとされ、
- 新郎は左腕で花嫁をしっかり抱え込む。
- 右手には剣を持ち、他の男たちから花嫁を守る。
こうしたイメージから、「右手を戦いのために空けておく」ことが、花嫁が左側に立つ理由として語り継がれてきました。
常に正しい由来とは限らないけれど、物語として面白い
ここで注意したいのは、「新婦が左に立つのは、絶対に剣のためだけが由来」と断言できるわけではない、という点です。結婚式の立ち位置には、宗教的な意味合いや、王族・貴族の礼法、地域ごとの慣習など、複数の要素が絡み合っています。
例えば、キリスト教の儀式では、「右側」がより高い地位や名誉を象徴する位置とされることが多く、新郎が右側に立つことはその象徴とも考えられます。また、写真を撮るときのバランスや、ドレスのトレーン(長い裾)の向き、ブーケやブートニアの位置など、実務的な理由からも今の並びが定着したという見方もあります。
つまり、「右手で剣を抜くため」という由来は、歴史ロマンの強い説でありつつも、あくまで数ある背景のひとつと考えるのが自然です。それでも、この説が長く語られてきたのは、「花嫁を守るために右手を空けておいた」というストーリーが、多くの人の心に響くからかもしれません。
現代の結婚式で「左と右」に込められる新しい意味
現代の日本で結婚式を挙げるカップルにとって、剣を抜く場面はもちろんありません。ただ、この歴史的エピソードを知ることで、左右の立ち位置に新しい意味を込めることはできます。
- 新郎の右手は「家族を守る決意」の象徴として。
- 左側に立つ新婦は「大切に守る存在」でありつつ、同時に支え合うパートナーとして。
さらに、最近では男女の役割観も多様化しており、「新郎が右・新婦が左」という形に必ずしも縛られなくてよい、という考え方も広がっています。写真撮影ではあえて立ち位置を入れ替え、
- お互いが交互に右側に立ち、「どちらも相手を守る存在」というメッセージにする。
- 背景やドレスのデザインに合わせて、見栄えのよい並び方を自由に選ぶ。
といった工夫をするカップルもいます。「左と右」の由来を知っておくと、あえてその通りにするのか、それとも自分たちなりにアレンジするのか、意識的に選べるようになるのも面白いところです。
雑学として楽しみつつ、自分たちらしい意味づけを
結婚式にまつわるマナーや並び順は、とかく「こうしなければならない」と堅苦しく受け止められがちです。しかし、その多くは長い歴史のなかで生まれた「物語」や「象徴」が形になったものです。
「新婦が新郎の左に立つのは、剣を抜く右手を空けるため」という説も、そのひとつのエピソードとして、気軽な雑学として楽しめます。そして、その背景を知ったうえで、
- 守る・守られるという一方向のイメージではなく、「一緒に歩むパートナーシップ」として解釈し直す。
- 立ち位置に、自分たちの価値観やメッセージを込めてみる。
といった形で、現代的な結婚式に活かしていくこともできるでしょう。
結婚式のレアな雑学は、知っていても知らなくても式は成立します。それでも、こうした背景を少し知るだけで、当日の一瞬一瞬に「物語」が加わり、二人にとっても、ゲストにとっても、より印象深い時間になるはずです。























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