同じ内容を覚えるとき、「ノートに手書きする派」と「パソコンでタイピングする派」に分かれることが多いですよね。なんとなく「手で書いたほうが覚えやすい」と感じる人もいれば、「タイピングのほうが速くて効率的」と考える人もいるはずです。では、脳の働きという視点から見ると、本当に記憶の定着に違いはあるのでしょうか。
この記事では、手書きとタイピングの違いを、できるだけ専門用語を避けつつ、脳科学の考え方をベースにわかりやすく解説していきます。
手書きとタイピング、脳は何が違うのか?
手書きとタイピングの一番大きな違いは、「体をどれくらい使っているか」です。
- 手書き:指・手首・腕を大きく動かし、文字の形を一つひとつ作り出す。
- タイピング:指先を小さく素早く動かし、「キーの位置」を頼りに文字を入力する。
この違いが、そのまま「脳のどの部分がどれくらい働くか」という差につながります。手書きは、運動をつかさどる部分や、感覚を受け取る部分、そして目で見て形を認識する部分など、脳の広い範囲を総動員する傾向があります。
一方で、タイピングは「キー配置」と「文字」を結びつけるパターン化が進みやすく、一度慣れてしまうと、深く考えなくても自動的に指が動く状態になりやすいのです。
なぜ手書きは「覚えやすい」と感じやすいのか
手書きが記憶の定着に役立つと言われる理由はいくつかあります。
文字の「形」を自分で作る負荷が、記憶の足場になる
手書きでは、文字を一画ずつ書くたびに、「どんな形だったかな?」と頭の中で思い出しながら指を動かしています。この「少しだけ頭を使う負荷」が、内容をただ目で追うだけよりも、深く処理させるきっかけになります。
脳は「大変だったこと」「時間と手間をかけたこと」を、重要な情報として扱いやすくなります。文字を書き上げるまでのプロセス自体が、記憶に残るための“足場”になっているのです。
体を使うことが「記憶の手がかり」を増やす
手書きは、紙の手触り、ペンの重さ、書くときの音、文字を書くときの腕の動きなど、たくさんの感覚が同時に関わります。これらはすべて、「思い出すときのヒント(手がかり)」になります。
例えば、「あのページの左上に図を書いたな」「赤ペンでぐるっと囲んだな」という感覚が、その内容を思い出すスイッチになることがあります。これが、手書き特有の強みです。
タイピングにもある「記憶のメリット」
一方で、タイピングが不利かというと、そうとも限りません。特に、次のような点でメリットがあります。
量をこなせることで、復習しやすい
タイピングはスピードが出やすく、多くの情報を短時間で入力できます。そのため、
- 講義内容をほぼそのまま記録できる
- あとから検索して必要な部分だけ見直せる
- コピー&ペーストや整理が簡単
といった形で、「後から何度も触れる」ことには向いています。記憶は、一度で完璧に覚えるよりも、「何度も思い出す」ことで強くなっていきます。その点では、タイピングは復習のインフラ作りに優れていると言えます。
要約と組み合わせると、深い理解につながる
タイピングの弱点は、講義内容をそのまま写すだけの「聞き書き」になりやすいことです。ですが、
- 自分の言葉で短くまとめてから打つ
- 章ごとに「一言でいうと何か?」をメモする
といった工夫を加えると、「速く書ける」ことと「深く考える」ことの両方を活かせます。ポイントは、「頭を使わずに指だけ動かす状態」を避けることです。
手書きとタイピング、どう使い分けるといい?
脳科学の知見や、学習の研究から見えてくるのは、「どちらか一方だけが正解」というよりも、「目的に応じて組み合わせるのが効果的」という考え方です。
覚えたい・理解したい内容は手書きで「かみ砕く」
重要用語や、概念のつながり、数式、図や表など、「しっかり理解して覚えたいところ」は、手書きでノートを作るのがおすすめです。特に、
- 自分の言葉でまとめなおす
- 図や矢印で関係性を書く
- 色分けして強弱をつける
といったひと手間を加えると、「考えながら書く」時間になり、記憶の定着につながりやすくなります。
情報のストックや整理はタイピングで効率化
一方で、資料の整理、たくさんの情報を集める作業、検索しやすいメモ作りなどは、タイピングのほうが向いています。例えば、
- 授業中や会議中のメモはPCで素早く残す
- 後で重要なところだけをピックアップして手書きノートにする
という二段構えにすると、「記録にはタイピング」「記憶には手書き」という役割分担ができます。
自分の「覚え方のクセ」を観察してみよう
脳の働きには個人差があり、手書きのほうが圧倒的に合う人もいれば、タイピング+要約のほうがしっくりくる人もいます。大切なのは、
- どのやり方のときに、一番スムーズに思い出せるか
- どの方法が、一番ストレス少なく続けられるか
を、自分自身で試しながら見つけていくことです。ただなんとなく選ぶのではなく、「脳がどう働いているか」を少し意識するだけで、勉強法や仕事のメモの取り方は、今よりぐっと自分に合ったものに近づいていきます。
手書きとタイピング、どちらも現代には欠かせないスキルです。それぞれの特徴を知って、自分の脳が喜ぶ「覚え方のデザイン」を考えてみてください。



















