猫のお腹をなでていると、後ろ足の付け根あたりに「タプタプした皮膚のたるみ」を見つけて、びっくりしたことはありませんか? 病気なのか、太りすぎなのかと心配になる一方で、実はほとんどの猫に共通して見られる「プライモーディアルポーチ」と呼ばれる部位だといわれています。この記事では、このあまり知られていない猫のお腹のたるみについて、その正体や役割、ケアのポイントなどをわかりやすく解説します。
プライモーディアルポーチってどこにある?
プライモーディアルポーチとは、猫のお腹の後ろ側、後ろ足の付け根からおへそ方向にかけて、薄い皮膚と脂肪がタプっと垂れ下がったように見える部分を指します。
歩くと左右にゆらゆら揺れたり、横から見ると「前から見るよりお腹が長く見える」原因になっていることもあります。
よく「うちの猫、お腹だけおじさん体型かも…」と心配されますが、細身の猫や筋肉質な猫、さらには野生に近い血筋の猫にも見られる、ごく自然な体のつくりと考えられています。
なぜ猫のお腹はたるんでいるの? 3つの有力な説
プライモーディアルポーチのはっきりした理由は、学術的にも「これが正解」と断定されているわけではありません。ただ、多くの専門家が挙げる有力な説がいくつかあります。
1. 走ったり跳んだりしやすくする「伸びしろ」説
まずよく語られるのが、「体を大きく伸ばすための余裕」という説です。
猫は全力疾走するとき、背中とお腹を大きくしならせて走ります。このときお腹の皮膚に少しゆとりがあったほうが、伸び縮みしやすく、しなやかな動きをサポートできると考えられています。
高いところへジャンプするときや、急な方向転換をするときにも、この“伸びしろ”が役立っているのかもしれません。
2. けんかや狩りで内臓を守る「防具」説
猫同士がけんかをするとき、お腹は急所のひとつです。特に後ろ足でキックされると強いダメージになります。
お腹まわりに少し厚みのある皮膚と脂肪のクッションがあることで、外からの衝撃をやわらげ、内臓まで傷が届きにくくしているのではないか、という説もあります。
野生で暮らしていた時代、狩りや縄張り争いが日常だった猫たちにとって、お腹を守る仕組みはかなり大切な「生き残り戦略」だったのかもしれません。
3. 食べだめのための「ストック」説
野生の猫は、いつでも好きなときにごはんが食べられるわけではありません。獲物をとれない日が続くこともあります。
そのため、一度にしっかり食べてエネルギーをため込む必要がありました。プライモーディアルポーチには、脂肪を蓄えるスペースとしての役割があったのではないか、という説もあります。
現在、室内で暮らす猫にもその名残が残っており、「ちゃんとごはんをもらっているのに、なぜかお腹がたるんで見える」理由の一つになっていると考えられます。
太っているの? それとも普通? 見分け方のポイント
プライモーディアルポーチは自然な構造とはいえ、「肥満によるお腹の肉」との区別がつきにくいのも事実です。目安として、次のようなポイントを参考にしてみてください。
- 上から見て、腰のあたりが少しくびれているか
- 肋骨にそっと触れたとき、うっすら骨を感じられるか
- 歩くときにお腹が少し揺れる程度で、ズルズルと引きずる感じはないか
全体的なボディラインが丸くなりすぎている、息切れしやすい、動きが明らかに重そうといった場合は、単なるポーチではなく肥満のサインの可能性があります。
逆に、身体全体はスリムなのに、お腹の後ろ側だけタプっとしているなら、プライモーディアルポーチである可能性が高いと考えられます。
ポーチは触っても大丈夫? 猫との付き合い方
基本的に、プライモーディアルポーチそのものは病気ではなく、触れても問題ないとされています。ただし、猫によってはお腹を触られるのが苦手な子も多く、無理に触るとストレスになることがあります。
- 猫がリラックスしているときに、そっと撫でる程度にとどめる
- 嫌がるそぶり(しっぽをバタバタ、耳を倒すなど)があればすぐにやめる
- 急に大きさや硬さが変わったときは、早めに動物病院で相談する
いつも触っているからこそ、変化にも気づきやすくなります。「普段と違う」と感じたら、自己判断せず専門家の意見を聞くようにしましょう。
猫のお腹のたるみを「チャームポイント」として楽しむ
プライモーディアルポーチは、「たるみ」という言葉のイメージから、どうしてもマイナスにとらえられがちです。しかし、猫にとっては歴史の中で受け継がれてきた、実用的で意味のある体の一部だと考えられます。
ふわっと揺れるお腹は、言い換えれば猫らしいしなやかさの象徴ともいえるでしょう。
大切なのは、「太っているからたるんでいる」と決めつけず、全体の体型や日々の様子をていねいに観察することです。そのうえで、適切なごはんの量や運動量を心がければ、プライモーディアルポーチは猫らしい個性の一つとして、安心して見守ることができます。
知らなければ不安に感じる猫のお腹のたるみも、その仕組みや役割を知ると、むしろ愛着がわいてくるはずです。今日からぜひ、愛猫のポーチを「かわいいチャームポイント」として眺めてみてください。




















