猫が突然、口を半開きにして「変な顔」をすることはありませんか?まるで驚いて固まっているようにも、ニヤリと笑っているようにも見えるあの表情。実はこれは「フレーメン反応」と呼ばれる行動で、「ヤコブソン器官」という特別なセンサーを使って、においの“奥の情報”を読み取っていると考えられています。この記事では、猫のフレーメン反応とヤコブソン器官の不思議を、専門用語をできるだけ避けながら、猫と暮らすうえで役立つヒントも交えてご紹介します。
フレーメン反応ってどんな行動?
フレーメン反応は、猫が特定のにおいをかいだあとに、
・口を少し開ける
・鼻のあたりが少しシワになる
・ぼーっと遠くを見るような顔になる
といった表情をする行動のことです。
一見「変な顔」ですが、実はとても真剣な“情報収集モード”。匂いをかいだあとにすぐこの表情になることが多く、
・他の猫のおしっこやマーキングの跡
・新しく家に持ち込まれた物
・飼い主の靴や服についた外のにおい
などに対してよく見られます。
つまり、猫にとって「これは普通のにおいじゃない」「もっと詳しく知りたい」と感じたときに出る反応だと考えられています。
ヤコブソン器官ってどこにあるの?
フレーメン反応のカギを握るのが「ヤコブソン器官」と呼ばれる小さな器官です。これは、猫の口の中と鼻の中のちょうど間あたり、上あごの奥にあるといわれています。
猫が口を半開きにしているとき、上あごの前歯の後ろ側あたりから、においの成分を吸い込んで、このヤコブソン器官に届けていると考えられています。普通の“鼻”とは別のルートでにおいの情報を取り込んでいる、もうひとつのセンサーのようなイメージです。
人間にはほとんど機能していないとされる器官なので、私たちはこの感覚を体験できません。だからこそ、猫が何をどのように感じているのか、なおさら謎が深く感じられるのです。
ヤコブソン器官はどんな「情報」を嗅ぎ分けている?
猫はヤコブソン器官で、単に「におう/におわない」ではなく、もっと細かい“情報”を読み取っていると考えられています。たとえば、次のようなものです。
- 他の猫の性別や発情状態
- その個体の健康状態やストレスの有無
- なわばりの境界や、自分のにおいとの違い
これは、猫同士が残すフェロモンなど、空気中にふわっと広がるよりも、物や場所にしっかり付着した“濃い情報”を読み取るのが得意なセンサーともいえます。
例えば、散歩帰りの飼い主の靴を念入りに嗅いだあと、フレーメン反応をすることがあります。これは「どんな動物がいたのか」「オスかメスか」「敵になりそうか」など、外の世界の細かな情報を読み取ろうとしている可能性があります。
いつ、どんなときにフレーメン反応が起こりやすい?
フレーメン反応は、次のような場面でよく見られます。
- 他の猫のトイレ跡を嗅いだとき
- 新しい家具・段ボール・来客の持ち物などを嗅いだとき
- 発情期の猫が、異性のにおいをかいだとき
- 多頭飼いの家で、においのついた毛布やタオルを交換したとき
特に、猫の尿には多くの情報が含まれているとされ、その分析のためにフレーメン反応がよく見られます。もしあなたの猫がトイレ付近で変な顔をして固まっていたら、「情報の読み取り中なんだな」とそっと見守ってあげてください。
フレーメン反応は体調不良のサインではないの?
初めて見ると「具合が悪いのかな?」と心配になるかもしれませんが、フレーメン反応自体は自然な行動です。数秒から十数秒ほどで表情が戻り、その後も普通に動き回っているようであれば、特に問題はないと考えられます。
ただし、次のような様子があれば、フレーメン反応とは別に、体調を気にかけてあげると良いでしょう。
- よだれが止まらない
- 苦しそうな呼吸をしている
- ぼーっとしたまま動かない時間が長く続く
- 食欲やトイレの様子が普段と大きく違う
普段の「変な顔」との違いを、日頃から観察しておくことが、猫の小さな不調に気づくきっかけにもなります。
猫との暮らしにどう活かせる?
フレーメン反応とヤコブソン器官の働きを知ると、猫との暮らし方にも少し工夫ができます。
- 急な環境変化を避ける
新しい家具や猫グッズを一度にたくさん持ち込むと、家中が「謎のにおい」でいっぱいになり、猫はフレーメン反応の連続で落ち着かなくなることがあります。少しずつ増やして、慣れる時間を作るのがおすすめです。 - においの交換で仲良くなる手助け
多頭飼いを始めるときは、猫同士の毛布やタオルを交換して、お互いのにおいにゆっくり慣れさせる方法があります。このときフレーメン反応が見られたら、「相手の情報を一生懸命読み取っている最中」と考えられます。 - 外出帰りの靴やバッグの扱い
外の動物の強いにおいがついた靴やバッグは、猫が過剰に反応してストレスになることもあります。玄関で区切ったり、猫の生活スペースとは少し離しておくと安心です。
猫の「変な顔」を、ただの面白い仕草として笑うだけでなく、「今、どんな情報を読み取っているんだろう?」と想像してみると、猫の世界がぐっと立体的に感じられるはずです。
「変な顔」の先にある、猫の豊かな情報世界
フレーメン反応とヤコブソン器官は、猫が周囲の世界を理解するための重要なツールです。人間の目には「数秒の変な顔」にしか見えませんが、猫にとっては、そこに暮らす仲間やライバル、環境の変化など、多くの手がかりが詰まっています。
私たちには感じ取れない情報を、猫は毎日当たり前のように受け取っています。その一端を知ることで、猫の行動を「変」だと決めつけるのではなく、「理由のある行動」として理解しやすくなります。次にフレーメン反応を見かけたら、「今日も真剣に世界を読み取っているんだね」と、少し尊敬のまなざしで見つめてみてはいかがでしょうか。





















