地震保険には加入しているのに、「実際に地震が起きたら、保険金はいくら出るのか?」という点を正確にイメージできている人は多くありません。特に、「時価評価」という考え方によって、想像よりも受け取れる金額が少なく感じるケースがあることは、あまり知られていません。本稿では、地震保険の「時価評価」とは何か、なぜ受取額が少なくなりやすいのか、その仕組みと対策をわかりやすく解説します。
地震保険の「時価評価」とは何か?
地震保険は、火災保険とセットで加入するのが一般的です。ところが、火災保険では「再調達価格(新しく建て直す場合の費用)」を基準に保険金額を決めることが多いのに対し、地震保険は原則として「時価」を基準にしています。
ここでいう「時価」とは、建物や家財を、事故発生時点で売買した場合のおおよその価値とイメージしてください。築年数が経つほど価値は下がる、つまり古い建物ほど「時価」は低くなる、という考え方です。
たとえば、建築当時に2,000万円かかった家でも、築20年・30年となると、地震保険上の「時価」は1,000万円程度、あるいはそれ以下と評価されるケースもあります。この「時価」を前提として、支払われる保険金が計算されるため、「家を建て直すには足りない」と感じる結果になりやすいのです。
「思ったより少ない」につながる3つのポイント
地震保険で受取額が意外に少なく感じる主な理由は、次の3つです。
1. 保険金額の上限が火災保険の50%まで
地震保険の保険金額は、基本的に火災保険の30〜50%の範囲でしか設定できません。上限いっぱいの50%で契約していたとしても、
- 火災保険:建物2,000万円
- 地震保険:その50%の1,000万円
という形になります。ここからさらに、「時価評価」の範囲内での支払いになるので、結果として「思ったほど補償されない」と感じやすくなります。
2. 損害は4つの区分で支払われる
地震保険では、損害の程度を次の4区分で判定します。
- 全損
- 大半損
- 小半損
- 一部損
そして、それぞれに応じた支払割合が決められています(契約内容により異なりますが、イメージとして)。
- 全損:保険金額の100%
- 大半損:保険金額の60%
- 小半損:保険金額の30%
- 一部損:保険金額の5% など
つまり、家が「半分壊れた」感覚でも、判定上は「一部損」と評価されることがあり、その場合は保険金額の一部しか支払われないことになります。ここでも「思ったより少ない」というギャップが生じやすくなります。
3. 築年数が経つと「時価」が下がる
繰り返しになりますが、築年数が古い家ほど「時価」は低くなります。同じ火災保険金額2,000万円の建物であっても、
- 築5年:時価評価が高く、比較的多く受け取れる
- 築30年:時価評価が低く、受取額が抑えられる
という差が生まれます。
「新築と同じレベルで建て直す費用」をイメージしていると、時価をベースにした支払額では不足感が出るのは自然なことだと言えます。
「時価評価」を前提に、どう備えるべきか
とはいえ、だからといって「地震保険は意味がない」という話にはなりません。ポイントは、地震保険に過大な期待をし過ぎないことと、補い方を考えておくことです。
1. 地震保険は「生活再建の土台」と考える
地震保険は、公的支援とあわせて最低限の生活を立て直すための資金を確保する役割が大きいと考えましょう。家をフルリフォームしたり、新築同様に建て直すための「全額補償」ではなく、
- 当面の住まいを確保する費用の一部
- 家の大きな損傷を応急的に直す費用の一部
- 家具・家電を最低限買い直す資金
といったイメージでとらえると、現実に近い役割が見えてきます。
2. 火災保険の補償内容もチェックする
火災保険の中には、地震による火災や破損をある程度カバーする特約がつけられる商品もあります(商品ごとに条件や制限はさまざまです)。
- 地震火災特約
- 地震による臨時費用を補う特約
など、地震保険だけに頼らず、火災保険のオプションも組み合わせることで、トータルの備えを厚くすることができます。契約中の保険証券やパンフレットを見直し、わかりにくい部分は保険会社や代理店に確認するとよいでしょう。
3. 自助としての貯蓄や防災グッズもセットで
保険でカバーできる範囲には、どうしても限界があります。現金の緊急予備資金や、防災グッズ・非常食の備蓄など、保険以外の対策も同時に進めておくことが重要です。
特に、数十万円〜100万円程度の「いざというときに使える予備資金」があると、地震保険からの給付金と組み合わせて、生活再建の選択肢がぐっと増えます。
契約前・見直し前に確認しておきたいポイント
これから地震保険に加入する人、すでに加入している人のどちらにも、次の点を一度確認してみることをおすすめします。
- 建物・家財の地震保険金額はいくらに設定されているか
- 評価の前提となる「時価」のイメージ(築年数を考慮)
- 全損・大半損・小半損・一部損の支払条件
- 火災保険の特約で、地震関連を補っている部分はないか
- 自分や家族の「生活再建に必要なお金」のおおよその目安
これらを整理しておくことで、「いざというときにどのくらい受け取れそうか」「どこが不足しそうか」が見えやすくなります。そのうえで、不足分をどうカバーするか(追加の保険・貯蓄・防災対策など)を考えていくのが現実的なアプローチです。
まとめ:仕組みを知れば「がっかり」を防げる
地震保険の時価評価は、一見すると「損をしている」と感じられるかもしれません。しかし、そもそも地震保険は、巨大地震が起きても多くの人が最低限の生活を取り戻せるよう、保険料と支払額のバランスを国がルール化している制度です。
重要なのは、その仕組みを知らずに過度な期待をするのではなく、「どのくらい出る保険なのか」を理解したうえで、自分なりの備えを組み立てておくことです。時価評価の考え方や支払条件を知り、自分の生活設計に照らし合わせておくことで、「もしものとき」に感じるギャップを小さくし、より現実的な防災・減災対策につなげることができるでしょう。























