「格安SIMはお昼になると急に遅くなる」という声はとても多く、「安いから仕方ないの?」とあきらめている人も少なくありません。しかし、その裏側には、通信事業者(MVNO)が行っている「帯域制御」という、ちょっとした仕組みがあります。この記事では、難しい専門用語はできるだけ避けながら、なぜ格安SIMが昼に遅くなるのか、その理由と対策をわかりやすく解説します。
格安SIMはなぜ安いのか?仕組みの前提をおさらい
まずは前提として、「格安SIM(MVNO)」と「大手キャリア(MNO)」の関係をシンプルに整理しておきます。
- 大手キャリア(MNO):自社で基地局や回線設備を持ち、ネットワークを丸ごと運営している会社(ドコモ、au、ソフトバンク、楽天など)。
- 格安SIM(MVNO):大手キャリアから通信回線の一部を「借りて」、自社ブランドとしてサービスを提供する会社。
格安SIMは、基地局を自前で持たず、大手キャリアのインフラを「まとめてレンタル」することでコストを下げています。そのため、利用者が支払う料金も安く抑えられる一方、「借りている回線の太さ(帯域)」には限りがあります。この「限られた帯域」をどう配分するかが、通信速度に大きく影響してきます。
お昼に遅くなる主な理由:「帯域の渋滞」が起きている
多くの人が「お昼休み(だいたい12〜13時ごろ)にスマホが遅い」と感じるのは、単純にその時間帯にスマホを使う人が集中するからです。特に、
- 会社員がお昼休みに動画やSNSを見る
- 学生が休み時間にゲームや動画を楽しむ
- テレワーク中の人が資料やメールを一気にチェックする
といった行動が重なることで、回線が「混み合った高速道路」のような状態になります。大手キャリアも混雑しますが、それ以上に影響を受けやすいのが格安SIMです。
なぜなら、格安SIMは「決められた太さのパイプ(帯域)」を大手から借りており、そのパイプの中に自社ユーザー全員の通信が一気に流れ込むからです。お昼の時間帯は特にそのパイプがパンパンになり、結果として速度がガクッと落ちてしまいます。
MVNOの「帯域制御」とは何をしているのか
MVNOは借りられる帯域に限りがある中で、できるだけ多くのユーザーにそこそこの品質を届けたいと考えています。そのために行っているのが「帯域制御」です。ざっくり言うと、
- 時間帯によって流すデータ量をコントロールする
- アプリや用途ごとに速度の優先度を変える(場合がある)
- 一人のユーザーが使える最大速度に上限をかける
といった調整です。ここでポイントになるのが、「誰か一人が高速を独占しないように、みんなで分け合う仕組み」を作っている、ということです。
具体的にどんな制御が行われているのか
もう少しイメージしやすいように、代表的な制御の例を挙げてみます。
- 時間帯ごとの速度制限
昼の12〜13時だけ最大速度をあえて抑えることで、回線の混雑を和らげる方法です。全体のスピードを「そこそこの速さ」で均一にすることで、「つながらない」「極端に遅い」と感じる人を減らそうとしています。 - 用途ごとの優先度付け
例えば、Webサイトの閲覧やメッセージ、メールなどは軽い通信なので優先度を高くし、超高画質動画や大容量ダウンロードなどは優先度を下げる、という考え方です。これにより、多くの人が「最低限困らない程度」に使えるようにバランスを取ります。 - ヘビーユーザーへの速度制御
月間のデータ使用量が極端に多いユーザーや、短時間に大量の通信をしたユーザーの速度を一時的に抑えることで、他のユーザーに帯域を回す仕組みです。
こうした制御は、ユーザー側からは見えませんが、「遅い時間帯」と「快適な時間帯」に差が出る大きな要因になっています。
「大手は速くて格安は遅い」は本当か?
実際には、「常に大手が速くて、常に格安が遅い」という単純な構図ではありません。次のような傾向があります。
- 昼や夕方の「超混雑タイム」では、格安SIMが明らかに遅くなりやすい
- 深夜や早朝などのすいている時間帯なら、格安SIMでも体感的には十分速い
- MVNOによっては、帯域を多めに借りていて、比較的快適なところもある
つまり、「いつもどこでも遅い」わけではなく、「特定の時間帯だけ弱い」のが格安SIMの特徴と言えます。これは、コストを抑える代わりに「混雑時の余裕」を削っている、とイメージするとわかりやすいかもしれません。
ユーザー側でできる対策・付き合い方
では、「お昼に遅い」問題に対して、ユーザー側はどう付き合っていけばよいのでしょうか。いくつか現実的な対策を挙げます。
- 混雑時間帯を避けて大きなダウンロードをする
アプリのアップデートや動画のダウンロードなど、重い通信は朝や夜など比較的すいている時間に済ませるようにするとストレスが減ります。 - Wi-Fiをうまく活用する
自宅や職場、カフェなどでWi-Fiが使える環境を確保しておくと、格安SIMの弱点をうまく補えます。 - 通信速度をあまり必要としない用途に割り切る
メール、SNS、ニュース閲覧などが中心なら、多少の速度低下はそこまで致命的ではありません。動画を高画質で見続けたい人は、別の選択肢も検討した方がよいでしょう。 - 格安SIM+大手キャリアのデュアルSIMという選択
対応端末であれば、格安SIMをメインにしつつ、混雑時用に小容量の大手キャリア回線をサブ回線として持つ方法もあります。コストは少し上がりますが、「安さ」と「安定性」のバランスを取りたい人には有効です。
MVNO選びのポイント:速度だけでなく「使い方」との相性を見る
格安SIMを選ぶとき、多くの人が料金だけを比べがちですが、実際には「自分の生活パターン」との相性がとても重要です。
- お昼休みに動画やSNSをたくさん使いたい人:
混雑時間帯に強いと評判のブランドや、大手サブブランド系(例:キャリア直系の安価プラン)を検討する価値があります。 - 通勤・通学時間にニュースと音楽ストリーミング程度:
格安SIMでも十分ストレスなく使えるケースが多いです。 - 自宅は常にWi-Fiで、外ではたまに調べ物をするだけ:
月額料金重視で、「多少遅くてもOK」と割り切った格安SIM選びがしやすくなります。
同じ「遅い」といっても、許容範囲は人によって大きく違います。レビューサイトの速度測定結果も参考になりますが、「自分がよく使う時間と場所」での体感が一番重要です。可能であれば、短期間の契約やお試しプランで試してみるのもおすすめです。
まとめ:昼の遅さは「仕組み」を知ると納得できる
格安SIMが昼に遅くなるのは、「手抜き」や「不具合」ではなく、限られた帯域を多くのユーザーで分け合うための構造的な理由によるものです。MVNOは帯域制御によって、混雑する時間帯の通信をなんとか成り立たせようとしています。
その仕組みを理解した上で、
- 自分の使い方に合った事業者を選ぶ
- 混雑時間帯を避ける、Wi-Fiを活用する
- 場合によってはデュアルSIMなども検討する
といった工夫をすれば、「安いけどイライラする」から「安くて、工夫すれば十分使える」へと印象が変わっていきます。価格だけでなく、帯域制御の仕組みや混雑時間帯の傾向も含めて、上手に付き合っていくことが、格安SIM活用のコツと言えるでしょう。























